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18.悪魔 リュシアン視点③
④
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「急にどうしたんだ?」
さりげなく体をずらして距離を取りながら尋ねると、オレリアは口の端を上げて柔らかな、それでいて怪しげな笑みを浮かべた。
「私、ずっと気になっていたことがあるんです。リュシアン様は本当にジスレーヌ様が婚約者でいいのかしらって……」
オレリアは眉尻を下げ、困ったような顔で尋ねる。
「……どういう意味だ? 婚約は王家とベランジェ侯爵家との間でずっと前に決まった話だ。今さら俺に口を挟む気などない」
「けれど、リュシアン様、ジスレーヌ様といるときはいつも怒ってばかりで全然幸せそうじゃないではありませんか。いくら国王様たちが決めたこととはいえ、そんな風に気の合わない方と一生過ごすなんて、お気の毒だと思ってしまって……」
オレリアは目を伏せながら、悲しそうに言う。
こういうことを言われるのは初めてではない。むしろ、遠回しにしろ直球にしろ、本当にジスレーヌが婚約者でいいのかと聞かれたことは何度もある。
けれど、オレリアからそう聞かれるのは意外だった。
彼女はむしろほかの者たちがジスレーヌへの苦言を漏らすと窘めることが多く、彼女自身がジスレーヌに対してマイナスのことを言うのは聞いたことがない。
どう答えるべきか迷っていると、オレリアがそっとこちらに手を伸ばして頬に触れてきた。
「リュシアン様」
「やめろ、オレリア。一体どうしたんだ? お前らしくもない」
咄嗟に手を振り払うと、オレリアは口を引き結んでうつむいてしまう。それからぱっと顔を上げ、意を決したように言った。
「リュシアン様、私ではだめですか? 私ならジスレーヌ様のように、リュシアン様に不快な思いをさせたりしません。リュシアン様、私といるときはいつも笑顔ではないですか。私ならジスレーヌ様よりもリュシアン様を幸せにできます」
「何を言ってるんだ。馬鹿なことを言うのはよせ」
「私、知ってます。あの人がリュシアン様を何度も傷つけてきたこと。リュシアン様はそのたびにかばってあげてきましたね。その寛大さに付け込んで、あの人は何度も……」
「……知っていたのか?」
「ええ、気づいていました。今回の毒入り紅茶事件だって、あの子たちの証言は嘘にしろ、犯人はジスレーヌ様なのでしょう?」
オレリアは真っ直ぐにこちらを見据えて言う。その気迫に思わずたじろいでしまった。
どう答えるべきなのだろう。とてもごまかしきれそうにない。
ああもう、だからなんで俺がジスレーヌの馬鹿の凶行を取り繕ってやらなければならないんだ。
ソファの上で後退る俺に、オレリアはじりじりと近づいてくる。彼女の目は据わっていて、背筋がひやりとした。
「おい、オレリア。一旦落ち着くんだ。冷静に話そう」
「私は冷静ですわ、リュシアン様。冷静に話しています」
オレリアはそう言うと、突然ドレスのボタンに手をかけて一つずつ外し始めた。ドレスの間から、白い胸元がどんどん露わになっていく。
「な……!? 馬鹿、何してるんだよ、やめろ!」
慌ててオレリアの手を掴んでやめさせようとする。するとオレリアはこちらに倒れ込み、俺の胸に顔を摺り寄せてきた。
「リュシアン様、私を選んでください。私のほうが絶対にあなたにふさわしいですわ」
オレリアは顔を上げて潤んだ目でじっとこちらを見つめる。呆気に取られているうちに、オレリアは俺の頬にそっと手をあて、顔を近づけてきた。
唇が触れそうになるほど顔が近づく。
「……やめろって言ってんだろ!!」
思わずオレリアを突き飛ばすと、力を入れ過ぎたのかオレリアはソファから床に転げ落ちてしまった。
「あ、悪い、落とすつもりは……」
「リュシアン様」
オレリアは床からむくりと起き上がり、ドレスをはだけさせたままじっと大きく開いた目でこちらを見つめてくる。
その目にはさっきまでの柔らかな色は一切なく、ただ悪意だけが浮かんでいた。
さりげなく体をずらして距離を取りながら尋ねると、オレリアは口の端を上げて柔らかな、それでいて怪しげな笑みを浮かべた。
「私、ずっと気になっていたことがあるんです。リュシアン様は本当にジスレーヌ様が婚約者でいいのかしらって……」
オレリアは眉尻を下げ、困ったような顔で尋ねる。
「……どういう意味だ? 婚約は王家とベランジェ侯爵家との間でずっと前に決まった話だ。今さら俺に口を挟む気などない」
「けれど、リュシアン様、ジスレーヌ様といるときはいつも怒ってばかりで全然幸せそうじゃないではありませんか。いくら国王様たちが決めたこととはいえ、そんな風に気の合わない方と一生過ごすなんて、お気の毒だと思ってしまって……」
オレリアは目を伏せながら、悲しそうに言う。
こういうことを言われるのは初めてではない。むしろ、遠回しにしろ直球にしろ、本当にジスレーヌが婚約者でいいのかと聞かれたことは何度もある。
けれど、オレリアからそう聞かれるのは意外だった。
彼女はむしろほかの者たちがジスレーヌへの苦言を漏らすと窘めることが多く、彼女自身がジスレーヌに対してマイナスのことを言うのは聞いたことがない。
どう答えるべきか迷っていると、オレリアがそっとこちらに手を伸ばして頬に触れてきた。
「リュシアン様」
「やめろ、オレリア。一体どうしたんだ? お前らしくもない」
咄嗟に手を振り払うと、オレリアは口を引き結んでうつむいてしまう。それからぱっと顔を上げ、意を決したように言った。
「リュシアン様、私ではだめですか? 私ならジスレーヌ様のように、リュシアン様に不快な思いをさせたりしません。リュシアン様、私といるときはいつも笑顔ではないですか。私ならジスレーヌ様よりもリュシアン様を幸せにできます」
「何を言ってるんだ。馬鹿なことを言うのはよせ」
「私、知ってます。あの人がリュシアン様を何度も傷つけてきたこと。リュシアン様はそのたびにかばってあげてきましたね。その寛大さに付け込んで、あの人は何度も……」
「……知っていたのか?」
「ええ、気づいていました。今回の毒入り紅茶事件だって、あの子たちの証言は嘘にしろ、犯人はジスレーヌ様なのでしょう?」
オレリアは真っ直ぐにこちらを見据えて言う。その気迫に思わずたじろいでしまった。
どう答えるべきなのだろう。とてもごまかしきれそうにない。
ああもう、だからなんで俺がジスレーヌの馬鹿の凶行を取り繕ってやらなければならないんだ。
ソファの上で後退る俺に、オレリアはじりじりと近づいてくる。彼女の目は据わっていて、背筋がひやりとした。
「おい、オレリア。一旦落ち着くんだ。冷静に話そう」
「私は冷静ですわ、リュシアン様。冷静に話しています」
オレリアはそう言うと、突然ドレスのボタンに手をかけて一つずつ外し始めた。ドレスの間から、白い胸元がどんどん露わになっていく。
「な……!? 馬鹿、何してるんだよ、やめろ!」
慌ててオレリアの手を掴んでやめさせようとする。するとオレリアはこちらに倒れ込み、俺の胸に顔を摺り寄せてきた。
「リュシアン様、私を選んでください。私のほうが絶対にあなたにふさわしいですわ」
オレリアは顔を上げて潤んだ目でじっとこちらを見つめる。呆気に取られているうちに、オレリアは俺の頬にそっと手をあて、顔を近づけてきた。
唇が触れそうになるほど顔が近づく。
「……やめろって言ってんだろ!!」
思わずオレリアを突き飛ばすと、力を入れ過ぎたのかオレリアはソファから床に転げ落ちてしまった。
「あ、悪い、落とすつもりは……」
「リュシアン様」
オレリアは床からむくりと起き上がり、ドレスをはだけさせたままじっと大きく開いた目でこちらを見つめてくる。
その目にはさっきまでの柔らかな色は一切なく、ただ悪意だけが浮かんでいた。
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