天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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いいことを思いついた

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叫び声をあげたのは、カップルの令嬢だ。
視線の先は窓の外。

あわてて、振り返る。

思わず、ぎょっとした。

だって、小さな窓には、金色の大きな瞳。
しかも、こっちを見ている。

が、この目は、もしや……。

「虹竜さん!?」

「虹の子よ。迎えにきた」

地響きのような声がカフェに響いた。

「えっ? 今のは何? まさか、虹竜の声……!?」

信じられないといったように、隣の紳士がつぶやいている。

ユーリが私を抱き込む手に一層力を入れた。
強すぎて血がとまりそう……。

「ちょっと、ラス。あの目、つぶしてきてよ」
と、冷たい声で物騒なことを言うユーリ。

「だから、無理ですって。ドラゴンと戦ったことがないから。しかも、最初のチビ竜より、ずっと大きいし、あれ、伝説の虹竜でしょう? 目なんかつぶそうとしたら、俺、一瞬で燃やされますよ」
と、ラスさんが淡々と言い返した。

「相打ち目指して、体張ってみてよ。骨はひろってあげるから」

更に、ユーリがとんでもないことを言った瞬間、地鳴りのような声がした。

「水の悪魔の非情なことよ。やはり、虹の子を任せてはおけん!」

虹竜の放つ圧がすごい。

と、思った時、隣の紳士が興奮状態で叫んだ。

「すごい! 竜が、そこの人外の美貌の人より、ずっと人間らしいことを言ってる!」

デュラン王子がぷはっとふきだした。

「確かに。次期公爵より、よほど、虹竜のほうが人間らしいというか、情があるよね」

そう言って、笑うデュラン王子。

楽しそうな人たちとは対照的に、カップルはふるえあがっている。
いつのまにか、意識を取り戻している、取り残された取り巻き令嬢も怯えた顔をしている。

虹竜さんにここから離れてもらわないと、あの人たち、帰ろうにも帰れないわね……。

あ! そうだわ! いいことを思いついた!

「虹竜さん!」

私は大きな声で呼びかけた。

「なんだ? 虹の子よ」

窓から見える金色の瞳が優しい光を放つ。

「向こうの山に滝があるのが見えると思うんだけど、あそこ、ドラゴンの湯っていうのですって! 昔、ドラゴンが体をあたためていたらしいわ。ねえ、ヨーカンと一緒にゆっくり入ってきたら?」

「体をあたためる湯があるのか。だが、今は寒くない」

「え? ……あ、でも、虹竜さんは復活したばかりよね? 昔、ドラゴンが入っていたお湯らしいから、ドラゴンの体にいいお湯なんじゃないかしら? せっかく近くなんだし、行ってみたら?」
と、必死ですすめる私。

「わかった。虹の子がそれほど心配してくれているのだからな。小さき竜と共に入ってみることにしよう」
と、虹竜が答えた。

次の瞬間、金色の瞳が窓から見えなくなった。

紳士があわてて、窓に駆け寄った。
そして、空を見上げて叫んだ。

「うわあ、虹竜が飛んでる! 小さい黒い竜も一緒に飛んでる! すごい! すごい!」

よかった……! 
この間に、怖がっている人たちに帰ってもらおう。

ほっとしたとき、背後から、ユーリの声がした。

「あのドラゴン、馬鹿だよね? アデルは心配したんじゃなくて、おっぱらっただけなのにね?」

「こら、ユーリ。おっぱらっただなんて、言い方が悪いわ!」

「でも、アデルは、あれをこのカフェから引き離して、その間に、怖がってる客たちを帰そうと思ったんでしょ? つまりは、おっぱらったんだよね」 

うっ……、そう言われれば、そうなるわね。


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