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本編
21話 日本風料理を食す
しおりを挟む身を清めたリリゼットは食事をいただける部屋へ行きレオナルドとギルヴェルトの2人と合流した。
「すっかり見違えたな…。平民の服装も悪くなかったけどドレス姿の方が似合う」
レオナルドはすっかり見違えたリリゼットを素直に誉めた。
そしてギルヴェルトはというと見違えたリリゼットの姿を直視して思っていることが表情に出る前にリリゼットの姿を少しだけ見ると視線を逸らしポツリと小さく『綺麗だ』と言った。
人数が揃い席に着くと直ぐに温かい食事が運ばれてきた。
運ばれてきた食事は具材に人参、ネギ、大根、豆腐、魚肉団子が入った塩ベースの魚のつみれ汁、薄切りではなく少し厚めに肉切った豚の生姜焼き、レタスと千切りニンジンのサラダ、炊き立ての白米という日本料理を再現したもの。
使用している食器は場所が王城ということもありつみれ汁は汁椀ではなくスープ皿、白米は丸皿に盛りつけられ食べるのには箸ではなくナイフとフォークが用意されていた。
「まさか日本料理に近い物を食べられる日がくるとは思いませんでした…」
「これらはこの城で働く料理長が彼女の実家で働いている料理人から作り方を習って作ったものなんだ」
レオナルドによると美香が転生したこの世界でも日本料理が食べたいと数々の発明品が元で得たあらゆる人脈を駆使して日本特有の食材や調味料をできる限り再現した。
美香の転生先の実家で働いている料理人に料理の味や特徴を説明をしながら日本料理もできる範囲で再現したらしい。
前世の世界でも外国人から絶賛されていた日本料理なだけありこの世界の人間にも日本風の料理は絶賛され貴族だけでなく王族を虜にし、クリスティアの国王がこの城の料理長に命じ彼女の実家で働く料理人に習わせたのだという。
とても美味しいだけでなく以前よりも体の調子が良くなったことからこの城では頻繁に王族に合わせてアレンジした日本料理が食卓にあがっているらしい。
ーだから洋風チックな味付けなんだ…。
と運ばれてきた日本風料理を食べたリリゼットは思った。
どの料理も転生してもなお味覚が日本人だった時代と変わらないリリゼットからすれば今世で食べた料理の中では格段に美味しい。
ただ、美香が転生した貴族の屋敷で働いている料理人が作っていた日本風料理はどのようなものか分からないがこの城の日本風料理はアレンジされているにしてもリリゼットが覚えている味付けと見た目も似ているようで違うのだ。
「ど、どうかなさいましたか?まさかお口に合わなかったのでしょうか…」
料理を完食してすぐリリゼットにコック帽を被った如何にも料理人だと分かる格好をした中年の男性が少し動揺した表情で彼女に話しかけた。
「あぁ、彼がこの城の料理長だ。口が硬いから君の素性も話してあって…。彼が此処にいるのは転生者の君がこの料理を食べて直に感想を聞きたかったからだそうだ」
レオナルドによるとこの男性こそが転生者の実家の料理人から日本風料理を習いクリスティアの王族の為に日々食事を作っている料理長のヤゴスなのだという。
王族が絶賛する日本風料理でも本物の日本料理を知るリリゼットの表情がヤゴスの想像していたのと違っていた為ヤゴスは客人の口に合わない物を提供してしまったのではないかと動揺してしまったようだ。
「どの料理も私の元実家で働いていた料理人が作る料理より美味しかったですよ」
想像していた味付けと違うものでも折角作ってくれたものを作った本人の前で否定することをできればリリゼットはしたくなかった。
公爵アルガリータ家の料理人ジャンには悪いと思いながらも転生してから食べた料理の中では日本舌のリリゼットからすれば格段に美味しいとヤゴスに言うも納得していない表情だ。
「失礼ですがつみれ汁と生姜焼きのレシピが書かれたメモか何かあるのであれば確認してもよろしいでしょうか?」
リリゼットは運ばれてきた料理の中で少し気になった2品のレシピを確認させてほしいとヤゴスに言った。
「レシピを記録したものならばあります。少しお待ちください…」
ヤゴスは勤勉な性格であるらしく習った日本風料理すべての品名、材料、分量、作り方の手順を細かく記録した用紙を持っていた。
「ミカは料理が苦手でしたからね…、でもうろ覚えの記憶でこれだけのものが作れたのは奇跡ですよ」
ヤゴスが持ってきたレシピを確認したリリゼットが言った。
前世ではリリゼットが直に教えながらであればどうにか食べられるのだが一人で作るとなると暗黒物質かゲームの即死魔法の名が付きそうな料理を作ってしまうミカが教えたにしては奇跡的に日本風に仕上がってはいるものの前世では母子家庭でほぼ毎日料理を作っていたリリゼットからみれば食べる人間の好みもあるだろうが少し惜しい作り方がレシピには書かれていた。
まずはつみれ汁、レシピには魚肉団子スープと表記された料理の作り方だ。
具材として入っている野菜はリリゼットが前世で作っていた物と大差はなかったが魚肉団子の作り方が違う。
「ニンニクを使っても魚肉の臭みは消せますが私は摩り下ろした生姜を入れた方が好きです。あくまでこれは好みですけどね…」
魚や肉を使ったつみれには食材の臭みを消す為に摩り下ろした生姜を使用することが多い。
しかしこのレシピに書かれた魚肉団子には臭み消しは一切入っておらず、スープを作る時に刻んだニンニクを魚肉の臭み消しにしている。
それでもヤゴスは魚の臭みが少し気になったようで彼が作る魚肉団子スープには魚肉団子にも刻んだニンニクやハーブを入れスープにはバターを溶かし更に洋風に仕上げているのだという。
次はポークステーキに近い豚の生姜焼き。
これはレシピ、ヤゴスが作るもの両方焼いた豚肉(?)に薄切りにした玉ねぎと摩り下ろした生姜、醤油で作ったソースをかけたものだった。
これはこれで悪くはなかったのだが、ソースの材料に砂糖などの甘味料や癖が少ない料理酒が書かれていなかったからか少ししょっぱく物足りない味だった。
これらを足したソースを煮詰めながら肉を焼くかソースに漬け込んだ肉を焼けば日本のものに近くなり更に甘味料に蜂蜜や摩り下ろした玉ねぎを加えて肉を漬け込めば肉質を柔らかくできること、肉の端に少し切れ目を入れて焼けば肉の焼き縮みが防げるとリリゼットは説明した。
リリゼットが説明し終えると部屋中の者達から彼女は尊敬の眼差しが向けられていた…。
ーあれはあれで日本風の料理美味しかったなぁ。
食事を終えたリリゼットは案内された客室でヤゴスから借りたレシピ書に目を通しながら寛いでいた。
ヤゴスがリリゼットにレシピ書を貸したのは休むまでの時間潰しというよりもレシピを彼女に確認と訂正をしてもらった方がより美味しい食事を王族や貴族の来客に提供できると確信を持たれたからだった。
コンッコンッ
軽く扉をノックする音が聞こえ扉を開けるとプラチナブロンドに水色の瞳をしたリリゼットと同じ年頃の淡いピンク色のドレスを着た可愛らしい女性が立っていた…。
ほそく
美香は科学的根拠などを駆使して醤油や味噌などを職人の手により再現できても料理は前世で聞いたリリゼットの説明を手繰りながら再現したので詰めが甘い模様です。
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