俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香

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236話 西へ④

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 俺たちは広島の江田島と言う島へ上陸した。


 江田島は俺の想像とちがっていた。
 これ、島って言うのか?いや、俺が地元から殆ど出た事がないから知識がなかっただけなのだが、とにかくデカイ。

 いや、北海道に比べたら小さいが、北海道と比べたらどこも小さいだろう。
 江田島は『島』と言っても普通の街だし、普通に観光客も来るらしい。海に瓦礫が浮いていなかったらさぞや美しい景色なんだろうな。

 小島を想像していたから、精霊に簡単に灰を吹き飛ばしてもらえると思ったが、断られてしまった。


「島の火山灰を全部吹き飛ばして」

『非(お断りします)』

 と、言われてしまった。

『広い 主 一緒 動く』

 とも。つまり、俺も一緒に移動しないとダメなのね。そりゃそうか、俺の精霊だもんな。
 富士山に行って風吹かせて、と言ってもダメなんだ。俺が富士山に行かないと、つまり命令距離みたいなもんがあるのかも知れん。


「ゲームでもあったよな。たまに狩場に精霊を置き忘れてるやつ」


 ミレさんから言われて思い出した。そうだった、待機を命じたり移動が速すぎて精霊置き去りってあったな。
 とは言え、ゲームではログオフするとちゃんと戻ってた。
 現実……このリアルではどうなんだろう。


「カオるん、精霊の置き去りは気をつけてください」


 タウさんにピシャリと釘を刺された。うん、気をつけよう。怒って家出とかされたら嫌だからな。
 精霊は俺にとって今やファミリー……、ボスのような存在だ。

 あれ?俺の周りにボス多いぞ。タウさんは血盟のボスだし、トマコ拠点のボスは春ちゃんだし、家庭内ではマルクか、キヨカがボスだな。
 良い事だ。人に使われる方が得意な俺にとってはボス的存在はありがたい。


「カオさんの存在の方がよっぽどありがたいですよ」


 俺の独り言を聞いていたらしい隊員が笑っていた。下っ端冥利に尽きるお言葉を頂戴出来たぞ。


 フジが取り出した車輌に乗って俺たちは移動した。勿論移動範囲の火山灰は吹き飛ばしてもらった。
 それほど走らずにハマヤンと合流した。


 ハマヤンとサンバ、フジは抱き合って喜んでいた。念話は繋がっていたから、再会の大号泣にはならなかった。


 ハマヤンから江田島の主要箇所の火山灰除去に力を貸してほしいと頼まれた。
 江田島は火山灰が無ければ一周5時間ほどらしい。

 タウさんを見ると頷いてくれたので、俺(マルクも)はハマヤンが運転席する車で火山灰除去に向かった。
 その間、タウさんらは、ゾンビ化の対応をするそうだ。夕方落ち合う場所を決めて別れた。

 火山灰を除去しつつも、マップに映る赤い点。
 赤い点が魔植の場合、ハマヤンは討伐していた。しかし俺は先々の世界を考えると、倒すべきか悩む。

 確かに一般人にとって魔植は脅威だ。襲ってくる。しかしずっと先の世界、もしも人類が『祝福』を受けてある程度の強さを得た時、魔植の実は食糧になる。大きな旨い実。魔植の核も燃料になる。こんなにおいしい敵はいるだろうか。

 実はゾンビ化が始まる前に棚橋ドクターに相談して調べてもらった事がある。
 あの実に毒はあるか、人間が食べて何か問題はあるか。

 結果は『問題なし』。現存する一般の果物と変わりないとの事だった。
 一般の果物と変わらない、けれど、サイズは大きく味は旨い。栄養面でもなかなかのものだそうだ。

 この先、世界に食糧危機が訪れるのは必須だ。そんな中、あの魔植だ。ドクターに調べて貰ったのは幾つかの果物だけだが、もしかすると食糧危機を乗り越える事に繋がるかもしれん。


「なるほど、そうなのか……。しかし現在の状況では、島の人の脅威になっている。倒さざるを得ない」

「うん、そうだよなぁ………。あのさ、島にエントは居るか?」

「いや、そう言えばこっちでエントは見ないな。エントは東の植物なのか?」

「どうなんだろ? 今は北海道にも居るけど」

「寒い場所限定なら広島も結構寒いだろ? 本土にはエントが居るんだろうか? カオさん、みなと公園にエントは居たか?」

「俺らも広島に到着したばっかだしな、わからん。でも幾つか解ってるのはエントは火山灰が嫌いだ。地面に潜って移動してる。北海道も海を渡るのが難しいと言ってたから本土に居たとしてもここに来るのは……」

「言ってたのか? エントが?」


 ハマヤンが訝しげな顔で運転しながらこっちを向いた。


「あぶな、前向け、前!」

「すまん。エントが喋ったのか? 日本語で?」

「ああ、いや、マルクがな」

「僕、エントをテイムしてるから何を言ってるかわかる。テイムしたのは一個だけだけど、みんな繋がってるんだって」

「繋がってるのは根っこの事じゃないぞ? 何か意識が共有してるらしい」

「凄いな。マルク君はウィズだったよな? カオさんもテイムしてるのか?」

「いや、俺はしてない。俺は精霊とサモンとワンコだけでいっぱいいっぱいだ」


 俺はボス気質ではないから仕切る仲間が多いと混乱するのだ。もしくは忘却の彼方だ。
 最近は精霊と一緒が殆どでワンコの存在を忘れがちだったが、マルクや洸太ら子供達に言われて慌てて拠点に出したのだ。


「それでな、話が逸れたけどエントが居ると魔植を防御してくれるんだよ。もちろん全員エルフ登録済みに限るから今のこの島じゃ無理か……」

「そうだな、島民全員を茨城に連れて行くわけにはいかないからな。しかもあの地下シェルターはゾンビで壊滅しちったからなぁ。シェルターに居た自衛隊もバラバラらしいな」

「そうなん?」

「茨城の地上で頑張ってるもんと、北海道に行く者と、好きに行動する者の3つに別れてるらしい」

「ハマヤン達はどうするん?……今後」

「俺はサンバやフジと一緒に行動する。けど最終的には苫小牧のカオるんとこに行きてぇ。サバも移るつもりでそっちに作ったエルフは今レベル32だ。最近は全くパソコンに触れられなかったからな」

「そっか、でもマスサバに移ったらレベル90超えの……ハマヤンはナイトだっけか、それ、捨てるって事だろ? 勿体無いな」

「そうだなぁ。あっちでフジやサンバと乗り切った10年、このナイトだから生きて戻れた。……そう思うと揺れるがな。けどこれからの新しい世界を生きるのに、心機一転は必要だと考えた」

「そうか。………うん、決めるのはハマヤン達だからな。でも少し待った方がいいかもしれません」

「ん? 何かあるのか?」

「LAFの社員のキングジム達が話してたんだが、現在サーバーのログイン数が偏ってる、マスは増えて、他3つは錆びれる一方だってさ。それで色々考えているみたいだから、サバを移るのはそれがハッキリしてからの方がいいと思う。勿論うちはいつでも歓迎だ」

「そっか、サンキュ」


 ハマヤンは無言で運転をしていた。色々考えているのだろう。
 車は島の円周を走っただけではない、時々山道なども走った。ちょっと酔った。

 夕方近くにタウさんらと合流した。
 火山灰が無くなった事で自衛隊が活発に動けるようになったようだ。サンバとフジがアイテムボックスに入れて持ってきていた大量の物資も活躍していた。

 車輌やボートのような移動手段、テントや食料、医療品。大きな避難所が出来ていた。

 ハマヤンと車で周った時に十数箇所にブックマークをした。そこに今度はフジとサンバ、他数名を連れてブックマークをしてもらいつつ、物資と隊員を置いていく。何箇所かに避難所を作るらしい。

 タウさんもミレさんも同じポイントでブックマークを済ませた。ふたりは手分けしてそのポイント近くの赤の殲滅、点滅者の浄化を行なっていた。

 俺はと言うと、ハマヤンに頼まれて、避難所への人の移動を行った。
 連れて行かれたのは若い隊員が集まっていた場所だった。なんでも海上自衛隊の幹部候補生の学校とか寄宿舎とか、つまり、海自のエリートを育成するとこか。

 驚いたな、瀬戸内海の島にそんな謎組織があったとは!


「カオさん、別に謎組織でもなんでもないぞ?観光客の見学とかもやってたはずだ。俺は陸自だから詳しく知らんが。あ、元陸自な」

「ハマヤン、まだ陸自は死んでないっすよ。将軍も生きてらしたし」

「そっかそうだった。念話もらった時は3メートル飛び上がったぜ。官房長官の無事を海自に伝えた時は凄かった。島が揺れたと思うぞ」


 それはただの地震では?
 と思ったが口には出さなかった。独り言にも出てないと思う。うん、気をつけた。

 俺は若きエリート達をハマヤン達の指示の元、何度も往復して避難所へと運んだ。


「あ、そうだ、これ」


 俺はハマヤンと向かい合い、トレード画面を開いた。
 テレポートスクロールを30枚と、ポーション何種類かを幾つかずつを置く。
 自衛隊で食糧は持ってきたと言っていたから、お菓子やお酒を置いた。そしてトレード完了ボタンを押した。


「カオ……さん、俺、……自分は、何も返す物が」

「いいからOKボタン押してくれ」

「…………すんませ、ん、あざます」


 ハマヤンは俯いて鼻を啜りながらトレード画面を閉じた。そんなハマヤンの背中にサンバが張り付いた。


「なんだよ、ハマヤン、何貰った? カオさんから何貰ったんだ?」

「……スクとPOT、それに菓子、酒のツマミと…」


 うんうんと頷くハマヤンの背中のサンバ。


「あと、酒」

「何だとぉおおおお! 酒だと! ごらぁ!」


 あ、スマン。自衛隊にお酒はまずかったか?
 俺、自分が酒を飲まないからつい、これ要らんなぁとハマヤンに押しつけた。


「ハマヤン、俺にもくれ。ちょっとだけ、お願い、ちょうだい。飲む時は一緒に飲むよな? フジにも言いつけよう」

「わかった、わかったから。3人で飲もう、いや、みんなにも配るから」

「えー、3人で飲も? あ、カオさんも一緒に飲みましょう!」

「あ、俺、酒ダメなんだ。下戸なんだわ。すまんな、俺のいらん物押し付けて」

「いやいや、あざます」
「ご一緒出来なくて残念です」


 マルクがジッと見ているのに気がついたので慌てた。


「マルク、お酒は二十歳を過ぎたらだからな?」

「お父さんは? 二十歳より上なのに飲まないの?」

「父さんは体質的にアルコールがダメなんだ。飲むと即リバースだ」

「リバース?」

「ああ、直ぐに吐いてしまうんだ、気持ち悪くなって酔う」

「そっか、父さんは色々酔うんだね、船と車とお酒」

「カオさん……酔いやすい体質なんすね」


 サンバ達に憐れんだ目で見られた、仕方ないじゃないか!体質なんだから!
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