邪魔はさせない

春夏

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10.3西

4.怖かった

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「ナルジス、よく来てくれた。お前も元気そうで安心したぞ。さあ、ミクールのもとへ行ってやってくれ」「チェイル様、先に私の話を聞いてください。……ミクと私はこことは別の世界に生きていました。一緒に冒険者になろう、って約束したんです。ミクが王族であること、簡単に許されることではないとわかっています。…ミクが好きです。でも、私がいない方がミクが幸せになるのなら…俺はミクを諦めます。…兄上が信じたチェイル様のご意見を俺も信じます」

チェイル様は目を見開いて大きく息を吐いた。「…サートス、知っていたのか」「ナルジスに聞かされていました。黙っていて申し訳ありません。どんな処罰でもお受けいたします」「!兄上は悪くありません!俺のために黙っていてくれたんだ!処罰なら俺がいくらでも!」「…はぁ…サートス、お前は事後報告が多すぎだ。このことといいサンディ嬢のことといい執務のことといい…あのな、俺達は親友だってこと忘れないでくれよ」兄上が困ったように笑った。「ナルジス、とりあえずさっさと行け。そろそろミクールが乗り込んでくるぞ」微笑んだ兄上が俺の背を押した。

「ナル!やっと会えた!」「…遅くなってゴメンな。いつだってミクのそばにいるって約束したのに」「…ナル、あのダンジョンは…」「あぁ。間違いない、あそこは3西だった」「…怖かった。怖かったよ。ナル、僕、怖かったよぉ…」泣き出したミクを抱きしめる。あの頃の2人には多感な年齢なりの矜持と意地があった。少しずつ近づいてくる死が怖い、だけど怖いと言わない小さなプライド。そして自分が怖がることが相手の不安を煽るのではないかという気遣い。「死ぬことなんか怖くない」そう言い合った。あの頃とは違う。今の2人は互いに全てをさらけ出す。「俺も怖かった。俺はまだ死ねてなかったんだって…やっぱり俺が夢を見てたんだって、俺はまたミクを失うんだ、って…」

俺達は泣いて泣いて、心配した兄上達が様子を見に来るまで、ずっとそのまま抱き合って泣いていた。3西で硬い笑顔に隠していた胸の冷たさが溶けた気がした。
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