私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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どっちもひどい!

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結婚式当日に番だと大騒ぎして、ミナリア姉さまを散々傷つけて、一緒になった王子妃を前にして、「番でなければ、そんな平民の女、好きにならんだろう?」という、とんでもなく最低な発言をする第二バカ王子。

言葉をかわしたくもない相手だけれど、言い返さずにはいられない!

「好きになるのに、貴族か平民かどうかなんて関係ないです! きっと、公爵のご子息も娘さん自身にひかれたから、番という感覚を忘れても、娘さんの幸せを願う言葉を口にしたんだと思います!」

「はっ! そんなの口ではなんとでも言えるぞ。だが、俺だったら、番というつながりが切れた時、目の前に、番というだけでつながっていた、何とも思わない平民の女がいたら、文句のひとつでも言いたくなるだろうな」

「え? 文句を言う……? なんでそうなるの……?」 

心の中の疑問が、そのまま口をついて飛び出してしまった。

相手は王子だから不敬に当たる言葉遣いだけれど、正直、もうどうでもいい。
だって、なにひとつ敬えない相手だし!

「考えてもみろ。美貌、知性、身分、なにひとつとっても、元の婚約者に敵わない平民の女を、番というだけで選ばざるを得なかったんだぞ。番という呪縛がとれたら、文句を言いたくなってあたりまえだ」

想像をはるかに超えてくる最低発言に、絶句してしまう。

すると、王女様が笑いながら言った。

「ひどい男ね、ガイガー王子は。番のアンヌさんを前にして失礼よ。ねえ、アンヌさん?」

が、王子妃は返事をしない。
とういうか、王女様の声も聞こえていないみたい。

さっきは涙をこぼした王子妃だけれど、今は無表情なまま、ふたりとは違う方向をぼんやりと見ていた。

「あら、もう、竜の力が切れてきたのかしら? まあ、でも、おとなしいからいいわね」
と、つぶやいた王女様。

それって、やっぱり、竜の力で操っていたってことだよね……。

王女様も第二バカ王子も、他人を思う気持ちがまるでないみたい。 
どっちも、ひどい!

靴を投げつけたくなる気持ちをおさえながら、ふたりを見据えると、なぜだか、澱んだ笑みを浮かべて、じっとりと私を見てきた第二バカ王子。

「マイリ侯爵令嬢……。君は、やはり、あの頃のミナリアに似てるな……。顔もだが、その他人を思って怒るような優しいところも似ている。まあ、ミナリアは君みたいに感情をあらわにするより、静かに怒ってたがな……」

そう言うと、楽しそうにククッと笑った。
ぞわっとして、鳥肌がたった。

が、次の瞬間、私の視界から気持ちの悪いバカ王子が消えた。

その替わりに見えるのは、銀色に輝く世界……じゃなくて、銀色に輝くトレイ……?

ルーファスが銀のトレイを立てるようにして、私と第二王子の視界を遮っていた。

「ええと、ルーファス……? なにをしているの……?」

「ララの顔を、あんな薄汚い邪な視線にさらしたくないからね。とっさにキリアンの持っていたトレイを借りて、ついたて替わりにしたんだ。とりあえず、これで我慢して、ララ」

「おい、ルーファス! 薄汚い邪な視線とは俺のことか!? おまえ、王子の俺にむかって失礼だろう!?」

トレイの向こうから、第二王子の怒りの声が聞こえてくるが、ルーファスは無視。

確かに、あの気持ちの悪いバカ王子より、美しい銀のトレイを見ているほうが、比べるまでもなく、ずーっといい……。
じゃなくて、この変な状況をとめなきゃ!

「あのね、ルーファス。私を心配してくれる気持ちは嬉しいけど、キリアンさんのトレイだったら、それ返さないと。それになにより、トレイを立てるようにして持っていたら、ルーファスの手がつかれるよ。私は全然大丈夫だから、やめよう、ルーファス」

「僕の手を心配してくれて、ありがとう、ララ。でも、いつでもララを守れるように、これでも鍛えてるからね。トレイぐらい、何日持ったままでいようが、なんともないよ」
と、きらきらした笑顔で言われたら、何も言えなくなってしまう。

「鍛えた腕の使い方がおかしいわね……」

レーナおばさまはあきれたように言うと、すぐに、そばにいる侍女のライザさんに指示をだした。
ライザさんは、手早く、ルーファスが銀のトレイを立てている場所に、こんもりとお花がいけられた花瓶を置いて、銀のトレイとさしかえた。

さすが、レーナおばさま! 
これならお茶会のテーブルとして違和感はないし、トレイはキリアンさんの手に無事戻った。

ほっとした瞬間、あっけにとられたような顔で王女様がつぶやいた。

「やっぱり、ララベルさんが関わると、優秀なルーファスが奇行に走るわね……。まあ、離れてしまえば問題ないでしょうから、もうこんなこともなくなるわ……」

ん? それはどういう意味? 
と思った時だった。

「僕がララと離れることは絶対にない」

ルーファスの地をはうような声が響いた。
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