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20.糾弾会議
①
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しばらくすると、トマスさんはメイド服とモブキャップを持って戻って来てくれた。
私は服を着替え、髪を後ろでお団子にまとめる。それからキャップを被って後ろ髪を覆った。
私がここにいることを一部の人以外は知らないから、変装して顔をはっきり見られないように気をつけてさえいれば、何とかごまかせるはずだ。
「ジスレーヌ様、なるべく顔を見られないように私の影に隠れていてください。それと、怪しまれないように一応これを持っていてもらえますか」
「はい」
渡された書類の束を日記の上に重ねて手に持ち、トマスさんに続いて廊下を歩く。気づかれないかどきどきしたけれど、すれ違う人たちは誰もこちらに気を留める様子はなかった。
そうして会議が行われているという部屋のそばまで辿り着くと、扉につながる廊下を塞ぐように見張りの兵士が立っているのを見つけた。
「ジスレーヌ様、兵士の前で顔を上げないでくださいね。もちろん口も開かないでください」
「わかりました」
トマスさんの言葉にこくこくうなずき、緊張しながら兵士のほうへ近づく。
トマスさんは兵士の前まで行くと、「中に書類を持って行くよう頼まれたから通してくれ。彼女は手伝いだ」と落ち着いた口調で言った。
兵士は疑う素振りも見せず、すぐに先へ通してくれた。私のほうへはちらりと目線を向けるだけで、全く怪しんでいない様子だった。
「何とかなるものですね」
「はい、ほっとしました……」
「見張りがいるのはあそこだけですから、中へ入れると思います。しかし、ひとまずは外から様子をうかがいましょう」
トマスさんの言葉にうなずき、会議室の扉まで歩く。トマスさんの言う通り扉の前には見張りの姿はなく、私はそっと中の様子に聞き耳を立てた。
「だから俺はやってないと何度も言ってるだろう! オレリアが突然自分で服を脱ぎだした挙句、ナイフで腕を切りつけたんだ!」
「お言葉ですが殿下、オレリア様がそんな不可解な真似をするとは思えません」
「兵士たちの話ではオレリア様はひどく取り乱していたというではないですか。彼女が嘘を吐いているとは、私にはどうも……」
中からリュシアン様の怒鳴り声と、会議の参加者らしき人たちの声が聞こえてくる。
参加者の馬鹿げた主張に苛立っていると、ルナール公爵の悲しげな声が聞こえてきた。
「ああ、なんと嘆かわしい。殿下はオレリアが嘘を吐いたと仰るのですね……。殿下のことは私も娘も信頼していたのに……。オレリアはショックで今も寝込んでしまっているのですよ」
どう考えても演技としか思えないルナール公爵の声を聞いて、私はぎりぎり歯ぎしりした。なんて浅ましい男なのだろう。
会場は混乱状態だった。
声の一つ一つに耳を澄ますと、リュシアン様を擁護する声に、疑わしいと言う声、オレリア様に同情する声と、さまざまな言葉が入り混じっている。
私は今すぐにでも中へ飛び込んで、彼らに日記をつきつけたくて堪らなくなった。
「このような事件が起こってしまっては、王位継承についても考え直さなければならないのではないでしょうか」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。確かあれは、ルナール公爵家の傘下の貴族の声だ。
彼はいかにも心を痛めているような口調で、このような事件が起こっては国民だってリュシアン様を支持できないはずだ、隠ぺいするのにも限度がある、何よりオレリア嬢の心痛を考えれば何の処分もなしと言うわけにはいかないだろうと述べた。
陛下と王妃様が戻って来次第、そう進言するべきだと。
幾人かから賛成の声が上がる。
何をしらじらしい、と唇を強く噛みしめた。どうせあの男も、ルナール公爵と結託しているに違いないのだ。
すると、ざわめく会場の声を裂くように、ルナール公爵の重々しい声が響いた。
「起きてしまったことはもう覆せません。私からは、リュシアン殿下に適切な処分が下ることを願うだけです」
会場からはルナール公爵を支持する声がいくつも上がった。みんな公爵とオレリア様の荒唐無稽の嘘を、本当に信じているのだろうか。
いや、本当は真実なんて関係ないのかもしれない。
集まっている貴族の中には、公爵家に権力が移れば得をする者も多くいる。自分たちが優遇されるなら、一人の人間が陥れられようとかまわないのだ。
人々の興奮した声が耳をつく。
私は服を着替え、髪を後ろでお団子にまとめる。それからキャップを被って後ろ髪を覆った。
私がここにいることを一部の人以外は知らないから、変装して顔をはっきり見られないように気をつけてさえいれば、何とかごまかせるはずだ。
「ジスレーヌ様、なるべく顔を見られないように私の影に隠れていてください。それと、怪しまれないように一応これを持っていてもらえますか」
「はい」
渡された書類の束を日記の上に重ねて手に持ち、トマスさんに続いて廊下を歩く。気づかれないかどきどきしたけれど、すれ違う人たちは誰もこちらに気を留める様子はなかった。
そうして会議が行われているという部屋のそばまで辿り着くと、扉につながる廊下を塞ぐように見張りの兵士が立っているのを見つけた。
「ジスレーヌ様、兵士の前で顔を上げないでくださいね。もちろん口も開かないでください」
「わかりました」
トマスさんの言葉にこくこくうなずき、緊張しながら兵士のほうへ近づく。
トマスさんは兵士の前まで行くと、「中に書類を持って行くよう頼まれたから通してくれ。彼女は手伝いだ」と落ち着いた口調で言った。
兵士は疑う素振りも見せず、すぐに先へ通してくれた。私のほうへはちらりと目線を向けるだけで、全く怪しんでいない様子だった。
「何とかなるものですね」
「はい、ほっとしました……」
「見張りがいるのはあそこだけですから、中へ入れると思います。しかし、ひとまずは外から様子をうかがいましょう」
トマスさんの言葉にうなずき、会議室の扉まで歩く。トマスさんの言う通り扉の前には見張りの姿はなく、私はそっと中の様子に聞き耳を立てた。
「だから俺はやってないと何度も言ってるだろう! オレリアが突然自分で服を脱ぎだした挙句、ナイフで腕を切りつけたんだ!」
「お言葉ですが殿下、オレリア様がそんな不可解な真似をするとは思えません」
「兵士たちの話ではオレリア様はひどく取り乱していたというではないですか。彼女が嘘を吐いているとは、私にはどうも……」
中からリュシアン様の怒鳴り声と、会議の参加者らしき人たちの声が聞こえてくる。
参加者の馬鹿げた主張に苛立っていると、ルナール公爵の悲しげな声が聞こえてきた。
「ああ、なんと嘆かわしい。殿下はオレリアが嘘を吐いたと仰るのですね……。殿下のことは私も娘も信頼していたのに……。オレリアはショックで今も寝込んでしまっているのですよ」
どう考えても演技としか思えないルナール公爵の声を聞いて、私はぎりぎり歯ぎしりした。なんて浅ましい男なのだろう。
会場は混乱状態だった。
声の一つ一つに耳を澄ますと、リュシアン様を擁護する声に、疑わしいと言う声、オレリア様に同情する声と、さまざまな言葉が入り混じっている。
私は今すぐにでも中へ飛び込んで、彼らに日記をつきつけたくて堪らなくなった。
「このような事件が起こってしまっては、王位継承についても考え直さなければならないのではないでしょうか」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。確かあれは、ルナール公爵家の傘下の貴族の声だ。
彼はいかにも心を痛めているような口調で、このような事件が起こっては国民だってリュシアン様を支持できないはずだ、隠ぺいするのにも限度がある、何よりオレリア嬢の心痛を考えれば何の処分もなしと言うわけにはいかないだろうと述べた。
陛下と王妃様が戻って来次第、そう進言するべきだと。
幾人かから賛成の声が上がる。
何をしらじらしい、と唇を強く噛みしめた。どうせあの男も、ルナール公爵と結託しているに違いないのだ。
すると、ざわめく会場の声を裂くように、ルナール公爵の重々しい声が響いた。
「起きてしまったことはもう覆せません。私からは、リュシアン殿下に適切な処分が下ることを願うだけです」
会場からはルナール公爵を支持する声がいくつも上がった。みんな公爵とオレリア様の荒唐無稽の嘘を、本当に信じているのだろうか。
いや、本当は真実なんて関係ないのかもしれない。
集まっている貴族の中には、公爵家に権力が移れば得をする者も多くいる。自分たちが優遇されるなら、一人の人間が陥れられようとかまわないのだ。
人々の興奮した声が耳をつく。
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