私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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心は護衛騎士

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なにがあっても、王女様と第二バカ王子からルーファスを守る! 
と、ふたりへの闘志をメラメラと燃やす私。

「王女様、では、お庭を私が案内いたしますわ。ちょうど、今なら、マラミが咲いていますし。この部屋から直接お庭にでられるようになっていますから」
と、レーナおばさま。

この部屋の窓からは、噴水が見えている。

そこには、天使の像があるんだけれど、小さい頃、その像とルーファスを見比べて、ルーファスのほうがずっとかわいくて、ずっと天使だよねと、見るたび言っていた私。

小さい頃のルーファスの愛らしさを思い出すと、またまた顔がにやけてくるけれど、今はそんな場合じゃない。

つまり、天使の像が見えている場所がこの庭の中心。
小さい頃から、庭でかくれんぼとかして遊んだから、庭のすみずみまで私は知り尽くしている。

マラミの咲いている場所まで、いくつか道はあるけれど、どれも、わりと距離があるんだよね。

私の見た目は弱そうであっても、心は誰にも負けないルーファスの護衛騎士。
最短距離はどの道だろう? なんて、色々な可能性を考えてみる。

「ロイド公爵夫人、せっかくだけれど、私はルーファスにお庭を案内してもらいたいの。いいわよね、ルーファス?」

はい、きたきたきたー!
やっぱり、王女様はルーファスに何かをしかけようとしてるんだ!

ルーファスは、さっき、「庭で何をするつもりか知らないけど、せっかくだから、誘いにのってみないとね」とか、つぶやいていたけど、向こうの狙いはルーファスなんだから、断るんだよ? 
という思いをこめて、腕を軽くひっぱった。

「わかりました。僕が案内します」

伝わってない! 

「ルーファス、危ないよ!」

思わず、小さい声でそう言うと、ルーファスが私の顔をのぞきこんで口パクでこう言った。

(待ってて。かたづけてくるから)

かたづけてくる……?
それって、どういうこと……?

とにかく、ルーファスだけで行かせるわけにはいかない。

私は思わず、手をあげて、王女様に向かって宣言した。

「それなら、私も行きます!」

「ダメだよ、ララ。ララはここにいて」
と、ルーファス。

そのルーファスの声が聞こえた王女様は勝ち誇ったような笑みを浮べて、私を見た。

「ルーファスの言うとおりよ、ララベルさん。私はルーファスとふたりっきりで庭を見たいの。邪魔しないでくださる? ねえ、ルーファス」

「ふたりっきり? いえ、ガイガー王子と、そこにいる王女の従者にも庭についてきてもらいますが?」 

ん……?
つまり、ルーファスは、第二王子とロイスさんと王女様の3人をつれて庭にでようとしているの!?

すぐに、第二王子が声をあげた。

「俺は庭にはでないぞ。花など、全く興味がないからな。せっかくだ。ラジュ王女とルーファスのふたりでマラミの花を見てくればいい。それに、公爵家の庭なら危険もないだろうし、ラジュ王女の従者もついていかなくていいだろう。ラジュ王女のご指名だ。ルーファス、しっかり案内してこい。俺はここでマイリ侯爵令嬢と話をして待っているから、存分にゆっくりしてくるがいい」

そう言って、気持ちの悪い笑みをうかべて、私を見た第二王子。

ぞわっとして、またもや、鳥肌がたった。
天敵に投げる靴はあっても、話すことなんてなにもないんだけど!?

「ガイガー王子」

ルーファスが驚くほど冷たい声でよびかけた。

第二王子は、気持ちの悪い笑みをひっこめて、ぎょっとしたようにルーファスを見た。

「な……なんだ?」

「勘違いをしているようなので、訂正をしておきます」

「訂正……?」

「ええ。僕は、別に王女の安全のために従者を連れて行こうとしているわけでもないし、ガイガー王子が花を見たいかどうかなんて、それこそどうでもいいし聞いてもいない」

「は……?」

「僕がいないところで、信用できない人間をララのそばにおいていきたくないだけなんですよ。つまり、王女とガイガー王子と従者の三人を連れて庭にでるか、それとも庭にでないかのどちらかです。そのほかの選択肢はない」

きっぱりと言い放ったルーファス。

え? 私のため……?
自分の身が危ないのに、ルーファスはいつだって私のことを心配してくれてる。

思わずジーンとしていると、
「ルーファス、おまえっ、俺のことが信用できないって言うのか!? 王子の俺に向かって無礼だろう!?」
と、第二王子が声を荒げた。

「王子であろうが、無礼であろうが関係ない。ガイガー王子のララを見るその目が信用ならない。ララにかける言葉も信用ならない。ララに発する声も信用ならない。ララに向ける気配も信用ならない。ララを見て何を思って何を想像しているかも信用できない。つまり、ララのそばにおいておけるほどの信用など、ガイガー王子には全くない」

凍り付くような視線で第二王子を見据えながら、一息に言い切ったルーファス。

部屋全体が静まりかえった。

ええと、ルーファス……?
いや、私を心配してくれるのは嬉しいけれど、その言い方だと、なんだか、妙な感じが……。

と思った時、レーナおばさまが私にささやいてきた。

「なんか、怖いでしょう? 重すぎる息子で本当にごめんなさいね、ララちゃん」

静まり返った部屋に、パチパチパチとかわいた音がなった。

見ると、王女様が、とってつけたように、手をたたいている。
微笑んでいるけれど、不満そうな顔。

「まあ、ルーファスったら、本当に幼馴染思いで優しいわね。獣人の血がはいっていない、ひ弱なだと、やはり、そんなに心配なものなのね。わかったわ、ルーファスの言う通りにするわ。ガイガー王子も一緒に庭へ行きましょう。もちろん、ロイスも行くのよ」

「いや、ラジュ王女! 俺はルーファスにあんなことを言われて、おめおめと従うようなことなどしたくない! 絶対に庭にはでないぞ!」

「あら、ガイガー王子。私にそんなことが言えて? 私の望むときにいつでも動くと約束したはずよね。違うかしら?」

「いや……約束した。だが、いくら何でも許せない……」

「ガイガー王子。私は、もうすぐジャナ国に帰らないといけない。この国にきてから、ルーファスと離れてしまうのは、正直寂しいの。だから、ルーファスとの思い出が欲しいのよ。ガイガー王子も当然、協力してくれるわよね? 私の望むことだもの。それに、さっきも言ったけれど、ガイガー王子の欲しい物を、私が心地よく渡せるかどうかは、私が、このお茶会を楽しめるかどうかにかかってるわ。忘れたわけではないでしょう?」

第二王子は一瞬顔をしかめたあと、「わかった……。庭にいく」と、苦いものを吐き出すように言った。
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