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22話 【10:09】タウロ
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----------(タウロ視点)----------
しばらくはここ、デスティニーランドホテルの18階ロイヤルスイートのメイド部屋のような小部屋で様子を見る事にした。
俺は漸く落ち着いて、妻と娘達の顔を見た。
10年間ずっと捜し続けた、会いたかった家族。無事に合流出来て良かったとホッとすると同時に思い出した。
向こうの世界で帰還前に何度も打ち合わせをした内容、戻ったらまず『家族と合流』、そして次に『家族と自分身の安全確保』、それから時間があれば皆へ『連絡』。
さっきショートメールは送ったが、現在はスマホの通信が途絶えているのでLAINEは繋がらない。
隕石の情報は入手出来なかった。案外60分は短い。
それから……、ほぼ無いと確信していた『ステータス』。
あちらの世界へ転移する前は普通の人間だった。どこにでもいるアラフィフの仕事は建築関係、趣味はゲームと言う人間だ。
本当に普通の人間だった。
だが、あちらに転移をして『ステータス』画面が見えるようになり、ゲームキャラのスキルやアイテムが、何故か使用できるようになったのだ。
あちらの世界が、まるでゲームのような世界だったので、転移に関わる神からの贈り物だと思った。
しかし今回、元いた地球に戻れる事になり、当然、ステータスやらゲームアイテムは消えて無くなると思っていた。
しかし。
デスティニーランドの駐車場に帰還した時に無意識で使った『アイテム収納』、自分の車を思わず収納したのだが、出来てしまった。
出来てしまったのだ、ゲームの『アイテム収納』が、現実に。
妻達に気付かれないように声に出さずに唱えた。
『ステータスオープン』
うん、やはり、開いたか。
駐車場で一度アイテム一覧を開いたが、時間が惜しく直ぐに閉じて家族の元に急いだのだ。気のせいでは無かった。
有希恵達がこちらを見ても気が付かないと言う事は、この半透明の画面は、やはり俺だけが見えるのか。
名前 田浦創一
年齢 45
職業 ELF(火属性) DIK
スキル 精霊魔法
▶︎
45歳……、10年前の年齢に戻っている。
職業、スキルもあちらの世界の表示と一緒だ。
右下の三角アイコンを視線で押すと、画面が切り替わった。
フレンド
マップ
アイテム
パーティ
クラン
ボタンが5つ並んでいる。
フレンドボタンを押すと画面が切り替わった。
右側には4つのボタン。
メール
念話
登録
解除
左半分は『フレンド一覧』とあったが、一覧は空白だった。
もしかしたら、こちらに帰還した仲間の表示があるかも知れないと期待したのだが、それはなかった。
『パーティ』『クラン(血盟)』も同じく一覧部分は空欄だった。
『マップ』を立ち上げた。期待してなかったのだがマップが展開して驚いた。
しかし、通常の地図ではなかった。道路や鉄道のような線はなく、黄色い点で埋め尽くされた四角い物がそこかしこにある。
黄色い点は、人間だろう。
つまり、現在は津波による水から頭を出している建物と、そこに残された人間達がマップに表示されているのか。
そして『アイテム』ボタンをクリックする。
デスティニーランドの駐車場で無意識に車を収納したのだから「アイテムボックスはある」のは解っていた。
あの時は検索で車だけを確認した。
他に何が入っているのか。最悪何も入っていない、自分の車しか入っていない状態だとしても、アイテムボックスが使えるだけで物凄く幸運に恵まれたと思う。
収納の数量に限定があるとしても、この災害の最中、必要な物をしまい、持ち運べるのだ。
だがアイテム一覧には、さらなる幸運が待ち構えていた。
ゲームでの武器装備は勿論、何とあちらの世界で手に入れた物が一覧表に並んでいるのが目に入った。
神はどこまで俺たちを助けてくれるのだろう。本当に有り難い。
「ん?」
ホテルの建物はゆっくりと横揺れを繰り返していたが、そこに別の揺れが加わる。
ガッ!ガガガガガガガッ!グラングラングラン…
「きゃあっ!」
「ひゃっ」
「あなた」
ベッドと壁の隙間にいた娘と妻に覆い被さり、衝撃に身構えた。
「大丈夫だ、頭を下げてクッションで守れ」
「ひゃああっ、がっ、ヤダっ揺れっ、お母さん!」
「大丈夫、美咲、頭出さないで、お姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫」
ベッドから毛布を引き剥がし、3人に被せる。部屋を見渡すが落ちて来そうな物はない。
大きな揺れが続く。
館内のアラートは鳴り響いたまま。
どこか近くに落ちたのだろうか?情報が全く掴めない。このホテルは19階建てだったが、津波はこの高さまでくるだろうか?ワイ浜が沿岸部埋め立て地なのが気になる。
地面の液状化でホテルが倒れたりしないだろうか?
揺れが少しだけ緩くなった気がする。
「外の状態を見てくる」
そう言ってベッドに手をつき立ち上がった。
「あなた…」
心配そうに妻の有希恵が顔上げたが、それに微笑み返した。
「大丈夫、隣の部屋から窓の外を確認するだけだ。すぐに戻る」
3人を置いて小部屋の扉を出て広いベッドルームに入る。かなりの衝撃を感じたが、ベッドルームの大きな窓ガラスは割れてはいなかった。最近建った高級ホテルなので耐震設計もしっかりしていたのだろう。
窓に近づいて外を見た。
窓の外、そこから見える景色は、一面海だった。それも黒い海だ。リゾート地のブルーの海ではない。
その黒い海から、ところどころ建物が突き出している。恐らく、高層ホテルやマンションの上層階だろう。
マップを開く。
ああ、なるほど。マップの黄色い点が集まる建物が、海から突き出した、運良く沈まなかった建物か。
マップで方角を確認した。
このホテル自体はランドが見える西向きに建てられているが、コの字型のホテルの東南にあるスイートルームなのか。
だから若干だが直撃を免れたのか。
ベッドルームからリビングへと移動して窓の外を覗く。
ワイ浜駅もデスティニーランドも、影も形もない。
あの黒い海の下に沈んだのだろう。
さて、これからどうするか。
しばらくはここ、デスティニーランドホテルの18階ロイヤルスイートのメイド部屋のような小部屋で様子を見る事にした。
俺は漸く落ち着いて、妻と娘達の顔を見た。
10年間ずっと捜し続けた、会いたかった家族。無事に合流出来て良かったとホッとすると同時に思い出した。
向こうの世界で帰還前に何度も打ち合わせをした内容、戻ったらまず『家族と合流』、そして次に『家族と自分身の安全確保』、それから時間があれば皆へ『連絡』。
さっきショートメールは送ったが、現在はスマホの通信が途絶えているのでLAINEは繋がらない。
隕石の情報は入手出来なかった。案外60分は短い。
それから……、ほぼ無いと確信していた『ステータス』。
あちらの世界へ転移する前は普通の人間だった。どこにでもいるアラフィフの仕事は建築関係、趣味はゲームと言う人間だ。
本当に普通の人間だった。
だが、あちらに転移をして『ステータス』画面が見えるようになり、ゲームキャラのスキルやアイテムが、何故か使用できるようになったのだ。
あちらの世界が、まるでゲームのような世界だったので、転移に関わる神からの贈り物だと思った。
しかし今回、元いた地球に戻れる事になり、当然、ステータスやらゲームアイテムは消えて無くなると思っていた。
しかし。
デスティニーランドの駐車場に帰還した時に無意識で使った『アイテム収納』、自分の車を思わず収納したのだが、出来てしまった。
出来てしまったのだ、ゲームの『アイテム収納』が、現実に。
妻達に気付かれないように声に出さずに唱えた。
『ステータスオープン』
うん、やはり、開いたか。
駐車場で一度アイテム一覧を開いたが、時間が惜しく直ぐに閉じて家族の元に急いだのだ。気のせいでは無かった。
有希恵達がこちらを見ても気が付かないと言う事は、この半透明の画面は、やはり俺だけが見えるのか。
名前 田浦創一
年齢 45
職業 ELF(火属性) DIK
スキル 精霊魔法
▶︎
45歳……、10年前の年齢に戻っている。
職業、スキルもあちらの世界の表示と一緒だ。
右下の三角アイコンを視線で押すと、画面が切り替わった。
フレンド
マップ
アイテム
パーティ
クラン
ボタンが5つ並んでいる。
フレンドボタンを押すと画面が切り替わった。
右側には4つのボタン。
メール
念話
登録
解除
左半分は『フレンド一覧』とあったが、一覧は空白だった。
もしかしたら、こちらに帰還した仲間の表示があるかも知れないと期待したのだが、それはなかった。
『パーティ』『クラン(血盟)』も同じく一覧部分は空欄だった。
『マップ』を立ち上げた。期待してなかったのだがマップが展開して驚いた。
しかし、通常の地図ではなかった。道路や鉄道のような線はなく、黄色い点で埋め尽くされた四角い物がそこかしこにある。
黄色い点は、人間だろう。
つまり、現在は津波による水から頭を出している建物と、そこに残された人間達がマップに表示されているのか。
そして『アイテム』ボタンをクリックする。
デスティニーランドの駐車場で無意識に車を収納したのだから「アイテムボックスはある」のは解っていた。
あの時は検索で車だけを確認した。
他に何が入っているのか。最悪何も入っていない、自分の車しか入っていない状態だとしても、アイテムボックスが使えるだけで物凄く幸運に恵まれたと思う。
収納の数量に限定があるとしても、この災害の最中、必要な物をしまい、持ち運べるのだ。
だがアイテム一覧には、さらなる幸運が待ち構えていた。
ゲームでの武器装備は勿論、何とあちらの世界で手に入れた物が一覧表に並んでいるのが目に入った。
神はどこまで俺たちを助けてくれるのだろう。本当に有り難い。
「ん?」
ホテルの建物はゆっくりと横揺れを繰り返していたが、そこに別の揺れが加わる。
ガッ!ガガガガガガガッ!グラングラングラン…
「きゃあっ!」
「ひゃっ」
「あなた」
ベッドと壁の隙間にいた娘と妻に覆い被さり、衝撃に身構えた。
「大丈夫だ、頭を下げてクッションで守れ」
「ひゃああっ、がっ、ヤダっ揺れっ、お母さん!」
「大丈夫、美咲、頭出さないで、お姉ちゃん大丈夫?」
「大丈夫」
ベッドから毛布を引き剥がし、3人に被せる。部屋を見渡すが落ちて来そうな物はない。
大きな揺れが続く。
館内のアラートは鳴り響いたまま。
どこか近くに落ちたのだろうか?情報が全く掴めない。このホテルは19階建てだったが、津波はこの高さまでくるだろうか?ワイ浜が沿岸部埋め立て地なのが気になる。
地面の液状化でホテルが倒れたりしないだろうか?
揺れが少しだけ緩くなった気がする。
「外の状態を見てくる」
そう言ってベッドに手をつき立ち上がった。
「あなた…」
心配そうに妻の有希恵が顔上げたが、それに微笑み返した。
「大丈夫、隣の部屋から窓の外を確認するだけだ。すぐに戻る」
3人を置いて小部屋の扉を出て広いベッドルームに入る。かなりの衝撃を感じたが、ベッドルームの大きな窓ガラスは割れてはいなかった。最近建った高級ホテルなので耐震設計もしっかりしていたのだろう。
窓に近づいて外を見た。
窓の外、そこから見える景色は、一面海だった。それも黒い海だ。リゾート地のブルーの海ではない。
その黒い海から、ところどころ建物が突き出している。恐らく、高層ホテルやマンションの上層階だろう。
マップを開く。
ああ、なるほど。マップの黄色い点が集まる建物が、海から突き出した、運良く沈まなかった建物か。
マップで方角を確認した。
このホテル自体はランドが見える西向きに建てられているが、コの字型のホテルの東南にあるスイートルームなのか。
だから若干だが直撃を免れたのか。
ベッドルームからリビングへと移動して窓の外を覗く。
ワイ浜駅もデスティニーランドも、影も形もない。
あの黒い海の下に沈んだのだろう。
さて、これからどうするか。
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