見えているもの

春夏

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「湊が見ているものが俺には見えてた。そのたびに湊が同じポーズをとろうとすることもわかってた」
湊が小さく嗤う。
「僕きっと淫乱なんだよ。みんなのこと無意識に誘ってるんだ」

「ふざけんな!」
思わず叫んだ俺に湊が微笑んだ。
「律くんに見えてることも、ポーズをとるのを嫌がってることも、本当はわかってたんだ。でも…」
湊は何か言いかけて、黙って目を伏せた。

短い沈黙を挟んで、湊が再び口を開く。

「…見えるようになったきっかけはわかってるんだ。僕が…男の人を好きになったから。その人に抱かれたいと思うようになったから。その人が僕を抱いてくれないってわかってたから」

長い沈黙が律の部屋を包む。
壁にかけられた、既に翌日を示す時計。
秒針の回る音だけが、静かな部屋に響く。

「俺に見えるようになった理由もわかってるんだ」
ソファで膝を抱えていた湊が顔を上げた。

「俺達はもとからグループを組んでいたわけじゃない。俺達は湊のために集められたんだ」

湊が目を見張る。
「湊が高校を卒業したら、俺達はまた個人活動に戻るはずだった。始めからそういう計画だったんだよ。湊をソロで売るための下地を作る3年だったんだ」

「もう湊と一緒にいられなくなる。お前がいない飲み会で、あのころの俺達は嘆いてた。グループがなくなっても、たまにはこうやってメシに誘ってもいいかなぁ、とか、湊はきっと1人でも売れる、ちゃんと奢ってやれる兄ちゃんでいられるように俺達も頑張ろうぜ、ってな」

「だけど…俺は違うことを考えてたんだ」
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