ノエルの結婚

仁茂田もに

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第二章 夏

第七話*

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「そのまま、感じていてくれ」
「え? ひゃっ」

 一言断ってから、ヴィンセントはノエルの胸に顔を寄せる。そのまま赤く熟れた頂を舐めると、唇でじゅうっと強く吸った。

「あっ!? や、やんっ」

 じゅっじゅっと繰り返し吸われて、ノエルはヴィンセントの頭を必死に引き離そうとした。
 しかし、大柄な上に力のあるヴィンセントを、ヒートのノエルが何とか出来るはずもない。彼から与えられる快楽を素直に受け取るしかなかった。
 ヒート中のオメガは、何をされても気持ちがいいものだ。性欲が高まるだけではなく、全身が性感帯になってアルファを誘う。ただでさえそんな状態なのに、今ノエルに触れてくるのは心から信頼している相手で、おまけにこちらの反応を見ながら丁寧に触ってくるのだ。そんなの気持ちいいに決まっている。

 左右の胸を丹念に舐めながらも、ヴィンセントはノエルの身体に触れていった。
 背中を辿り、腰を撫でられ、足を擽られた。まろやかな曲線を描く臀部を確かめるように揉まれ、ノエルはびくりと身体を揺らす。いちいち初心な反応がお気に召したのか、ヴィンセントが満足そうなため息を漏らした。
 ノエルの身体はがりがりだが、尻には僅かばかり肉が付いている。オルグレン家のみんなやヴィンセントが日々、せっせとノエルに食べ物を与え続けた成果だ。
 そして、その肉を堪能してようやくヴィンセントはその奥へと手を伸ばした。

「はぁ、あ、ああ」
「痛くないか?」
「ないっ、いたくないからぁ、早く触ってください」

 足を割られ、その間にヴィンセントが入り込んでくる。大きく開いた足の間、双丘の奥に太くて硬い指先が後孔に触れた瞬間、中からじゅわりと愛液が溢れ出たのが分かった。
 襞を揉まれ、ゆっくりと指が挿入される。もどかしいほどの丁寧さに、ノエルは泣きごとを漏らす。

「やぁっ、あ、もう早く」

 口付けをされているときも、胸を舐められているときも、ずっとずっとそこが寂しかった。
 オメガの身体はアルファの長大な陰茎を受け入れられるように出来ている。慎重に慣らしてもらわずとも、挿入することは出来るのだ。
 それなのに、ヴィンセントはさらにゆっくりとノエルの中を蕩かした。
 抱きしめながら中の粘膜を広げ、溢れる愛液を丹念に塗り込める。腹側のちょうど陰茎の裏辺りを指で押されたときは、飛び上がるほどの刺激だった。

「あっ!?」
「ん、気持ちよさそうだな」

 気持ちがいいなんてものではない。神経に直接触られているような強い刺激だった。
 それが下腹部から背骨を伝って、頭に快感を伝えてくる。ノエルは無意識のうちに、やだやだと悲鳴を上げながらヴィンセントから逃げようとした。けれども、やはりノエルにのしかかったままのヴィンセントの身体はびくともしない。
 それどころか、逃げようとするノエルの身体をがっしりと抑え込んで、自らのもとへ引き戻そうとする。

「やぁッ、あんッ、そこ、やだぁッ」
「ノエル、大丈夫だ。それは『気持ちがいい』だ」

 そう、気持ちがいい。だからダメなのだ。
 気持ちがよすぎて頭が馬鹿になってしまいそうだった。意味のあることは考えられず、ただただヴィンセントのものが欲しかった。

「もう、だめっ。いれて、いれてください……ッ」

 ぼろぼろと泣きながらノエルは懇願した。手を伸ばして触れたヴィンセントの下腹部はずっしりと重く猛っており、いまだ穿いたままのボトムスの前がひどくきつそうだ。彼も十分興奮している。

 ――これで満たして欲しい。

「……ッ」

 手のひらですり、と撫でるとヴィンセントがびくりと身体を揺らす。
 吐いた息は熱く、ノエルを見つめる目は欲に染まってぎらぎらと強い光を放っている。ヴィンセントだって、我慢しているはずだ。

「怖くないから……」

 甘えるように言えば、ヴィンセントがちっ、と荒く舌打ちして前を寛げる。
 取り出されたヴィンセントのものを見てノエルは目を見開いた。布越しに見て大きいだろうと思っていたけれど、想像以上の大きさだった。

「あ――」
「ゆっくり、息を吐いていてくれ」

 ノエルの綻んだ蕾に、先端がぐっと押し当てられる。

「ああっ、あん、あ、ぁあ――」

 ヴィンセントに言われたとおり、ノエルは必死で息を吐いた。
 その動きに合わせて、ヴィンセントが慎重に入ってくる。隘路を無理やり押し広げる圧迫感と与えられる充足感に、ノエルは思わず目の前の大きな身体にしがみついた。

「大丈夫か?」
「だいじょうぶです……」

 先ほどヴィンセントが散々慣らしてくれたおかげで、痛みはまったくない。ただ内臓を広げられる感覚はあって、息が少々苦しいのは仕方がないことだと思う。
 けれど、それ以上にノエルは満たされていた。
 足りないと思っていた身体の一部分がしっかり補充されたというか、どこかで取りこぼしてきた自分の欠片を見つけたというか。不完全だった自分が、ヴィンセントという存在を得てようやく新円になれたような、そんな感じがあった。

「嬉しい……」

 心のままにそう言って、ノエルはへにょりと眉を下げた。

「そうか」

 ほっと息を吐いて、ヴィンセントがノエルに口づける。
 触れ合うだけの柔らかい口づけは甘く、ノエルの心を溶かしていく。
 ノエルはたぶん、ずっとこうしたかったのだ。
 ヴィンセントを身体の奥深くまで受け入れて、お互いの境界線が曖昧になるくらい抱き合いたかった。彼のフェロモンを肺一杯に吸い込んで、その香りに浸りたかった。

「動いてもいいだろうか」
「……はい」

 ヴィンセントが腰を揺らす。ようやく挿った屹立を引くと、張り出したくびれの部分がノエルの中を擦り上げるようにして動いてしまう。繋がっている部分からぞくぞくと這い上がってくる快感に、ノエルは身悶えた。

「あっ、あ」

 しかし、陰茎はぎりぎりまで引き抜かれると、すぐさま奥へと戻ってくる。

「はぁっ、ノエルの中は熱いな」

 嘆息とともに言われたけれど、ノエルとしてはよく分からない。それよりも中を穿つヴィンセントのものの方が熱いように思った。

「ヴィンスさん」

 ヴィンセントが身体を起こして、着ていたシャツを床に投げ捨てた。
 直接、肌と肌が触れ合った場所は、しっとりとお互いの皮膚が馴染んで甘い匂いがした。

「ノエル、ノエル――」

 ヴィンセントが何度もノエルの名前を呼ぶ。
 それに答えるために、ノエルは必死でヴィンセントの背中に腕を回した。
 目の前の首元に鼻先を埋めて、相手の匂いを嗅ぐ。それだけで後孔がきゅうきゅうとヴィンセントを締め付けてしまう。

 ――愛しい、大好き。もっとひとつになりたい。

 とろりと溶けた目で、ノエルはヴィンセントを見つめた。見返してくる彼もまたヒートに煽られて理性が溶けているのだろう。いつもは凛々しい緑色の瞳が、潤んでいるように見えた。
 ヴィンセントは何度も何度もノエルの中で吐き出して、そのたびに愛おしげにノエルに口づけた。けれども、その優しさは変わらずずっとノエルを気遣い続けてくれた。


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