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寒さに強い令嬢
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「ごめんね、アデル。あれ、耳障りだから、もう一回、凍らせてくる」
そう言うと、ユーリは、素早く立ちあがって歩きだした。
「ユーリ! 人間は凍らせるものじゃないわよ!」
私はユーリをひきとめるべく、あわてて腕をのばした。
が、悲しいかな、腕が短いせいなのか、私の手は空を切った。
そして、魔王ユーリは、冷気を身にまとい、颯爽と間仕切りの向こうへと歩いていった。
あ、でも、自分を凍らせた人間をみたら、あの令嬢も、すぐに逃げるわよね…。
ユーリが永久に凍らせる前に、逃げて!
と、心で願いつつ、私も、ユーリを追いかけた。
カフェの入口付近に、イリスさんと、あの筆頭公爵家の令嬢がいた。
今日も今日とて、金色の髪をゴージャスに巻き、オレンジ色の豪華なドレスを着ている。
パーティーの時と大差のない派手ないでたち。
この素朴なカフェの中で、ものすごい違和感ね…。
そして、その後ろには、昨日も見たような取り巻きの令嬢が、今日は一人だけいた。
令嬢二人は、突如現れたユーリを見て、固まっている。
それは、そうよね…。
怖いものをみたら、固まってしまうことがあるものね…。
でも、二人とも、早く逃げて!
と、内心叫んだ時、正気に戻った二人がそろって、小さく悲鳴をあげた。
が、あれ…?
なんか、二人の令嬢の反応が違うわ。
筆頭公爵家の令嬢は、何故か、頬をそめて、嬉しそうな声をあげた。
そうして、もうひとりの令嬢は、明らかに顔色も悪く、恐怖の悲鳴をあげた。
この場合、あきらかに変なのは、筆頭公爵家の令嬢よね?
一体、どうして…?
と思ったら、筆頭公爵家の令嬢が、あろうことか、ユーリにむかって進み出た。
え?! なんで?
今、まさに、自分に襲いかかってこようとしているクマに近寄っているのと同じよ?!
が、筆頭公爵家の令嬢は、怯えるどころか、上目遣いで、うっとりとユーリを見ながら言った。
「ユーリ様! まさか、こんなところで、またお会いできるなんて、嬉しい! 運命ですわ!」
運命…?
ええと、それは、永遠に凍らされる運命ってことかしら…?
「お知り合いですか?」
イリスさんが、少し驚いたような声で、ユーリにたずねた。
「は? まさか。違うよ。あり得ないから」
これ以上ないほど、冷たい声で答えた魔王ユーリ。
否定の言葉が多いよ、ユーリ…。
そして、私ですら身震いするほどの冷たい声なのに、あろうことか、ご令嬢はウフッと笑った。
え? 今、笑う要素、皆無だったわよね…?!
その途端、ユーリから、どわっと冷気がもれだして、思わず震える私。
イリスさんは、素早くドアと窓をあけはじめた。
そうよね…。
外のあたたかい空気を取り入れないと、店内が、すぐに冷凍庫みたいになりそうよね…。
後ろにいる取り巻き令嬢も、震えている。
が、筆頭公爵家の令嬢のほうは、寒さに強いのか、全然平気そう…。
恐ろしいことに、更に、ユーリに近づくと、すねたような顔をして、ねっとりと言った。
「まあ、ユーリ様ったら、いじわる言って。昨日、あんなに親しくお話したじゃないですか?」
「なにその妄想。気持ち悪いんだけど」
こら、ユーリ! なんてことを言うの? 素で毒を吐いたらダメよ! 他国の令嬢だよ?!
ほら、お得意の麗しい外向き笑顔を貼り付けて?!
が、令嬢はひるむことなく、身をよじらせて、果敢に攻める。
「もう、ユーリ様。そんなことを言ったら、私、悲しい」
ユーリから、一気に冷気があふれでた。寒いわ…。
が、この令嬢、体だけじゃなく、精神も寒さに強いのね!
だって、目からブリザードを出している状態のユーリにむかって、そんな軽口を叩けるなんて、すごいわ!
※ 更新が遅くなってすみません! そんななか、読んでくだっさった方、ありがとうございます!
これから、更新の頻度を増やしていく予定です。よろしくお願いします。
そう言うと、ユーリは、素早く立ちあがって歩きだした。
「ユーリ! 人間は凍らせるものじゃないわよ!」
私はユーリをひきとめるべく、あわてて腕をのばした。
が、悲しいかな、腕が短いせいなのか、私の手は空を切った。
そして、魔王ユーリは、冷気を身にまとい、颯爽と間仕切りの向こうへと歩いていった。
あ、でも、自分を凍らせた人間をみたら、あの令嬢も、すぐに逃げるわよね…。
ユーリが永久に凍らせる前に、逃げて!
と、心で願いつつ、私も、ユーリを追いかけた。
カフェの入口付近に、イリスさんと、あの筆頭公爵家の令嬢がいた。
今日も今日とて、金色の髪をゴージャスに巻き、オレンジ色の豪華なドレスを着ている。
パーティーの時と大差のない派手ないでたち。
この素朴なカフェの中で、ものすごい違和感ね…。
そして、その後ろには、昨日も見たような取り巻きの令嬢が、今日は一人だけいた。
令嬢二人は、突如現れたユーリを見て、固まっている。
それは、そうよね…。
怖いものをみたら、固まってしまうことがあるものね…。
でも、二人とも、早く逃げて!
と、内心叫んだ時、正気に戻った二人がそろって、小さく悲鳴をあげた。
が、あれ…?
なんか、二人の令嬢の反応が違うわ。
筆頭公爵家の令嬢は、何故か、頬をそめて、嬉しそうな声をあげた。
そうして、もうひとりの令嬢は、明らかに顔色も悪く、恐怖の悲鳴をあげた。
この場合、あきらかに変なのは、筆頭公爵家の令嬢よね?
一体、どうして…?
と思ったら、筆頭公爵家の令嬢が、あろうことか、ユーリにむかって進み出た。
え?! なんで?
今、まさに、自分に襲いかかってこようとしているクマに近寄っているのと同じよ?!
が、筆頭公爵家の令嬢は、怯えるどころか、上目遣いで、うっとりとユーリを見ながら言った。
「ユーリ様! まさか、こんなところで、またお会いできるなんて、嬉しい! 運命ですわ!」
運命…?
ええと、それは、永遠に凍らされる運命ってことかしら…?
「お知り合いですか?」
イリスさんが、少し驚いたような声で、ユーリにたずねた。
「は? まさか。違うよ。あり得ないから」
これ以上ないほど、冷たい声で答えた魔王ユーリ。
否定の言葉が多いよ、ユーリ…。
そして、私ですら身震いするほどの冷たい声なのに、あろうことか、ご令嬢はウフッと笑った。
え? 今、笑う要素、皆無だったわよね…?!
その途端、ユーリから、どわっと冷気がもれだして、思わず震える私。
イリスさんは、素早くドアと窓をあけはじめた。
そうよね…。
外のあたたかい空気を取り入れないと、店内が、すぐに冷凍庫みたいになりそうよね…。
後ろにいる取り巻き令嬢も、震えている。
が、筆頭公爵家の令嬢のほうは、寒さに強いのか、全然平気そう…。
恐ろしいことに、更に、ユーリに近づくと、すねたような顔をして、ねっとりと言った。
「まあ、ユーリ様ったら、いじわる言って。昨日、あんなに親しくお話したじゃないですか?」
「なにその妄想。気持ち悪いんだけど」
こら、ユーリ! なんてことを言うの? 素で毒を吐いたらダメよ! 他国の令嬢だよ?!
ほら、お得意の麗しい外向き笑顔を貼り付けて?!
が、令嬢はひるむことなく、身をよじらせて、果敢に攻める。
「もう、ユーリ様。そんなことを言ったら、私、悲しい」
ユーリから、一気に冷気があふれでた。寒いわ…。
が、この令嬢、体だけじゃなく、精神も寒さに強いのね!
だって、目からブリザードを出している状態のユーリにむかって、そんな軽口を叩けるなんて、すごいわ!
※ 更新が遅くなってすみません! そんななか、読んでくだっさった方、ありがとうございます!
これから、更新の頻度を増やしていく予定です。よろしくお願いします。
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