怪異の忘れ物

木全伸治

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ツチノコは実在する!!(仮)

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それは、紙一枚の企画書だった。
もとは番組制作会社にメールで持ち込まれたネタで、本物のツチノコを撮ったという画像と、そのツチノコを撮影した島の場所を明記しただけのメールで、送り主の名前はなく、メアドも使い捨てのフリーメールで宛名も会社名だけだった。
この画像を送れば勝手に興味を持ってくれるだろうと、うちが選ばれたようだ。その送り主の狙い通り、ネタに飢えていた先輩が、その島に行って撮って来いと言った。もしかしたらCGで作った偽物じゃないかと俺は反論したが、それでも、その島に行って何か撮って来いと言われた。
実際に島にツチノコがいなくても、送られてきた謎のメールを元にその島に行ったが、何も見つからなかったというだけで、一つのネタ映像にはできる。最近は、様々な動画をスタジオで、ゲストのタレントたちが見てコメントする番組が多い。たぶん、多くのタレントをロケ現場に連れ回すより、そうやってスタジオで収録した方が製作費が安いのだろう。そういう動画を一つ撮って来いというわけだ。
一昔前のテレビ全盛期なら、デレクターの俺だけでなく、撮影のカメラマンと現地の人に質問するレポーターが付いてきただろうが、昨今、お金のないテレビ業界では、デレクターの俺がカメラを片手に、自分で現地の人にインタビューして、自分でその映像を編集するのが当り前になっていた。もともと、映像業界には体育会系の先輩の言うことには黙って従うのが当り前とか、仕事終わるまで家に帰れないというのはざらだったが、女性問題やマスゴミと呼ばれるテレビの悪印象によって、末端の製作スタッフである俺たちの制作環境は最悪な状態だった。
よく言われるのが、テレビなんかオワコンだから、さっさと転職したらという無責任な言葉だ。そんなに簡単に転職できるなら、俺もしたいが、転職は難しい。転職して、前より給料が上がった、仕事が楽しいなんて、そう簡単にはない。だから、重い機材を背負って、俺は一人その島に向かった。
無人島で定期便がないので漁師の方にお願いしてその島に向かった。
小さな島だった。一人で充分見て回れるだろう。明日の夕方、猟師の方に迎えに来てもらうように頼んで島に上陸した。
もちろん、上陸前にその猟師にその島についてインタビューしたが、何もない島で、ツチノコがいるなんて聞いたことないそうだ。
とりあえず、島で一晩過ごして適当に島の風景を撮って帰ろう。俺の頭の中では、ツチノコがいなかったという想定で映像を編集する気になっていた。
持って来たテントを組み立てる。野生動物のドキュメンタリー映像も撮った経験があるから、こういうのには慣れていた。テントを設営してから、島を歩き回り、適当な場所に暗視カメラを設置する。
何か小動物が生息しているかも知れない。何か野生動物が撮れたたら、「なにか動いた、ツチノコか」とテロップを付けるだけで一つの意味のある映像になる。
予算がないので、設置するのは一台だけだ。後は、島の風景や海に沈む夕日などを撮るとテントに戻ろうとした。
「ん?」
テントのそばに置いた食料を詰めた段ボールに何かが群がっていた。
「ツ、ツチノコ!」
野ネズミかなにかもう少しかわいらしい動物が俺の食料を漁っていると思った。船を降りるとき、猟師のおっちゃんに魚を少し分けてもらった。その匂いに釣られたのか、蛇に似た生き物が段ボールに顔を突っ込んで蠢いていた。、それも、一匹、二匹ではない、数匹で、俺の食料を、漁ってやがる。
食べるのに夢中で、俺には気づいていないようだ。
かなり貪欲に食い漁っている。近づくのは危険だと思い、とりあえず、カメラを構えて、カメラのレンズ越しに様子を見ながら後退る。もちろん、録画ボタンも押していたが、奴らが飢えているのは間違いない。
ツチノコは蛇のような毒を持っているかも知れない。少なくとも、飼い猫のように人間に好意的にすり寄って来る可能性はないだろう。
俺は、ハッとした。ガサゴトと蠢く何かに取り囲まれていた。
俺は重いカメラを捨てて全力で逃げ出していた。
そして、小さな島を逃げ回り、それを見つけた。俺の上陸した島の反対側に、俺と同じように野営しようとした人たちのテントの残骸を。残された機材から、俺と同じテレビの製作チームのようだった。俺は一人だったが、こっちはカメラマン他数名のスタッフで上陸したようだ。取材メモが残っていた。風雨にさらされて、紙はごわごわになっていたが、遺書らしき文と漁師に裏切られたとこんな島に取材に来たくなかったという感情が書きなぐらていた。俺と同じように猟師に頼んで島に運んでもらったが、約束の日に猟師が迎えに来なかったと。
迎えが来ず、困り果てているときにツチノコの群れと遭遇し、仲間がやられたと。
そして、推測として、この島に取材に来るように仕向けた相手と漁師がぐるで、密かに飼っているツチノコのエサにするために自分たちが、取材に来させられたんじゃないかとつづられていた。
まさかと思ったが、ツチノコを警戒して、翌日の夕方まで身を隠していたが、迎えの船は、本当に来なかった。
なんとか貝とか食って飢えをしのぎ、万一を考えて、一度は捨てたがツチノコの隙を伺いながら回収したカメラに遺言メッセージを録画した。
だが、行方不明者のカメラだけ見つかって、生存者は誰も見つからなかったというオチのホラー映画って、よくあるよなと思ったとき、近くの茂みから、ガサゴソというヤツらの物音を聞いた。
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