紅碧の日々

春夏

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「ほなお疲れ。乾杯」日曜の朝6時から飲むやなんて、怠惰なこっちゃ。碧は自分に呆れる。それでも「はぁー、うんまい!」と味のしみたおでんを頬張る茜の顔を見ていると、こんなんも悪ないな、と缶ビールを飲み干した。「碧はふだん飲むの?」「まぁビールくらいやな。夜は仕事せなならんし」「へ?喫茶店は終わってるでしょ?」「言うてなかったかな、俺の本業は物書きやねん」「え?知らない、初めて聞いたよ」「せやった?昨日の人は担当の編集さんや。今度出る本の打ち合わせやったんよ」「…俺、碧の彼女だと思って…」「挙動不審やったで」茜は眉を下げた。

「その本のカバーの色がこれや」碧は見本を手に取る。「綺麗な色だね」「この色の名前がな、」碧は急に恥ずかしくなった。碧空と茜空やなんて言うたら茜はどう思うやろ。黙ってしまった碧に茜が首を傾げる。「名前は?」茜に次のビールを渡し自分も飲む。喉が渇く。顔が熱い。鍋のせいや、碧は言葉を続ける。「…名前は紅碧。赤みがかった空の碧や」

茜の顔を見ることができない。日本酒に変えるのを装って、立ち上がって背を向けた碧に茜が静かに言った。「…じゃあ俺と碧の色だね」碧は背中に茜の体温を感じた。
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