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前編
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小鳥が囀ずり、柔らかな陽射しが私を照らす。
今日もいいお天気だなと伸びをするが、平和とは程遠い音が私の部屋に近づいてきていた。
「お姉様起きていらっしゃる?まだそんな格好で…。相変わらずもたもたと…愚図ですこと」
まだ起きるには早い時間。いつも自分は寝ているくせに今日は一体何の用だろう?
「…どうしたの?」
「どうしたの?じゃありませんわ!わたくし、恥をかきましたの!」
「恥?」
それが私と何の関係があるのか…。
「ええ!お姉様のせいで!お姉様が私に貸してくださった百合の髪飾りのせいで!」
貸した覚えありませんが…。
勝手に取っていったのでは?
「……」
「黙ってないで何とか言ったらどう?」
「…ごめんなさい」
朝から怒気を浴びせられる私の気持ちにもなってほしい。
「私に貸すときはそれなりの物を選んでいただきたいわ…!」
そう言って妹は去っていった。嵐が過ぎ去ったとほっとするもこの後の予定を思い出して憂鬱になる。
今日はお茶会の日だ。
「くすくすくす。あらあの方いらっしゃったのね。」
「…よく顔を出せますこと。時代遅れな服…恥ずかしくないのかしら?」
「しっ…そんなこと言ってはだめよ」
小雀たちが口喧しく騒いでいる。私は悪意に呑まれ顔を俯けるしかない。
おどおどと俯く私はさぞ弱そうに見えるだろう。だが仕方がないのだ。頭では理不尽だと憤っても侮蔑の感情を向けられると身体が勝手に萎縮する。
何か言い返せればと思うものの、できた試しはなかった。私はどうしてこんなに弱いんだろう?自分が嫌になるがどうすることもできない。
そこにアラン様─私の婚約者が通りかかる。
「やあ、美しいご令嬢たち。今日も一際輝いているね」
「アラン様ったら…」
「ご機嫌麗しゅう」
「アラン様は今日も素敵ですわ」
先程まで遠くから私の陰口を言っていた彼女たちの顔が分かりやすく赤くなる。
金の髪に堂々とした態度。彼が慣れた様子で女性を褒めるのはいつものこと。甘いマスクで微笑まれたら大半の女性は恋に落ちてしまうらしい…。いや知らないけど…。
視線に気づいたのかアランがこちらを向く。
令嬢達を引き連れて私の側に寄ってきた。
「やあ君も来ていたんだね。もう少しその服はどうにかならなかったのかい?顔色も青白くてまるで幽鬼のようだよ」
ドッ
側の女性たちが一斉に笑う。
「もうアラン様ったらそんなことおっしゃっては可哀想ですわ」
「でも確かにアラン様の婚約者には相応しくないですわね」
「ふふ…確かに」
私は曖昧に微笑むことしかできない。彼らの興味が私から離れるのをひたすら待った。
そして家に着き精神的に疲れた私を待ち構えていたのは両親だった。
ゆっくり休みたかったというのにそれすら許されないようだった。
「聞いたぞアリア。妹を悲しませたようだな…お前はいつからそんな酷い娘になったんだ?」
「アリア、何とか言ったらどうなの?」
両親は遅くにできた妹に甘い。私の言い分など聞き入れてはくれないだろう。少しでも口答えすれば何倍にもなって返ってくる。
私にできるのは謝罪だけだった。
「申し訳ございません…」
「ちゃんと謝ってくるんだぞ。あの子は優しいからきっと許してくれる」
「は、い…」
その晩遅くまで起きていた。
考えるのは自分の弱さ、情けなさ。
寝て起きたら世界が変わっていればいいのに…。そう願いながら目を閉じた。
****
柔らかな陽光。ああ、また朝が来てしまった。
私はのそのそと起き上がり、顔を洗う。
用意を手伝う侍女は私を馬鹿にしているのか、髪をとかす手もどこか乱暴なのが普通なのだが今日は震えている。
「どうしたの?」
不思議に思い訳を聞くと、
「も、申し訳、ご、ございません」
酷く怯えたように返された。
その後も色々聞いてみるも、要領を得なかった。
疑問に思いながらも階下に降りていく。
妹を見つけ目が合うと、ひっという言葉と共に逃げられた。
─なにかがおかしい。
私は当惑した。
今日もいいお天気だなと伸びをするが、平和とは程遠い音が私の部屋に近づいてきていた。
「お姉様起きていらっしゃる?まだそんな格好で…。相変わらずもたもたと…愚図ですこと」
まだ起きるには早い時間。いつも自分は寝ているくせに今日は一体何の用だろう?
「…どうしたの?」
「どうしたの?じゃありませんわ!わたくし、恥をかきましたの!」
「恥?」
それが私と何の関係があるのか…。
「ええ!お姉様のせいで!お姉様が私に貸してくださった百合の髪飾りのせいで!」
貸した覚えありませんが…。
勝手に取っていったのでは?
「……」
「黙ってないで何とか言ったらどう?」
「…ごめんなさい」
朝から怒気を浴びせられる私の気持ちにもなってほしい。
「私に貸すときはそれなりの物を選んでいただきたいわ…!」
そう言って妹は去っていった。嵐が過ぎ去ったとほっとするもこの後の予定を思い出して憂鬱になる。
今日はお茶会の日だ。
「くすくすくす。あらあの方いらっしゃったのね。」
「…よく顔を出せますこと。時代遅れな服…恥ずかしくないのかしら?」
「しっ…そんなこと言ってはだめよ」
小雀たちが口喧しく騒いでいる。私は悪意に呑まれ顔を俯けるしかない。
おどおどと俯く私はさぞ弱そうに見えるだろう。だが仕方がないのだ。頭では理不尽だと憤っても侮蔑の感情を向けられると身体が勝手に萎縮する。
何か言い返せればと思うものの、できた試しはなかった。私はどうしてこんなに弱いんだろう?自分が嫌になるがどうすることもできない。
そこにアラン様─私の婚約者が通りかかる。
「やあ、美しいご令嬢たち。今日も一際輝いているね」
「アラン様ったら…」
「ご機嫌麗しゅう」
「アラン様は今日も素敵ですわ」
先程まで遠くから私の陰口を言っていた彼女たちの顔が分かりやすく赤くなる。
金の髪に堂々とした態度。彼が慣れた様子で女性を褒めるのはいつものこと。甘いマスクで微笑まれたら大半の女性は恋に落ちてしまうらしい…。いや知らないけど…。
視線に気づいたのかアランがこちらを向く。
令嬢達を引き連れて私の側に寄ってきた。
「やあ君も来ていたんだね。もう少しその服はどうにかならなかったのかい?顔色も青白くてまるで幽鬼のようだよ」
ドッ
側の女性たちが一斉に笑う。
「もうアラン様ったらそんなことおっしゃっては可哀想ですわ」
「でも確かにアラン様の婚約者には相応しくないですわね」
「ふふ…確かに」
私は曖昧に微笑むことしかできない。彼らの興味が私から離れるのをひたすら待った。
そして家に着き精神的に疲れた私を待ち構えていたのは両親だった。
ゆっくり休みたかったというのにそれすら許されないようだった。
「聞いたぞアリア。妹を悲しませたようだな…お前はいつからそんな酷い娘になったんだ?」
「アリア、何とか言ったらどうなの?」
両親は遅くにできた妹に甘い。私の言い分など聞き入れてはくれないだろう。少しでも口答えすれば何倍にもなって返ってくる。
私にできるのは謝罪だけだった。
「申し訳ございません…」
「ちゃんと謝ってくるんだぞ。あの子は優しいからきっと許してくれる」
「は、い…」
その晩遅くまで起きていた。
考えるのは自分の弱さ、情けなさ。
寝て起きたら世界が変わっていればいいのに…。そう願いながら目を閉じた。
****
柔らかな陽光。ああ、また朝が来てしまった。
私はのそのそと起き上がり、顔を洗う。
用意を手伝う侍女は私を馬鹿にしているのか、髪をとかす手もどこか乱暴なのが普通なのだが今日は震えている。
「どうしたの?」
不思議に思い訳を聞くと、
「も、申し訳、ご、ございません」
酷く怯えたように返された。
その後も色々聞いてみるも、要領を得なかった。
疑問に思いながらも階下に降りていく。
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─なにかがおかしい。
私は当惑した。
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