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20.糾弾会議
④
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「公爵家のご子息……セルジュ・ルナール様を殺しかけた人間だと聞いて、私ははじめ彼女を警戒しました。
実際、屋敷に連れられてきた彼女は、冷たい目をして泣きも笑いもせず、奇妙に見えたのです。
私はあまり関りあいたくなく、依頼された通りに最低限彼女の様子を定期的に確認し、食材などの物資を届けるだけの接し方をしていました。
そんなある日、私の父が病に倒れました。
もともと体が強いほうではなかった父は、日が経つにつれ、どんどん弱っていくように見えました。
父の様子が気になりましたが、私には定期的にベアトリス様の様子を見て報告する義務があります。仕方なく屋敷まで出かけました。
玄関でいつも通り形式的に健康状態等を確認し、すぐに帰ろうとすると、ベアトリス様は珍しく私に声をかけました。『元気がありませんが、どうかなさったのですか?』と。
ベアトリス様が私の変化に気づいたことも、それを尋ねてくるのも意外でした。
私は心が疲れていたのか、警戒していたベアトリス様につい父のことをありのままに話してしまったのです。
ベアトリス様は静かに話を聞くと、私に少し待っているように言い、屋敷の中から小さな瓶を持って来ました。
『これをお父様に飲ませれば、少しは良くなるはずです』
ベアトリス様は、そう言って瓶を差し出すのです。
私は戸惑いました。目の前にいるのは、公爵家の子供を殺そうとした悪女のはずです。そんな人間からもらった薬など、恐ろしくて飲ませられるはずがありません。
しかし、彼女の目は澄みきって、嘘を吐いているようには見えませんでした。
感覚だけで信じるなんて愚かなのかもしれません。けれど私には彼女を疑う気にはなれませんでした。それで、家に帰ると、もらった薬を父に飲ませたのです。不思議と全く不安はありませんでした。
翌日になり、驚きました。寝ていても辛そうだった父が、起きて居間に座っています。父は私の顔を見ると、今朝になって急に体が軽くなっていた。あの薬のおかげかもしれないと笑うのです。
私はすぐさま屋敷に向かいました。
そして出てきたベアトリス様に何度も礼を言いました。ベアトリス様は何度頭を下げても表情一つ変えませんでしたが、最後に「よかったですね」と言ってくれました。
父の体はみるみるうちに回復していきました。薬がなくなると、ベアトリス様は当然のことのように新しい小瓶を渡してくれます。
私は深く彼女に感謝しました。命令されているだけとはいえ、私は彼女を閉じ込めている立場の人間です。その上、はじめは悪女だと決めつけ、態度もぞんざいでした。
そんな私に、彼女は手を差し伸べてくれたのです。
私が何かお礼できることはないかと尋ねると、ベアトリス様は息子に手紙とプレゼントを届けて欲しいと言いました。もちろんすぐさま了承し、彼女の一人息子が暮らす家まで届けに行きました。
ベアトリス様は、いつも息子のことを考えていました。ほとんど表情を変えない彼女が、息子の話をするときだけ、わずかに顔を緩めます。
ベアトリス様は息子にだけではなく、お世話になったからと、ほかの村人にも手紙を書いて、困ったことがあると助けてあげていました。
その頃には、もうベアトリス様が子供を殺しかけたなんて、信じられなくなっていました。
しかし、いくら彼女に感謝していても、罪を犯していないと信じていても、雇われているだけの監視係が公爵の命令に背くことはできません。
私は申し訳ない気持ちで彼女の様子を記録し、公爵家へ報告していました。
実際、屋敷に連れられてきた彼女は、冷たい目をして泣きも笑いもせず、奇妙に見えたのです。
私はあまり関りあいたくなく、依頼された通りに最低限彼女の様子を定期的に確認し、食材などの物資を届けるだけの接し方をしていました。
そんなある日、私の父が病に倒れました。
もともと体が強いほうではなかった父は、日が経つにつれ、どんどん弱っていくように見えました。
父の様子が気になりましたが、私には定期的にベアトリス様の様子を見て報告する義務があります。仕方なく屋敷まで出かけました。
玄関でいつも通り形式的に健康状態等を確認し、すぐに帰ろうとすると、ベアトリス様は珍しく私に声をかけました。『元気がありませんが、どうかなさったのですか?』と。
ベアトリス様が私の変化に気づいたことも、それを尋ねてくるのも意外でした。
私は心が疲れていたのか、警戒していたベアトリス様につい父のことをありのままに話してしまったのです。
ベアトリス様は静かに話を聞くと、私に少し待っているように言い、屋敷の中から小さな瓶を持って来ました。
『これをお父様に飲ませれば、少しは良くなるはずです』
ベアトリス様は、そう言って瓶を差し出すのです。
私は戸惑いました。目の前にいるのは、公爵家の子供を殺そうとした悪女のはずです。そんな人間からもらった薬など、恐ろしくて飲ませられるはずがありません。
しかし、彼女の目は澄みきって、嘘を吐いているようには見えませんでした。
感覚だけで信じるなんて愚かなのかもしれません。けれど私には彼女を疑う気にはなれませんでした。それで、家に帰ると、もらった薬を父に飲ませたのです。不思議と全く不安はありませんでした。
翌日になり、驚きました。寝ていても辛そうだった父が、起きて居間に座っています。父は私の顔を見ると、今朝になって急に体が軽くなっていた。あの薬のおかげかもしれないと笑うのです。
私はすぐさま屋敷に向かいました。
そして出てきたベアトリス様に何度も礼を言いました。ベアトリス様は何度頭を下げても表情一つ変えませんでしたが、最後に「よかったですね」と言ってくれました。
父の体はみるみるうちに回復していきました。薬がなくなると、ベアトリス様は当然のことのように新しい小瓶を渡してくれます。
私は深く彼女に感謝しました。命令されているだけとはいえ、私は彼女を閉じ込めている立場の人間です。その上、はじめは悪女だと決めつけ、態度もぞんざいでした。
そんな私に、彼女は手を差し伸べてくれたのです。
私が何かお礼できることはないかと尋ねると、ベアトリス様は息子に手紙とプレゼントを届けて欲しいと言いました。もちろんすぐさま了承し、彼女の一人息子が暮らす家まで届けに行きました。
ベアトリス様は、いつも息子のことを考えていました。ほとんど表情を変えない彼女が、息子の話をするときだけ、わずかに顔を緩めます。
ベアトリス様は息子にだけではなく、お世話になったからと、ほかの村人にも手紙を書いて、困ったことがあると助けてあげていました。
その頃には、もうベアトリス様が子供を殺しかけたなんて、信じられなくなっていました。
しかし、いくら彼女に感謝していても、罪を犯していないと信じていても、雇われているだけの監視係が公爵の命令に背くことはできません。
私は申し訳ない気持ちで彼女の様子を記録し、公爵家へ報告していました。
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