自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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8.初めてのヒート

29.3倍にするべきやったか?

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年に1度、09の3部門からそれぞれ何人かを連れて、奥山の本部に顔を出す。
もちろん売り上げや仕入れの額、業務状況なんかは日々連絡を入れとるわけやけど、末端とはいえ奥山のグループ会社としてたまには顔を見せろ、っちゅうこっちゃな。
大会社の一員だという自覚を持たせるついでに社員の慰安旅行にしてしまおう、と、2泊の関西旅行。
会社を立ち上げた時の15人から始まったこの慰安旅行も今回で4回目、費用は俺のポケットマネー。
葵や残った社員への土産を抱え、自宅に戻った。

平日やけど、この3日間は09は休業。
よほど急ぎの仕事がない限り出社する社員はおらんから、葵も休みにしてもろた。
学校に迎えに行って土産渡して、メシは何がええやろ…と考えていたところで電話が鳴った。

斉藤?なんでや?
「奥山さんですか?あの、斉藤です。葵の友達の」
「わかっとる!葵がどうかしたんか?」
「あの…えっと…葵…たぶんヒート…」
ヒート…ヒート?!
「保健室の先生が横山さんに連絡してくれて、迎えを待っています。今は先生が葵についてくれてます」
「俺もすぐ行く!待っとって!」

葵の初めてのヒート!
葵の側にいさせてくれるやろか……。
とにかく飲んどかな、と、抑制剤を飲み込み、逸る気持ちを抑えて車を出した。

「奥山さん!」
ちょうど学校の駐車場で横山さんに出くわす。
「学校から連絡をもらって!葵が!」
「ええ!とにかく家に連れて帰らな。そしたら…俺がついとってもええですか?」
「でも!まだ葵は子どもで!」
「わかっとる。さっき普段の倍の薬を飲んできた。部屋のドア越しでもええんです。葵をひとりにしたくないねん!」
「…わかりました。もしそうなってしまったとしても、あなたは葵の恋人だ、その権利がある。ですが葵を傷つけることは許しませんよ」
頭を下げたところで、俺達を呼ぶ斉藤の声がした。

「葵!」
保健室のベッドで、体を折り曲げ苦しそうに涙を流す葵。
横山さんが養護教諭に礼を言い、俺は葵を抱え上げる。
「葵、もう大丈夫だよ。横山さんも奥山さんも来てくれた。もう大丈夫」
葵の背中に手を当てて、励ますように斉藤が言う。
震える手で俺にしがみつきながらも、なけなしの理性で“斉藤、ありがと”と礼を言う葵。
ホンマにこの子は…こんな時でもどこまでも葵は葵や…。

「おだいじにね。しばらくは欠席ですね」
そう言った先生から“念のため”と渡されたのは避妊薬、使うようなことになってもええんやろか。
斉藤からは「食べるもの、いろいろ買っておいたから」と、学校前のコンビニの袋を渡される。
「姉ちゃんも食べること忘れちゃうんです。食べさせてやってください」
オメガの姉をもつという斉藤は、こういうことに慣れとるんやろな…俺にその理性が残せるやろか?
自分の車はまた後でとりにくるから、と言ってくれた横山さんに運転を任せて、後部座席で葵を抱きしめる。
「葵。怖ないよ…俺がそばに居ってもええか?」
葵は泣きながら何度も頷いた。

「葵を頼みます」
ベッドに横たわる葵を心配そうに見やって、横山さんが部屋を出た。
むせ返るようなオメガのフェロモン。
貪りたい、というアルファの本能になんとか蓋をして、葵の手を握った。

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