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第三章 秋
第二話
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客人をもてなすときは、何がいるのだろうか。ノエルは腕を組んでうーんと首を捻った。
奥さまは相手の訪問の目的に合わせるのが大切だと言っていた。ご婦人を招いたお茶会であれば、上質な茶葉と季節の菓子を。成人男性が参加する酒宴であれば、高価な酒や煙草を用意する。
しかし、今回の客人はエドガーである。おまけに、彼の目的は「ノエルに会う」ことだ。茶や酒は飲むかもしれないが、別に上等なものでなくても文句は言わないはずだから、家にあるもので十分な気がする。
だったら、「準備」とやらは特に何もいらないのではないだろうか。
そんなノエルの考えを知らないマーサはとても慌てた様子だった。
「大変、急いで準備をしなくては」
今にも家を飛び出していきそうなマーサを引き留めて、ノエルは首を横に振る。
「すごく急だよね。でも、エドガーさまだし大丈夫だよ。お気遣いなくって書いてあるし」
「そういうわけにはいきません。いくらお身内だろうと、お客様をお迎えするのだから、何もしないわけには……」
「エドガーは大らかだし、優しくて穏やかな人だよ」
ノエルは彼が怒ったところを一度も見たことがなかった。だから、多少の不手際があっても大丈夫だろう。
おろおろと慌てるマーサを宥めていると、玄関の方でドアベルがちりんちりんと激しく鳴った。ドアを開け閉めする大きな音が響いて、大きな声で名前を呼ばれた。
「ノエル!」
「あ、ヴィンスさん。おかえりなさい」
血相を変えて飛び込んできたのは、ヴィンセントだった。
いつも冷静沈着な彼にしては、珍しくひどく慌てている。マーサの慌てようといい勝負だ。
「どうしたんですか?」
ノエルは自分がエドガーの訪問に驚いていたことも忘れて、ヴィンセントに訊ねた。
「オルグレン大尉が東部の視察に来るそうだ」
「ん?」
「その後、時間を作るからノエルに会いたいという連絡が来た。一緒に食事でもどうかと。それで、どうやら官舎ではなくうちに泊まりたいらしい」
ヴィンセントの言葉を聞いて、ノエルはなんだ、と息を吐いた。どうやら、自分とヴィンセントは同じことで驚いていたらしい。
「俺のところにもエドガーさまから手紙が来ましたよ」
ついさっき届いた、とヴィンセントにエドガーからの手紙を見せる。
内容を確かめてヴィンセントが盛大に眉根を寄せた。あまり感情を表に出さない彼にしては、とても珍しい表情だ。
「じゃあ、やっぱりここに書いてある日付は本当に『明日』のことなんですね。何かの間違いかと思いました」
マーサが顔色を悪くしながら言った。
「そのとおりだ。マーサ、本当に申し訳ないが、ロバートと手分けして客人を迎える準備をしてくれ。もてなしには食堂と応接室を使う。客室は寝具がまだ用意出来ていなかったのだったか?」
「さようでございます。旦那さまのおっしゃるとおり、客室はまだ使える状態ではありませんわ」
寝具を今から手配するにしても、明日までに届くでしょうか。
いや、街の布屋であればなんとかなるかもしれない。
ヴィンセントとマーサがふたりで慌てたまま話し合っている。ノエルはそんなふたりの様子を不思議そうに見つめた。ふたりがどうしてそんなに取り乱しているのか、分からなかったからだ。
「ねぇ、ヴィンスさん」
「どうした、ノエル」
ノエルはヴィンセントの服の裾を摘まんだ。くいっと引くと、いつものようにヴィンセントが優しい目を向けてくれる。こんなに慌てていても、ヴィンセントはどこまでも優しい。
貧困街で色々な人を見てきたノエルには、これがとてもすごいことだと分かっていた。
「たぶん、何も用意しなくて大丈夫ですよ。エドガーさまだし」
「え?」
「部屋は俺と一緒でいいと思うし、食事も俺たちが普段食べているものを多めに作っておいたらいいですよ。エドガーさまはたぶん、そのつもりで来るんだと思います」
にこにこと笑って言うと、ヴィンセントとマーサが目を丸くする。
「お客さまが、ノエルさまと同じ部屋に泊まられるというのは……」
「エドガーさまはお優しいから、大丈夫です」
奥さまはきっと、客人を迎えるためには準備が必要だから、客側も急な訪ないは駄目だと言っていたのだ。けれど、特に準備が必要でなければ、急でもいいのかもしれない。
エドガーの「明日」の訪問は、そういうことだ。
満面の笑顔で言い切るノエルに、ヴィンセントは困惑した顔をしていた。しかし、少し考えて「そうかもしれないな」と頷く。
「ノエルの言うとおり向こう都合の急な訪問だ。こちらの用意にも限界がある。気を遣わずにいい、ということだと捉えよう」
「よろしいのでしょうか」
眉を下げるマーサだったが、ヴィンセントは「いざとなれば床でも屋外でも寝られる」と言った。帝国軍人として野営訓練は受けている、と大真面目に言った彼自身も同じようにどこでも寝られるらしい。
「だから、オルグレン大尉とノエルが一緒の部屋に寝るのは駄目だ」
「そうですか? でも、帝都ではよく一緒に寝ていましたよ」
オルグレン家の屋敷では、エドガーやセドリックはよくノエルと一緒に寝てくれた。
夜を怖がる幼いノエルをふたりはよく慰めてくれたのだ。どんなに恐ろしい夢を見ても、涙が止まらなくても、ふたりの温かい腕に抱きしめられると、大きな安心感に包まれることが出来た。
しかし、ヴィンセントはもう一度首を横に振る。
「私が嫌なんだ。ノエルはもう、私の伴侶だからな。成人した男性との共寝は駄目だ」
真剣な顔で言われて、ノエルは数度瞬いた。そしてヴィンセントの言葉の意味を理解して、ぶわりと頬を赤く染めた。
ヴィンセントはノエルが自分以外と一緒に寝るのが嫌なのだ。それはもしかして、やきもちというやつではないだろうか。
こんな立派なヴィンセントが、ノエルに対してやきもちを焼くだなんて。
そう考えただけでノエルは胸の中が無性にそわそわした。なんだか恥ずかしくて、ヴィンセントの顔を見ていられない。
――そうか、俺はもうヴィンセントの伴侶だから。エドガーさまやセドリックさまとは一緒に寝てはいけないのか。
それは寂しいことのはずなのに、ノエルはちっとも嫌ではなかった。
俯いて照れるノエルの頭をヴィンセントの大きな手が撫でる。
「とはいえ、さすがに大尉を床では寝かせられないがな。まぁ、部屋は何とかなるだろう。なんなら、オルグレン大尉には私の部屋を使ってもらってもいい。私がノエルとともに寝ればいいんだ」
「あらあら、まぁまぁ、そうですわね」
マーサがあらあら、と繰り返しながら微笑ましそうにノエルとヴィンセントを見た。
その温かな視線が妙に照れ臭くて、ノエルは大人しく口を噤むことにした。恥ずかしい。けれど、これもまた決して嫌な気持ちではなかった。
それから、マーサはばたばたと忙しく立ち回っていた。客人を迎える準備をするためにロバートを呼びに行き、今度はふたりがかりで家の中を行ったり来たりしていた。
ノエルはもう一度、エドガーには必要ないと思う、と訴えたけれど、そういうわけにもいかない、とマーサは笑って言うのだった。
何はともあれ、エドガー・オルグレンは明日ブラッドフォード邸を訪れることになった。
ノエルがエドガーに会うのは本当に久しぶりで、結婚してからは当然初めてのことだった。
ノエルは隣に立つヴィンセントをちらりと見た。
ヴィンセントはいつ見ても精悍な顔立ちをしたとても立派なアルファだ。
そんな彼がノエルの伴侶であることを、ノエルはエドガーに自慢したいと思った。ノエルが立派なアルファと結婚したことを、エドガーはきっと喜んでくれるだろう。そのことを想像して、ノエルはなんだかとても嬉しくなった。
「ヴィンスさん」
「なんだ?」
「俺、エドガーさまにヴィンスさんのこと自慢しちゃいますね」
にこりと笑って言うと、ヴィンセントが一瞬虚を突かれたような顔をした。しかし、すぐに恥ずかしそうに眦を染めて口を隠した。
「……ほどほどにな」
「はい!」
ノエルはエドガーに会うのがとても楽しみだった。
奥さまは相手の訪問の目的に合わせるのが大切だと言っていた。ご婦人を招いたお茶会であれば、上質な茶葉と季節の菓子を。成人男性が参加する酒宴であれば、高価な酒や煙草を用意する。
しかし、今回の客人はエドガーである。おまけに、彼の目的は「ノエルに会う」ことだ。茶や酒は飲むかもしれないが、別に上等なものでなくても文句は言わないはずだから、家にあるもので十分な気がする。
だったら、「準備」とやらは特に何もいらないのではないだろうか。
そんなノエルの考えを知らないマーサはとても慌てた様子だった。
「大変、急いで準備をしなくては」
今にも家を飛び出していきそうなマーサを引き留めて、ノエルは首を横に振る。
「すごく急だよね。でも、エドガーさまだし大丈夫だよ。お気遣いなくって書いてあるし」
「そういうわけにはいきません。いくらお身内だろうと、お客様をお迎えするのだから、何もしないわけには……」
「エドガーは大らかだし、優しくて穏やかな人だよ」
ノエルは彼が怒ったところを一度も見たことがなかった。だから、多少の不手際があっても大丈夫だろう。
おろおろと慌てるマーサを宥めていると、玄関の方でドアベルがちりんちりんと激しく鳴った。ドアを開け閉めする大きな音が響いて、大きな声で名前を呼ばれた。
「ノエル!」
「あ、ヴィンスさん。おかえりなさい」
血相を変えて飛び込んできたのは、ヴィンセントだった。
いつも冷静沈着な彼にしては、珍しくひどく慌てている。マーサの慌てようといい勝負だ。
「どうしたんですか?」
ノエルは自分がエドガーの訪問に驚いていたことも忘れて、ヴィンセントに訊ねた。
「オルグレン大尉が東部の視察に来るそうだ」
「ん?」
「その後、時間を作るからノエルに会いたいという連絡が来た。一緒に食事でもどうかと。それで、どうやら官舎ではなくうちに泊まりたいらしい」
ヴィンセントの言葉を聞いて、ノエルはなんだ、と息を吐いた。どうやら、自分とヴィンセントは同じことで驚いていたらしい。
「俺のところにもエドガーさまから手紙が来ましたよ」
ついさっき届いた、とヴィンセントにエドガーからの手紙を見せる。
内容を確かめてヴィンセントが盛大に眉根を寄せた。あまり感情を表に出さない彼にしては、とても珍しい表情だ。
「じゃあ、やっぱりここに書いてある日付は本当に『明日』のことなんですね。何かの間違いかと思いました」
マーサが顔色を悪くしながら言った。
「そのとおりだ。マーサ、本当に申し訳ないが、ロバートと手分けして客人を迎える準備をしてくれ。もてなしには食堂と応接室を使う。客室は寝具がまだ用意出来ていなかったのだったか?」
「さようでございます。旦那さまのおっしゃるとおり、客室はまだ使える状態ではありませんわ」
寝具を今から手配するにしても、明日までに届くでしょうか。
いや、街の布屋であればなんとかなるかもしれない。
ヴィンセントとマーサがふたりで慌てたまま話し合っている。ノエルはそんなふたりの様子を不思議そうに見つめた。ふたりがどうしてそんなに取り乱しているのか、分からなかったからだ。
「ねぇ、ヴィンスさん」
「どうした、ノエル」
ノエルはヴィンセントの服の裾を摘まんだ。くいっと引くと、いつものようにヴィンセントが優しい目を向けてくれる。こんなに慌てていても、ヴィンセントはどこまでも優しい。
貧困街で色々な人を見てきたノエルには、これがとてもすごいことだと分かっていた。
「たぶん、何も用意しなくて大丈夫ですよ。エドガーさまだし」
「え?」
「部屋は俺と一緒でいいと思うし、食事も俺たちが普段食べているものを多めに作っておいたらいいですよ。エドガーさまはたぶん、そのつもりで来るんだと思います」
にこにこと笑って言うと、ヴィンセントとマーサが目を丸くする。
「お客さまが、ノエルさまと同じ部屋に泊まられるというのは……」
「エドガーさまはお優しいから、大丈夫です」
奥さまはきっと、客人を迎えるためには準備が必要だから、客側も急な訪ないは駄目だと言っていたのだ。けれど、特に準備が必要でなければ、急でもいいのかもしれない。
エドガーの「明日」の訪問は、そういうことだ。
満面の笑顔で言い切るノエルに、ヴィンセントは困惑した顔をしていた。しかし、少し考えて「そうかもしれないな」と頷く。
「ノエルの言うとおり向こう都合の急な訪問だ。こちらの用意にも限界がある。気を遣わずにいい、ということだと捉えよう」
「よろしいのでしょうか」
眉を下げるマーサだったが、ヴィンセントは「いざとなれば床でも屋外でも寝られる」と言った。帝国軍人として野営訓練は受けている、と大真面目に言った彼自身も同じようにどこでも寝られるらしい。
「だから、オルグレン大尉とノエルが一緒の部屋に寝るのは駄目だ」
「そうですか? でも、帝都ではよく一緒に寝ていましたよ」
オルグレン家の屋敷では、エドガーやセドリックはよくノエルと一緒に寝てくれた。
夜を怖がる幼いノエルをふたりはよく慰めてくれたのだ。どんなに恐ろしい夢を見ても、涙が止まらなくても、ふたりの温かい腕に抱きしめられると、大きな安心感に包まれることが出来た。
しかし、ヴィンセントはもう一度首を横に振る。
「私が嫌なんだ。ノエルはもう、私の伴侶だからな。成人した男性との共寝は駄目だ」
真剣な顔で言われて、ノエルは数度瞬いた。そしてヴィンセントの言葉の意味を理解して、ぶわりと頬を赤く染めた。
ヴィンセントはノエルが自分以外と一緒に寝るのが嫌なのだ。それはもしかして、やきもちというやつではないだろうか。
こんな立派なヴィンセントが、ノエルに対してやきもちを焼くだなんて。
そう考えただけでノエルは胸の中が無性にそわそわした。なんだか恥ずかしくて、ヴィンセントの顔を見ていられない。
――そうか、俺はもうヴィンセントの伴侶だから。エドガーさまやセドリックさまとは一緒に寝てはいけないのか。
それは寂しいことのはずなのに、ノエルはちっとも嫌ではなかった。
俯いて照れるノエルの頭をヴィンセントの大きな手が撫でる。
「とはいえ、さすがに大尉を床では寝かせられないがな。まぁ、部屋は何とかなるだろう。なんなら、オルグレン大尉には私の部屋を使ってもらってもいい。私がノエルとともに寝ればいいんだ」
「あらあら、まぁまぁ、そうですわね」
マーサがあらあら、と繰り返しながら微笑ましそうにノエルとヴィンセントを見た。
その温かな視線が妙に照れ臭くて、ノエルは大人しく口を噤むことにした。恥ずかしい。けれど、これもまた決して嫌な気持ちではなかった。
それから、マーサはばたばたと忙しく立ち回っていた。客人を迎える準備をするためにロバートを呼びに行き、今度はふたりがかりで家の中を行ったり来たりしていた。
ノエルはもう一度、エドガーには必要ないと思う、と訴えたけれど、そういうわけにもいかない、とマーサは笑って言うのだった。
何はともあれ、エドガー・オルグレンは明日ブラッドフォード邸を訪れることになった。
ノエルがエドガーに会うのは本当に久しぶりで、結婚してからは当然初めてのことだった。
ノエルは隣に立つヴィンセントをちらりと見た。
ヴィンセントはいつ見ても精悍な顔立ちをしたとても立派なアルファだ。
そんな彼がノエルの伴侶であることを、ノエルはエドガーに自慢したいと思った。ノエルが立派なアルファと結婚したことを、エドガーはきっと喜んでくれるだろう。そのことを想像して、ノエルはなんだかとても嬉しくなった。
「ヴィンスさん」
「なんだ?」
「俺、エドガーさまにヴィンスさんのこと自慢しちゃいますね」
にこりと笑って言うと、ヴィンセントが一瞬虚を突かれたような顔をした。しかし、すぐに恥ずかしそうに眦を染めて口を隠した。
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「はい!」
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