ダイハード(超一生懸命)なおっさん in 異世界

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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クマさんと、心配する人たち その1

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 僕は猛烈に反省していました。

 いくらピリが「あーん」をしてくれたからといって……
 いくら、生涯で2度と女の子からしてもらえないであろう「あーん」をしてくれたからといって……

 トゥンク

 と、恋に落ちる音を発しかけてしまったのです。
 その事を猛烈に反省していたんです。

 ボクは、シャルロッタのためにこの世界で頑張ると決めたんです。
 だというのに……決めてからまだ数日も経過していないうちから、浮気するような事をしてしまった自分の事を猛烈に恥じていたんです。

 庭にある井戸の前に立っている僕。
 服は脱いでいて、下着のみの姿になっています。
 夜なので、周囲には誰もいません。

「こんなことじゃ駄目だ……もっと気合いを入れないと……」

 そう呟くと、桶の水を頭からかぶりました。

「うひゃあ、つ、冷たい……って、こ、これくらいなんてことない……ぼぼぼ、煩悩退散煩悩退散……」

 ガタガタ震えながら再び水を汲むと、それを頭からかぶっていきました。

「煩悩退散煩悩退散……」

 それを何度も何度も繰り返していった僕。

* * *

 翌朝。

「ぶぇっくしょん……」

 ベッドの中で、僕は朦朧としていました。
 体温計がないのでなんとも言えないのですが……発熱しているのは間違いありません……

 間違いなく、昨夜水をかぶったのが原因でしょう。
 その結果、僕は思いっきり風邪を引いてしまったみたいです。

「ずず……これって、自業自得……いや、天罰なのかもしれないな……」

 そうだよな……シャルロッタと結ばれておきながら、ピリの「あーん」に過剰反応しちゃったりしたもんだから……うん、改めて反省しながら、今日は大人しく寝てすごそうと思います。
 早く元気になって、シャルロッタの手伝いをしないといけないし……今の僕は、とにかくしっかり休んで、一日も早く回復することがシャルロッタのためなんだ。
 布団を首元までかけ直しながら、ため息をついた僕。

 その時、僕の部屋の戸が開きました。

「クマ殿、先ほどは具合が悪そうだったのじゃが、どんな具合じゃ?」

 心配そうな表情のシャルロッタが、部屋の中に入ってきました。
 いきなりシャルロッタが現れたもんですから、僕はベッドの中で飛び跳ねてしまいました。
 朝ご飯を食べに食堂まで行ったものの、あまり食べることが出来なかったもんだから、シャルロッタに心配をかけてしまったみたいです。
 ……何しろ、毎朝3杯はお代わりをしている僕ですので……

「う、うん、大丈夫、全然平気だから……」

 慌てて起き上がろうとすると、

「あぁ、クマ殿、無理しなくて良いのじゃ」

 シャルロッタが慌てて駆け寄ってきて、僕をベッドに押し倒していきました。
 いつもであれば、それくらい押し返す事が出来るのですが、今の僕はあっさりとベッドに倒れこんでしまいました。
 肉体強化が出来ても、体調が悪かったら意味がないってことなのかもしれません。 

 そんな事を考えている僕の眼前で、シャルロッタは心配そうな表情のまま僕の顔をのぞき込んでいたのですが、

「うむ……顔が赤いの……熱はどうかの……」

 そう言いながら、まず自分の前髪をかき上げて、露わになった額を僕の額に……

 え?

 こ

 ここ

 こここ

 こここ、これってば……あああ、あの、あれですか!? おでこで検温っていう超激レアイベントですか!?

 顔を真っ赤にしながら思いっきり目を見開いた僕。
 そんな僕の目の前で、

 コツン

 小さな音とともに、シャルロッタの額が、僕の額に重なりました。

 僕は、今、自分の目の前で繰り広げられている光景を把握出来なくて、目を白黒させながら固まっていました。

「何が大丈夫じゃ! すごく熱いではないか」

 そう言うと、シャルロッタは頬を膨らませながら、僕の布団をかけ直してくれました。
 シャルロッタが感じた体温の何割かは、シャルロッタのおでこ検温のせいなのは間違いないのですが……そんな事言えません。

「う、うん……ごめん、しっかり休んですぐ元気になるから」

 大人しくベッドに横になった僕。
 そんな僕の言葉に、ようやく安堵の表情をうかべたシャルロッタ。

「クマ殿は働きすぎじゃからな、きっとその疲れが出たのじゃろう」

 ……いえ、違うんです……気合いを入れ直そうと思って水をかぶったせいでして……

 そんな僕の心の声が聞こえるはずもなく、シャルロッタは優しい笑顔を浮かべながら僕の額を手で撫でていました。

「……ずっとついていてあげたいのじゃが……妾も仕事があるのじゃ……急ぎの仕事が片付いたらすぐに来るからの」

 シャルロッタは、そう言うと部屋を出ていきました。
 最後、扉を閉める際に、

「よいな、くれぐれも安静にしておるのじゃぞ」

 そう、念押ししてから、扉を閉めました。

 うん

 ここまでシャルロッタに言われたんだし……今日は全力で大人しくしようと思います。
 シャルロッタの額の感触を思い出しながら、そう誓ったのですが……体の一部だけはすっごく元気になってしまっているのですが……ホント、僕の体ってどうなっているんでしょう……

 はぁ、とため息をつきながら目を閉じた……その時でした。

「クマ氏! 生きてるっスか! 体調崩したって聞いたッスよ!」

 部屋の中に、ポリンカがすごい勢いで駆け込んできたんです。
 ポリンカは、大きなバッグを抱えています。

「あ、あぁ、ポリンカ。わざわざありがとう。寝てれば治るから……」
 
 上半身を起こそうとした僕。

「あぁ、クマ氏は寝てればいいっスよ、今、栄養のあるものを食べさせてあげるっス。それ食べてからゆっくり寝てほしいっス」

 そう言うと、ポリンカはベッドの横に腰掛けて、バッグの中をゴソゴソしはじめました。
 
 今日のポリンカは、先日部屋で着ていた露出が多めの服ではなくて、お店で来ているオーバーオール風の服を身につけていました。
 うん……これならいろんな意味で大丈夫、問題ありません。
 少し元気になっていた下半身を手で押さえながら安堵のため息を漏らす僕。
 
「あ~……この栄養ドリンク、この容器だと寝ているクマ氏、飲みにくいっスね」

 そう言うと、ポリンカはその栄養ドリンクを自分で口に含みました。
 味見でしょうか? まず自分で飲んでみるってことなのかな?
 そんな事を持っている僕のめの前で、ポリンカは、

 ん~

 口を突き出しながら、横になっている僕の顔に接近してきたんです。

「ぽぽぽ、ポリンカさん!? いいい、一体何を!?」

 急接近してくるポリンカを前にして、思わず声が裏返ってしまう僕。
 そんな僕の前で、ポリンカは、

 まず、自分の口を指さし、
 次に、僕の口を指さし、
 そして、親指をグッと突き立てました。

 え、何、これって、

「私の口から」
「クマ氏の口に」
「口移しで飲ませてあげるっス」

 って……そういう意味にしか解釈出来ないんですけど……

 困惑している僕の前で、ポリンカは再び僕に向かって顔を近づけてきました。

「ぽぽぽ、ポリンカさん、いや、あの、その……」

 しどろもどろになりながら、僕はポリンカさんを押し戻そうとその肩に手を伸ばしていったのですが……まさにその時でした。

「クマー!大丈夫~!?」

 部屋の扉を勢いよく開けて、アジョイが駆けこんできたんです。
 突然のアジョイ乱入を受けて、ポリンカは目を丸くしながら僕から離れていきまして、

「んっがっくっく……っス」

 なんか、どこかで聞いたことがあるような声を発しながら、口に含んでいた栄養ドリンクを自分で飲み干してしまったみたいです。

 で

 そんなポリンカを完全に無視して僕の元に駆け寄って来たアジョイは、おもいっきりジャンプすると、僕のお腹の上にダイブしてきました。
 ダイビングボディアタックですね、これ……

 超身体能力を発揮すれば、特にダメージを受けることなくやりすごせたはずなのですが、今の僕は体調不良のせいで、この能力を発動させることが出来ませんでした。
 そのため……僕は、素の状態でアジョイのボディアタックを受け止めてしまい、

「げふぅ!?」

 思わず悲鳴をあげてしまいました。
 そんな僕のお腹の上に寝っ転がっているアジョイ。

「クマ、大丈夫? アジョイ心配」

 そう言いながら、僕の顔の方へにじり寄ってきました。

 ……う

 その時、僕はあることに気が付きました。
 アジョイってば、ダボダボの服を着るのが好きでして、今もかなりダボダボの服を着ているんです。
 そして……僕の顔に向かってにじり寄ってきているアジョイのダボダボの服が垂れ下がっているのですが、その隙間からアジョイのむむむ、胸とかおおお、おへそとかが丸見えに……
 僕は、慌てて自分の目を両手で隠しました。

 見てはいけない……これは絶対に見てはいけない……しゃしゃしゃ、シャルロッタのためにもですね、僕は……

「クマ、どうした?」

 アジョイが、そんな僕の腕を左右に開きました。
 そのせいで、僕の目がフルオープンになってしまいまして……当然、僕の眼前には胸元がフルオープンになったままのアジョイの姿が……

「げほげほ……く、クマ氏、どうしたっスか?」

 そんなアジョイの後方からポリンカが顔を出しました。
 っていいますか、アジョイの服の中に視線が釘付けになっているなんてバレてしまったら……

「あ、あぁ、うん……大丈夫、大丈夫だから……とりあえずアジョイ、今日は降りてくれるかい? ちょっと体調が悪いからしばらく寝たいんだ」

 僕が声を裏返らせながらそう言うと、

「ほらアジョイ、クマ氏は病気っス。無理させちゃだめっスよ」

 ポリンカが、アジョイを僕の上から降ろしてくれました。

 ……た、助かった……

 アジョイの無邪気なラッキースケベをどうにか回避出来ました。
 ちょちょちょ、ちょとだけ見えちゃったけど、その後すぐに頑張ったんだから、これぐらいはどうにか許してもらえるよね、シャルロッタ……
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