自立したい僕を社長が甘やかしてきます

春夏

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18.将来の夢

75.無駄な時間の使い方

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「すんません、呼び出してしもて」
「いえいえ、かまいませんよ。代わり映えのない店で申し訳ない。オヤジ、とりあえずビールと…適当にいろいろよろしく」

週明け、俺は横山さんと飲みの約束を取り付けた。
「じゃまずは乾杯!いやぁ美味い。暑くなってきましたからねぇ」
「ホンマですなぁ。ビールが美味い季節になりました」
「神戸の奥山さんにお中元いただきましたよ。いつもウチみたいなところまで気にかけていただいて」
「あの人らは葵が可愛ええてしゃあないんです」
「…今日は葵のことで?」
俺は頷いてビールを置いた。

「葵の卒業後のことや。気ぃ悪くせんで聞いてほしいねんけど…。横山さんのところがええ会社やっちゅうことはようわかっとります。ただ、葵には選択肢がなかったんやと思うねん。将来のことを考えることがでけへんかったんと違うかな、て」
「…私もね、ウチでいいのか、と悩みました。そうですね…先のことを考える余裕なんかなかったんでしょうなぁ…。とにかく身を守ることが最優先だったんでしょうから」
「大学にな、行かしてやりたいと思うとるんです。今なら落ち着いて将来のことを考えることがでけるはずや。葵がやりたいことを見つける、その手助けをしてやりたいんです」

「……卒業したら結婚かと思っていました」
「そらもちろん、俺は今すぐにでも結婚したいんよ?せやけど葵が“僕が大人になったら”なんて言うもんやから…まあ、結婚してたって大学に行けるやないですか。子どもはちと我慢やけど…。とにかく、葵にも自分のことを考える権利があると思うねん。あの子はもっと我が儘になってもええんよ」
「たしかにそうですね。いつも真面目に働いてくれて、ウチとしてはずっと葵にいてほしいですよ。でも葵は……葵は時間は無駄に使ってもいい、ってことを知らないんでしょう」

そう、葵はそのことを知ることがでけへんまま、知ろうとせんまま、大人になろうとしとんねん。
このまま俺が葵を囲いこんだとしても、葵はそのことに不満は言わんやろ。
不満がないのか、言わんのか…言えんのか。
その溝は大きいわけやけど、ともかくそれでは、葵を俺の型に嵌めることになる。
そんなんは俺の望むこととはちゃうねん。
俺は、葵が葵のままであることを、葵の形のままの葵を包んで生きていきたいんよ。

「そんで考えたんやけど…ちょこっとの時間にな、葵にいろんな仕事を体験させてやれへんやろか。インターンシップっちゅうか企業体験っちゅうか…。その時間の葵への給料は俺が出しますんで」
「いえ!そのくらい、私がなんとかしますよ。実はそういう申し込みもけっこうあるんです。人手不足なんですかね、近所のスーパーなんかが品出しやレジやってほしい、だとか、アニメの会社が作業を手伝ってほしいだとか。うちの業務とはまったく関係がないんで、断っていたんですけどね。ただ、頭を使う業種からはさすがに…」
「そっちは俺にいくつかアテがあるよって当たってみます。ホンマにこんなことお願いしてもうて、申し訳ない」

「私だって葵の親なんです。奥山さんだけにいい格好させるわけにはいきませんよ」
そう言った横山さんがジョッキを干した。
「ぬるくなっちゃってますよ。さ、飲んで飲んで。無駄な時間を楽しみましょうや」

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