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しおりを挟む「あの頃シャロン王女には既に婚約者がいましたから。色々弁えねばならなかったせいで、今とは違うように見えたのかもしれませんね」
周囲の人間の状況に合わせ、徹底した態度を貫くマヌエル。
なぜ彼はシャロンとの婚姻を承諾したのだろう。
「あの……私がマヌエル殿下のもとに嫁ぐ事になったのは、父が言っていた話と関係が?」
マヌエルは手に持っていたカトラリーを置き、シャロンの顔を真っ直ぐに見た。
「あれは今から二年ほど前の事になるでしょうか……ロートスの建国式典に私が招かれていたのは憶えていらっしゃいますか?」
「はい。その年に限らず、マヌエル殿下はだいぶ前からエウレカの代表として、出席してくださっていましたよね」
面と向かって会話をしたのは数えるほどしかないが、各国大臣クラスの出席が多い中、王族である彼の存在は目を引いた。
「ええ……憶えていてくださったのですか」
マヌエルは目を細めた。
「二年前、式典後の晩餐を終え、部屋に戻ろうとした時です。陛下から声をかけられました」
「父が、殿下にだけ?」
「はい。陛下は私を自室に招き入れ、人払いをしました。そこでこうおっしゃったのです」
──エドナはロートスを侵攻するつもりかもしれない
「何かそのような予兆があったのですか?」
「シャロン王女の悪評がエドナに流れていると……エドナに送り込んだ間諜からの情報が始まりだそうです」
そこまで言うとマヌエルは少し気まずそうに口ごもった。
「殿下、わたくしなら大丈夫です。その件については直接エドナで耳にしました。ですからどうか続きを」
マヌエルは頷き、続きを語り始めた。
「当時シャロン王女の件のみならず、ロートス側がエドナを蔑んでいるという話が王宮内で加速の一途を辿っていた」
それはセシルも口にしていたから真実だ。
そして他国との争いにエドナ兵を巻き込み、挙げ句報奨金も僅かしか渡さないと。
「ですが実情はまるで違うのです」
「え……?」
「近年エドナは国家として立派に成長を遂げた。それに加えシャロン王女が嫁がれるという事もあり、陛下も年を追うごとに彼の国への支援を引き上げてきた」
父がエドナへの支援を引き上げていた?
そんなの初耳だ。
「ですが、セシル殿下はエドナはロートスから理不尽な扱いをされていると……!」
「おそらくエドナ王家は騙されているのでしょう。そして嘘の情報に踊らされ、結果暴走した」
「エドナは……いったい誰に騙されているのです?」
シャロンが毎年セシルに宛てた贈り物も、彼の手に届いていなかった。
情報を操作し、裏で暗躍していた者は誰なのか。
「その事に関しては、今回の交渉で明らかにしていくつもりです」
「ですが……どんな理由があろうとも、父が一方的に婚約破棄を告げ、エドナに泥を塗ったのは事実です。エドナはそれについて強く言及してくるでしょう」
「確かにやり方は良くなかったかもしれません。ですが陛下は、例え後ろ指をさされようともあなたの幸せを選んだ」
「お父さまが、わたしの幸せを……?」
まさか、そんな事有り得ない。
だって何も聞かされず、ただ閉じ込められた。
「陛下はあなたの身を案じていた。だからこそ、ロートスが戦禍に巻き込まれる危険性を考慮し、エドナの手が届かないエウレカへ逃がそうとしたのです」
「逃がそうと……ですが、それではマヌエル殿下との婚姻は……?」
「それは、私から陛下へお願いしたのです。シャロン王女殿下を保護するのではなく、我が妻に──未来の王妃に欲しいと」
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