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声の主
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足が止まった。
目の前には小さなほこらがあった。
ここは、村の人間がくるところだ。
「よく来た、狐よ」
さっきの声だ。
思わず、俺はほこらの中をのぞきこんだ。
格子の奥に、木の置物が見える。
「もしかして、おまえが俺を呼んだのか……?」
「そうだ。私がおまえを呼んだ。待ちかねたぞ」
いつのまにか、雨音だけが消え、かわりに威厳のある声だけが頭に響く。
は? これが声の主だと?
俺は、体を震わせながらも、強気に言った。
「おまえ、人間のつくりもんだろ? なんで、しゃべれる?」
「そんなことより、狐よ。おまえの望みを叶えてやろう」
声は俺の問いに答えることなく、そう言い放った。
「望み?」
「ああ。今さっき、叫んでおったろう。雨にあたらず、ゆっくり眠れる場所が欲しいと」
そりゃあ、今の状況で欲しいものなど他にはない。
「ああ、そうだ! それが、おまえに叶えられるのか!?」
俺は、やけになって叫んだ。
「もちろんだ」
自信に満ちた声が、即座に戻ってきた。
「なら、やってみろよ!」
「わかった。だが、交換だ」
「交換? なんだそれ? 見てのとおり、おれは、なんも持っちゃいねえ」
「物ではない。ただ、入れ替わってくれればよい」
「入れ替わる? あんた、なに、言ってんだ? 冗談を聞く余裕なんて、俺にはねえんだよ!」
「いや、冗談ではない。わたしとおまえが入れ替われば、このほこらで、おまえは住める。雨風をしのげ、ゆっくり暮らせる」
「おい、からかってんのか!? 入れ替わるもなにも、そもそも、俺がそんな狭い場所に入れるわけねえだろう!」
「そうではない。私がおまえの体に入り、おまえが私の体に入るのだ」
「おいおい! ますます、無理じゃねえか!」
「無理ではない。おまえの承諾さえあれば、容易にできる」
「はっ、信じらんねえな……。じゃあ、仮に入れ替わったとしてだ。あんたを拝みに村の人間たちがやってくるだろう? 俺が入ってたら、奴らにばれて、殺されるじゃねえか。人間とは、おそろしい奴らだからな」
俺の言葉に、声が即座に言った。
「大丈夫だ。おまえが、私の体に入っていようといまいと、気づく人間などおらん。それで、どうする? 私と入れ替わるか、替わらぬか?」
せかすように強くなった雨粒が、疲れ果てた体に容赦なくたたきつけてくる。
どこでもいい……。
とにかく、ゆっくり眠りたい。
俺は思いっきり叫んだ。
「できるもんなら、やってみろ!」
「では、わたしと入れ替わることを、承諾するのだな」
と、声が俺にたたみかけてきた。
「ああ、承諾する。いくらでも、承諾してやらあ!」
目の前には小さなほこらがあった。
ここは、村の人間がくるところだ。
「よく来た、狐よ」
さっきの声だ。
思わず、俺はほこらの中をのぞきこんだ。
格子の奥に、木の置物が見える。
「もしかして、おまえが俺を呼んだのか……?」
「そうだ。私がおまえを呼んだ。待ちかねたぞ」
いつのまにか、雨音だけが消え、かわりに威厳のある声だけが頭に響く。
は? これが声の主だと?
俺は、体を震わせながらも、強気に言った。
「おまえ、人間のつくりもんだろ? なんで、しゃべれる?」
「そんなことより、狐よ。おまえの望みを叶えてやろう」
声は俺の問いに答えることなく、そう言い放った。
「望み?」
「ああ。今さっき、叫んでおったろう。雨にあたらず、ゆっくり眠れる場所が欲しいと」
そりゃあ、今の状況で欲しいものなど他にはない。
「ああ、そうだ! それが、おまえに叶えられるのか!?」
俺は、やけになって叫んだ。
「もちろんだ」
自信に満ちた声が、即座に戻ってきた。
「なら、やってみろよ!」
「わかった。だが、交換だ」
「交換? なんだそれ? 見てのとおり、おれは、なんも持っちゃいねえ」
「物ではない。ただ、入れ替わってくれればよい」
「入れ替わる? あんた、なに、言ってんだ? 冗談を聞く余裕なんて、俺にはねえんだよ!」
「いや、冗談ではない。わたしとおまえが入れ替われば、このほこらで、おまえは住める。雨風をしのげ、ゆっくり暮らせる」
「おい、からかってんのか!? 入れ替わるもなにも、そもそも、俺がそんな狭い場所に入れるわけねえだろう!」
「そうではない。私がおまえの体に入り、おまえが私の体に入るのだ」
「おいおい! ますます、無理じゃねえか!」
「無理ではない。おまえの承諾さえあれば、容易にできる」
「はっ、信じらんねえな……。じゃあ、仮に入れ替わったとしてだ。あんたを拝みに村の人間たちがやってくるだろう? 俺が入ってたら、奴らにばれて、殺されるじゃねえか。人間とは、おそろしい奴らだからな」
俺の言葉に、声が即座に言った。
「大丈夫だ。おまえが、私の体に入っていようといまいと、気づく人間などおらん。それで、どうする? 私と入れ替わるか、替わらぬか?」
せかすように強くなった雨粒が、疲れ果てた体に容赦なくたたきつけてくる。
どこでもいい……。
とにかく、ゆっくり眠りたい。
俺は思いっきり叫んだ。
「できるもんなら、やってみろ!」
「では、わたしと入れ替わることを、承諾するのだな」
と、声が俺にたたみかけてきた。
「ああ、承諾する。いくらでも、承諾してやらあ!」
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