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番を忘れる薬とは
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第二王子の叫び声に、王女様が耳をおさえた。
「ちょっと、ガイガー王子。そんな大きな声をだしたら耳が痛いわ」
「あ、すまない……。だが、本当に、そんな薬があるのか!?」
おさえきれない興奮で、また声が大きくなる第二王子。
番を忘れる薬があるなら飲みたい、という気持ちがあからさますぎる。
あれだけのことをして一緒になった王子妃を前に、今更、こんな態度をとるなんて、やっぱり最低……。
人の気持ちを少しも考えないバカ王子だ!
腹を立てる私の前に、甘い香りがただよってきた。
「ララ。新しいお菓子がきたから。口開けて」
と、ルーファスの声。
いらだっているものの、おいしそうな匂いに条件反射で口があいてしまう。
すぐさま、ルーファスが小さなお菓子を私の口にいれてきた。
ホロホロとくずれるお菓子は、イチゴの焼き菓子みたい。
はああ、おいしい……!
至福の味を堪能していると、ルーファスが優しくささやいてきた。
「ごめんね、ララ。奴の不快なさけび声、気持ち悪かったよね? ララの耳を汚した罪も上乗せして、あとで反撃するから」
ん? 私の耳を汚した罪を上乗せって……なにそれ?
不思議に思って、ルーファスを見た。
すると、
「逃げる言い訳なんてさせないためにも、反撃はあっちが仕掛けてくるまで、ちょっと待っててね、ララ」
と、きらきらした笑みを浮べたルーファス。
反撃という不穏な言葉と、私の名前を呼ぶ口調の甘さが一致しない……。
混乱する私の前で、第二王子と王女様が言い合っていた。
「ちょっと、ガイガー王子、椅子に座ってくださらない?」
「いや、そんなことより……」
「隣で立っていられると落ち着かなくて、先が話せないわ!」
王女様の言葉に、第二王子はあわてて椅子に座った。
そして、必死の形相で王女様に問いかけた。
「その薬を飲めば、本当に番を忘れられるのか……?」
「ええ、忘れられる……はずよ」
「はず、とは、どういうことだ?」
「そもそも、王家に伝わる番を忘れる薬は、王位を継ぐ者が、伴侶としてふさわしくない番が現れた時にだけ飲む薬なのよ。今の国王であるお父様も先代の国王であるおじいさまも薬は飲んではいない。それどころか、さかのぼっても、何代も薬を飲んだ国王はいないわね。つまり、本当にきれいさっぱり番のことが忘れられるのかは確証はないってことよ」
「だが、確証はなくても効果があるから、王家に伝わっているんだろう? それで、公爵はその薬をわけてもらえたのか?」
「いえ、国王であるお父様は薬を渡さなかったわ。王位を継ぐ者でなければ、その薬を飲むことは許されていない。国王や女王が番の影響を受けて国をおさめることに支障がでないようにするための薬。いわば、国にとっての非常用の特別な薬だから渡すことはできないって、お父様は公爵の願いを退けたのよ」
なるほど……。
確かに、とんでもない番が王妃や王配になって好き放題したら国が大変になるもんね。と、納得していると、王女様が不満そうに言った。
「お父様はそういうところ、本当に融通が利かないのよ。私だったら、長年使ってない薬だし、ちょうどいい機会だから、公爵子息に飲ませて効果をみてみたのに……。お父様はバカみたいに真面目なアジュお姉さまとそっくりなのよね。アジュお姉さまの番はね、学園の同級生だったフクロウの獣人なのよ。竜の獣人で、仮にも、将来、女王の地位につく王太女のくせに、頭脳だけが自慢で、特別な力もない番を受け入れるなんて信じられないわ。私だったら、番であっても認めない。即、番を忘れる薬を飲むわね。自分の伴侶には力の強い竜の獣人がふさわしいもの。それにしても、フクロウの獣人なんて、さすがにお父様も反対するかと思ったのに、将来の王配として認めるんだもの。本当にあり得ないわよね……」
王女様は、私や娘さんを獣人じゃない、ただの人だと散々馬鹿にしていたけれど、獣人であっても、勝手な順位をつける。自分が頂点にいると思っているんだろうね……。
他国だけれど、こんな人が王太女にならなくて本当によかったと思う。
「ラジュ王女。王太女の番のことなんて、どうでもいい。それより、その薬だ。公爵は番を忘れる薬を国王からもらえなかったんだろう?」
「ええ、そうね」
「じゃあ、結局、公爵の息子は番を忘れられず、母親より番を選んだということか……」
落胆したように言った第二王子。
「フフ……どうかしらね。実は、お父様に断られた公爵があまりに落胆していたから気の毒になって、代わりの物を差し上げたのよ」
王女様は自慢げな笑みをうかべて、そう言った。
「ちょっと、ガイガー王子。そんな大きな声をだしたら耳が痛いわ」
「あ、すまない……。だが、本当に、そんな薬があるのか!?」
おさえきれない興奮で、また声が大きくなる第二王子。
番を忘れる薬があるなら飲みたい、という気持ちがあからさますぎる。
あれだけのことをして一緒になった王子妃を前に、今更、こんな態度をとるなんて、やっぱり最低……。
人の気持ちを少しも考えないバカ王子だ!
腹を立てる私の前に、甘い香りがただよってきた。
「ララ。新しいお菓子がきたから。口開けて」
と、ルーファスの声。
いらだっているものの、おいしそうな匂いに条件反射で口があいてしまう。
すぐさま、ルーファスが小さなお菓子を私の口にいれてきた。
ホロホロとくずれるお菓子は、イチゴの焼き菓子みたい。
はああ、おいしい……!
至福の味を堪能していると、ルーファスが優しくささやいてきた。
「ごめんね、ララ。奴の不快なさけび声、気持ち悪かったよね? ララの耳を汚した罪も上乗せして、あとで反撃するから」
ん? 私の耳を汚した罪を上乗せって……なにそれ?
不思議に思って、ルーファスを見た。
すると、
「逃げる言い訳なんてさせないためにも、反撃はあっちが仕掛けてくるまで、ちょっと待っててね、ララ」
と、きらきらした笑みを浮べたルーファス。
反撃という不穏な言葉と、私の名前を呼ぶ口調の甘さが一致しない……。
混乱する私の前で、第二王子と王女様が言い合っていた。
「ちょっと、ガイガー王子、椅子に座ってくださらない?」
「いや、そんなことより……」
「隣で立っていられると落ち着かなくて、先が話せないわ!」
王女様の言葉に、第二王子はあわてて椅子に座った。
そして、必死の形相で王女様に問いかけた。
「その薬を飲めば、本当に番を忘れられるのか……?」
「ええ、忘れられる……はずよ」
「はず、とは、どういうことだ?」
「そもそも、王家に伝わる番を忘れる薬は、王位を継ぐ者が、伴侶としてふさわしくない番が現れた時にだけ飲む薬なのよ。今の国王であるお父様も先代の国王であるおじいさまも薬は飲んではいない。それどころか、さかのぼっても、何代も薬を飲んだ国王はいないわね。つまり、本当にきれいさっぱり番のことが忘れられるのかは確証はないってことよ」
「だが、確証はなくても効果があるから、王家に伝わっているんだろう? それで、公爵はその薬をわけてもらえたのか?」
「いえ、国王であるお父様は薬を渡さなかったわ。王位を継ぐ者でなければ、その薬を飲むことは許されていない。国王や女王が番の影響を受けて国をおさめることに支障がでないようにするための薬。いわば、国にとっての非常用の特別な薬だから渡すことはできないって、お父様は公爵の願いを退けたのよ」
なるほど……。
確かに、とんでもない番が王妃や王配になって好き放題したら国が大変になるもんね。と、納得していると、王女様が不満そうに言った。
「お父様はそういうところ、本当に融通が利かないのよ。私だったら、長年使ってない薬だし、ちょうどいい機会だから、公爵子息に飲ませて効果をみてみたのに……。お父様はバカみたいに真面目なアジュお姉さまとそっくりなのよね。アジュお姉さまの番はね、学園の同級生だったフクロウの獣人なのよ。竜の獣人で、仮にも、将来、女王の地位につく王太女のくせに、頭脳だけが自慢で、特別な力もない番を受け入れるなんて信じられないわ。私だったら、番であっても認めない。即、番を忘れる薬を飲むわね。自分の伴侶には力の強い竜の獣人がふさわしいもの。それにしても、フクロウの獣人なんて、さすがにお父様も反対するかと思ったのに、将来の王配として認めるんだもの。本当にあり得ないわよね……」
王女様は、私や娘さんを獣人じゃない、ただの人だと散々馬鹿にしていたけれど、獣人であっても、勝手な順位をつける。自分が頂点にいると思っているんだろうね……。
他国だけれど、こんな人が王太女にならなくて本当によかったと思う。
「ラジュ王女。王太女の番のことなんて、どうでもいい。それより、その薬だ。公爵は番を忘れる薬を国王からもらえなかったんだろう?」
「ええ、そうね」
「じゃあ、結局、公爵の息子は番を忘れられず、母親より番を選んだということか……」
落胆したように言った第二王子。
「フフ……どうかしらね。実は、お父様に断られた公爵があまりに落胆していたから気の毒になって、代わりの物を差し上げたのよ」
王女様は自慢げな笑みをうかべて、そう言った。
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