俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香

文字の大きさ
103 / 299

103話 キックの両親を探して

しおりを挟む
 -------------(カオ視点)-------------

 準備も整い出発予定の前夜、タウさんの部屋をたずねた。


「あの……このタイミングで今更なんだけど、ちょっと相談がある」


 タウさんの眉間に少しだけ皺が寄った。そうだよな、もっと早くに相談すべきだった。
 だが今言わないと後悔する気がして、思い切って話す。


「あの、明日の作戦決行なんだけど、俺のチームの出発を遅らせていいかな?」

「どうしました? 準備で問題でも?」

「いや、あの……、準備は出来てるんだ。でも、その前にどうしても行きたい所があって」


 タウさんの眉間から皺が無くなった。良かった、話していいのか?


「キックの実家に行きたいんだ。あ、キック覚えてるか? ムゥナのやまと家で一緒に居た仲間で、元やまと商事の社員の」

「ええ、もちろん覚えていますよ。マルク君にスマホを渡してくださった方ですよね。お蔭でマルク君と私達の連絡が取れました」


 キックは異世界転移した仲間だ、そしてあちらの世界に残ったひとりでもある。
 マルクが俺を追って転移の光に飛び込んだ時に自分のスマホを投げ入れてくれたらしい。(実際に投げたのはキックではないようだが)

 スマホはマルクが皆に連絡を取れるようにと考えたらしい。
 そして、スマホを操作してるうちにメモに俺に当てた手紙があったのだ。

『もしも無事に帰還してマルク君と再会が出来、このメモを見る事があったら、そして茨城を通りかかる事があったら、お願いがあります。そこに菊田弘一郎と菊田詩乃が生きていたら伝えて欲しい。俺は遠くで幸せに生きている。帰れないのが心残りだがふたりの子に生まれた事を感謝している。心配を沢山かけたけど幸せだった。今は隣に嫁さんがいる。レモンさんとの写真を見せてあげて欲しい』


 俺はあちらの世界でいつもキックに助けられた。良い仲間だった。
 マルクの為にスマホを投げ込んでくれた事も本当にありがたい気遣いだ。キックらしい。キックならではの思いつきだな。

 だがら、キックの両親を探してスマホを渡したいんだ。

 キックは俺と同年くらいだった。だから転移した当時は50歳くらいだと思う。
 以前にキックから「遅く生まれた」と聞いた事がある。だから両親はもう80~90歳くらいかもしれない。
 この先いつまで生き残れるか、届けられるなら、今、届けたいんだ。


 タウさんは少し考えたあと、各血盟の盟主を念話で部屋に呼んだ。
 集まったミレさん、カンさん、アネさんにザッと今の話をした。

 ミレさんに言われてスマホのメモに書かれたキックの実家の住所を伝えた。
 ミレさんは紙の地図をテーブルに広げてマークを付けていた。


「タウさん、これはちょっと良いかもしれないな」

「どう言う事です?」


 タウさんも地図の前に寄ってくる。カンさんとアネさんも覗き込んでいる。


「ここ。キックの実家の最寄り駅なんかな? 牛久駅。行ってみないと津波の被害はわからんが、行く価値はある」


 地図は苦手だが、一応覗き込む。………地図ってどうしてこう線が多いんだ?太かったり細かったり点線だったりくねっていたり。
 どこ?ミレさんが言った牛久駅はどこだ!

 そう言えば以前に、まだ異世界転移する前だが、キックはJRで通勤していて最寄りが牛久って言ってたな。
 俺より遠くから通勤しているのかと感心したものだ。

 そうだ、そうしたらキックが「駅始発があるので座って寝て来れる」と言ってた。俺は「ズッコイ!俺は立ちっぱなしだぞ」とか話した記憶がある。

 同じ路線のもっと先……、同じ路線と言うことはうちとそう変わらない地域か、水没している可能性もあるな。

 俺が暗い考えに囚われていたが、ミレさんは指でトントンと地図を叩く。


「ここが牛久駅だろ、それでここから右側に進むとヨーカタウン牛久南店がある。そこを越えてさらに進むとカントリークラブに突き当たる」

「カントリー?」

「ああ、ゴルフ場な。その手前辺りが菊田家の住所なんだよ」

「今ネットで軽く調べたのですが、牛久駅近辺は水害を免れているそうです。近くに牛久沼があったのが幸いしたようです。水は沼へ流れて牛久沼は広がったそうですが、駅までは来なかったようです」

「なるほど。それと地図で見るとこの辺り、幼稚園や保育園が多いですね」

「本当だ。それとゴルフ場も多いね」

「菊田家よりもっと先になりますがアウトレットもありますね」

「カオるんの行きたがってた牛久大仏はアウトレットの手前あたりですよ?」


 マジか。行きたい。しかし不謹慎だろうか?キックの両親にスマホを届けに行くのに大仏まで足を延ばしたいとは言いづらい。


「やっだぁ、ここ!牛久シャトーだって!シャトーってもしかしてワイナリー? タウさーん、行こうよ! この先もうワイン造りは難しいかもなのよ! 今キープしないとダメでしょう! それでアウトレットにもちょっとだけ寄ろう? カオるんがキックさんのパパママに会ってる間にチョロっと行こ?」


 アネさん、ありがとう!タウさん頼む!

 タウさんは即答だった。


「そうですね。予定の出発は1日延ばします。カオるんが菊田家を訪れている間に、我々はまず幼稚園等をまわりましょう。物資が不足していたら置いていく。それからカオるんと合流して、牛久大仏、牛久シャトー、アウトレットとまわります」

「やったぁ」


 ありがとう、タウさん、アネさん、カンさん、ミレさん。

 翌朝早くに出発する。各血盟が馬車で移動だ。

 地図に菊田家の住所の印をカンさんに付けてもらった。地図は清華さんへ渡した。

 馬はマルクが持っている一頭しか無い。俺はポニー太に馬車を引かせるのはしのびなく思った。

 馬車は、マルクの一頭でも引けない大きさではないが、可哀想に思えて俺のサモンを2頭出す事にした。前足が小さい小型の地龍のようなモンスターだ。攻撃力がイマイチでゲームでも使った事がなかった。

 3人で箱型の馬車の中に乗る。椅子ではなく、床にクッション性のある分厚いラグマットが敷いてある。
 何かあった時にも直ぐに外に出られるように靴は脱がない。日本人としてはちょっと気持ち悪く感じる。マットの上を土足のまま胡座をかいて座るのだ。

 朝早かったのでマルクは眠そうだった。昨夜もゲームを頑張っていたからな。

「マルク、着いたら起こすから寝ておけ」

 腹は空いてないと言ってたのでそのまま寝かせる事にした。馬車はマルクが横になっても問題ない広さだ。
 キヨカは前方についてるガラス窓(カンさん作、強化ガラス使用)から、興味深そうにサモンを見ていた。


 地図は貰っていたが、馬車はタウさん、カンさん、うち、アネさん、ミレさんの順番で走っているので、迷うことはなかった。



 2時間ほど走っただろうか、程なくして牛久駅に到着した。

 なるほどネットの情報どおり、駅前に水の被害は見えなかった。だがまぁ、地震や火山灰の被害はそこかしこに見れた。


 『ハケン』の馬車は、キックの実家を目指す。勿論キヨカのナビだ。カンさんがついて行こうか?と気遣ってくれたが断った。
 皆には幼稚園を廻るという重要な役目があるのだ。

 住宅が増えた辺りでサモンはしまった。代わりにマルクの馬を出して馬車へ繋いだ。一頭でも普通に馬車を引ける。短時間なら一頭で大丈夫だな。

 キヨカの案内で菊田家に無事に到着した。

 キックの実家は高台にある大きな立派な家屋で、親戚も一緒に住んでいるようだった。
 表の道に馬車を止めて中へ声をかけた。

 出てきた若い女性に菊田弘さんの知り合いだと告げた。
 その女性が一旦家の中へと戻ると、直ぐに中からお爺さんとお婆さんが走り出てきた。


「あの子は? 戻って来れたのか! 東京は酷い事になってると聞いた、良かった無事なのか、どこにいるんだ? 無事なんだろ?」


 矢継ぎ早に聞かれて立ったまま答えに窮した。
 どう答える、どこまで話す。何も考えないで来てしまった。ただスマホを渡せばいいと。

 俺らが黙っている事で何かを察したのだろう。
 お婆さんが泣き崩れた。奥から現れた女性がお婆さんを抱き起こしながら俺らを見る。


「お爺さん、とにかくあがってもらえば……、あのこんな時なので何ももてなし出来んけどよければ上がってください」


 そう、こんな時に来た俺らに優しい言葉。さすがはキックの身内だな。


「あんたら、あがりんさい。向こうで、弘の話、聞かせて、もらおうか」


 お爺さんも涙を堪えてつっかえながらも俺たちを促した。

 俺たちは案内された部屋で、多くを語らず(いや、語れず)、


「預かったので……」

と、キックのスマホをわたした。


「無事……なんか」


 お爺さんがボソリと呟いた言葉に静かに返す。


「はい。無事です。が、遠くて帰宅は難しいです。それに向こうで良い伴侶を見つけたようですよ」


 スマホに写るキックとレモンさん。笑顔のふたり。
 お爺さんとお婆さん(キックのご両親だが)は、くいいるようにスマホの画像を見ていた。涙を流しながら。

 泣きながらではあったが、少しだけ顔に笑みが戻っていた。
 ずっと心配していたのだろう、時には諦めたりしたかもしれない、けれど今、彼らの手の中の写真には笑いあったキック達が居た。


 俺たちはそっと席を立ち、お暇した。去る前に不足している物は無いかと聞き、馬車から出す振りをして多少だが物資を渡した。
しおりを挟む
感想 212

あなたにおすすめの小説

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

ガチャから始まる錬金ライフ

盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

処理中です...