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第四章 冬
最終話
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ふ、と意識が浮上した。瞼を開けて、何度も瞬きをする。
窓から差し込む柔らかな冬の日射しと、石炭が爆ぜる小さな音。目の前に広がる上掛けは紺色で、見上げた天蓋を覆う布もまた落ち着いた紺色をしていた。
一瞬、ノエルは自分がどこにいるのか分からなかった。しかし、すぐにそこがヴィンセントの部屋であることを理解する。ヒートを起こしてよく分からない衝動に駆られたノエルは、自らの足でこの部屋に来た。そのことを思い出して、がばりと身体を起こした。
「ヴィンスさん……?」
部屋の中は静まり返っていた。
身体のどうしようもない火照りは落ち着いている。帰って来たヴィンセントに散々抱かれて何度も果てた。身体には情事の痕がはっきりと残っているし、項には確かな痛みがある。
ヴィンセントがノエルのそこを噛んだからだ。
アルファがヒート中のオメガの項を噛むことをボンドバイトという。アルファとオメガが番になるための行為で、それがなされれば番関係が成立したということだった。
つまり、ノエルとヴィンセントは番になったのだ。
それなのに、そばにヴィンセントがいない。ノエルは寝台の上にひとりぽつんと取り残されていた。
どこに行ったのだろう、と一瞬不安に思ったノエルだったが、寝台の上—―というか、自分の周囲にこんもりと盛られたヴィンセントの衣服を見てほっと安堵の息を吐く。
この部屋にはヴィンセントの匂いが染み付いている。嗅いでいるととても落ち着くのに、どうしてだか官能をそそる不思議な香りだ。ここで待っていれば、絶対にヴィンセントが来てくれる、という安心の匂いでもあった。
「怖くない」
ぽつり、とノエルは呟いた。
こんなふうに整えられた寝室はノエルにとって恐ろしくて堪らない場所のはずだった。しっかりと閉じられた扉も、鍵の開かない窓も全てがノエルを閉じ込めるための檻だった。手足を繋ぐ鎖の幻が見えて、冷や汗が止まらないこともあった。
しかし、この部屋はまったく怖くなかった。それどころか、ヴィンセントの匂いで満ちたここにずっといたいとまで思ってしまう。
だって、ここは「巣」だから。――だから大丈夫。
それに、待っていればヴィンセントはここに絶対に帰ってくる。その安心感がノエルの心を占めていた。
ヒート明けの倦怠感もあり、起きていると少し身体がきつかった。いい匂いがする寝台に勢いよく倒れ込むと、その振動でふわりとヴィンセントのフェロモンが舞う。誰もいないのをいいことに、ノエルは思いっきりその匂いを吸い込んだ。
「ヴィンスさんの匂いする」
我ながらいい巣を作ったものだ、と他人ごとのように感心した。
オメガが巣作りをすることは知識としては知っていた。けれども、実際に自分が作ってみるまではその理由も意図もよく変わらなかったし、必要があるとも思えなかった。過去二回のヒートを巣を作らずに終えたこともあり、その必要性を理解していなかったのだ。
しかし、経験してみて分かった。これは確かにいいものだ。
番の匂いに包まれると安心するし、オメガは本能が全開になるとどうしても情緒が乱れてしまうから、その対策にもなるのだろう、と思う。
「ノエル? 起きていたのか」
巣の中でごろごろしていると、部屋の扉がノックもなしに突然開いた。入って来たのは当然ヴィンセントで、手には水差しに入った水や軽食ののった銀盆を持っている。ヒート前にマーサがナッツや果物を用意してくれていたから、その類だろう。
「今、起きました」
「身体は大丈夫か? 辛いところは?」
サイドテーブルに銀盆を置いて、ヴィンセントが心配そうに近づいてくる。平気です、と答えると緑色の瞳が柔らかく細められた。
「ヒートは夜中くらいに落ち着いた。抑制剤と避妊薬を飲ませたから、これ以上ひどくなることはないと思う」
ノエルがヒートを起こしたのは、三日前だという。ヒート中の記憶が曖昧なノエルは、その言葉にいつもよりも長いな、と驚きつつも頷いた。ノエルのヒートは今回も含めてまだ三回目で、未成熟な可能性もあると医者にも言われていた。これからもその程度や期間は変わっていくかもしれない。
「前のものより少し長かったですね。ヴィンスさん、お仕事は大丈夫ですか」
「軍の規定では、番がいるアルファはヒート休暇が認められている。心配しなくていい」
三日間もヒートに付き合わせてしまった、と申し訳なく感じて訊ねると、ヴィンセントは苦笑しながら頭を撫でてくれた。大きな手のひらがノエルの乱れた髪を梳いて、整えてくれる。
気持ちがいい。心の中にじんわりと温かな感情が広がって思わず顔が綻んでしまう。
「我慢はしないでくれ。一番症状が強いときに、薬で無理やり抑え込むのはあまり身体にもよくないらしいからな」
「はい……」
人よりもヒートが来るのが遅かったノエルだ。薬を使うのは慎重にした方がいいのだろう。
ヴィンセントは誰よりもノエルのことを思いやってくれる。その事実が少し申し訳なくて、けれどもとても嬉しかった。
「項は痛むか?」
「え、っと。少しだけ」
「……思いっきり噛んでしまったから」
首に巻かれていた包帯を見て、ヴィンセントが言った。
包帯の上から触ると微かに痛い。しかし、ノエルにとってはその痛みすらも嬉しくて、喜びを噛み締めるようにその痛みを楽しんだ。別に痛いのが好きというわけではないけれど、これは特別な痛みだ。
「すぐによくなります」
えへへ、と笑うノエルにヴィンセントはほっとしたように息を吐いた。
ノエルよりもずっと年上で頼りがいがあるはずの彼は、ノエルに嫌がられることが何よりも恐ろしいのだという。顔立ちは整っているが強面で、表情もあまり変わらない。きっと仕事中はもっと厳めしい顔をしている狼のような人なのに、ノエルの前だけは大きな犬のようになってしまう。優しくて、可愛いらしい、ノエルだけのアルファ。
そんなヴィンセントだから、ノエルは彼のことを心の底から愛おしく思うのだ。
身体を起こして、ヴィンセントに向き直る。ヴィンセントはぎゅっと眉間に皺を寄せて、何やら難しいことを考えているようだった。
「……今度、一緒に帝都に行こうか」
「帝都?」
眉間の皺はそのままに、ヴィンセントが言う。その突然の提案にノエルは首を傾げた。
「里帰りだ。今度の春でノエルが東部に来てちょうど一年になる。番になった報告も兼ねて、一度准将閣下たちの顔を見に帰らないか」
ヴィンセントが寝台に腰かけてノエルの手を握った。
「お仕事は大丈夫なのですか?」
「休むと言うより、帝都へ業務の報告へ行くのにノエルを帯同するという感じだ。私は仕事に行くが、ノエルはオルグレン邸でゆっくりさせてもらえばいい」
ノエルとしてはとても嬉しい話ではあった。仕事で行くと言うヴィンセントは、きっとゆっくりは出来ないだろうけれど、それでも旦那さまや奥さまに会えるのは嬉しい。
「いいんですか?」
「そろそろ頃合いだろう。それに番になったと報告をしなければ」
ヴィンセントの言葉にノエルはぱっと顔を輝かせた。確かにそうだ。
ヴィンセントを紹介してくれた旦那さまにはお礼が言いたいし、奥さまには屋敷の管理のことで聞きたいことがある。それに、セドリックには直接会って「自分は幸せだ」とはっきりと伝えなくてはいけない。
「嬉しいです」
「そうか。では私も准将閣下に文を送ろう。予定を合わせなくては」
ヴィンセントが柔らかく微笑んだ。
その珍しい笑顔が嬉しくて堪らなくて、愛おしくて、ノエルはヴィンセントの手を握り返した。大きくて温かな手がノエルの荒れた細い手を包む。
ノエルの手は相変わらず汚れている。この屋敷でも石炭を暖炉に補充するのはノエルの仕事だし、最近ではマーサに教えてもらって魚料理の特訓もしている。皿洗いをすれば手はあかぎれでがさがさになって、香油をぬってもぬっても追いつかない。
そんなノエルの手にヴィンセントは優しく、そして大切そうに触れてくれる。
ノエルはそのままでいいのだ、とヴィンセントに言われているような気がした。
どんなふうに生きても、どんなノエルでも、その全てをありのままにヴィンセントは受け入れてくれる。
そんな人が自分の番で本当に本当に幸せだと思った。
「俺、ヴィンスさんと結婚出来てよかったです。番になれて、本当に幸せ……」
ヴィンセントを見つめながら、ノエルは泣いた。灰色の瞳からぼろぼろと大粒の涙が零れて、その白い頬を濡らす。滲む視界の中でヴィンセントが慌てているのが分かった。
思えば、ノエルはこうして自分の感情のままに涙を流したことがなかった。
夜の寝室で混乱して泣きわめいたことはあったが、あのときだって涙は出ていなかったように思う。たぶん、売られた先でさんざん虐待されて、いつのまにか心が凍り付き涙が枯れ果ててしまったのだ。
あの辛い日々で亡くした心が、オルグレン家で守られ、ヴィンセントに出会ったことでようやく花開いた。
ノエル、と何度も名前を呼びながら涙を拭ってくれるヴィンセントが可愛くて、ノエルは思わず笑う。その満面の笑みを、ヴィンセントはいつまでも眩しそうに見つめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて「ノエルの結婚」は完結になります。
ふたりが帝都へと里帰りする後日談を書き下ろして、10月12日に開催されますJ.GARDEN58にて頒布いたします。詳しくはX(https://x.com/moninimoda)にて告知いたしますので、興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします。
窓から差し込む柔らかな冬の日射しと、石炭が爆ぜる小さな音。目の前に広がる上掛けは紺色で、見上げた天蓋を覆う布もまた落ち着いた紺色をしていた。
一瞬、ノエルは自分がどこにいるのか分からなかった。しかし、すぐにそこがヴィンセントの部屋であることを理解する。ヒートを起こしてよく分からない衝動に駆られたノエルは、自らの足でこの部屋に来た。そのことを思い出して、がばりと身体を起こした。
「ヴィンスさん……?」
部屋の中は静まり返っていた。
身体のどうしようもない火照りは落ち着いている。帰って来たヴィンセントに散々抱かれて何度も果てた。身体には情事の痕がはっきりと残っているし、項には確かな痛みがある。
ヴィンセントがノエルのそこを噛んだからだ。
アルファがヒート中のオメガの項を噛むことをボンドバイトという。アルファとオメガが番になるための行為で、それがなされれば番関係が成立したということだった。
つまり、ノエルとヴィンセントは番になったのだ。
それなのに、そばにヴィンセントがいない。ノエルは寝台の上にひとりぽつんと取り残されていた。
どこに行ったのだろう、と一瞬不安に思ったノエルだったが、寝台の上—―というか、自分の周囲にこんもりと盛られたヴィンセントの衣服を見てほっと安堵の息を吐く。
この部屋にはヴィンセントの匂いが染み付いている。嗅いでいるととても落ち着くのに、どうしてだか官能をそそる不思議な香りだ。ここで待っていれば、絶対にヴィンセントが来てくれる、という安心の匂いでもあった。
「怖くない」
ぽつり、とノエルは呟いた。
こんなふうに整えられた寝室はノエルにとって恐ろしくて堪らない場所のはずだった。しっかりと閉じられた扉も、鍵の開かない窓も全てがノエルを閉じ込めるための檻だった。手足を繋ぐ鎖の幻が見えて、冷や汗が止まらないこともあった。
しかし、この部屋はまったく怖くなかった。それどころか、ヴィンセントの匂いで満ちたここにずっといたいとまで思ってしまう。
だって、ここは「巣」だから。――だから大丈夫。
それに、待っていればヴィンセントはここに絶対に帰ってくる。その安心感がノエルの心を占めていた。
ヒート明けの倦怠感もあり、起きていると少し身体がきつかった。いい匂いがする寝台に勢いよく倒れ込むと、その振動でふわりとヴィンセントのフェロモンが舞う。誰もいないのをいいことに、ノエルは思いっきりその匂いを吸い込んだ。
「ヴィンスさんの匂いする」
我ながらいい巣を作ったものだ、と他人ごとのように感心した。
オメガが巣作りをすることは知識としては知っていた。けれども、実際に自分が作ってみるまではその理由も意図もよく変わらなかったし、必要があるとも思えなかった。過去二回のヒートを巣を作らずに終えたこともあり、その必要性を理解していなかったのだ。
しかし、経験してみて分かった。これは確かにいいものだ。
番の匂いに包まれると安心するし、オメガは本能が全開になるとどうしても情緒が乱れてしまうから、その対策にもなるのだろう、と思う。
「ノエル? 起きていたのか」
巣の中でごろごろしていると、部屋の扉がノックもなしに突然開いた。入って来たのは当然ヴィンセントで、手には水差しに入った水や軽食ののった銀盆を持っている。ヒート前にマーサがナッツや果物を用意してくれていたから、その類だろう。
「今、起きました」
「身体は大丈夫か? 辛いところは?」
サイドテーブルに銀盆を置いて、ヴィンセントが心配そうに近づいてくる。平気です、と答えると緑色の瞳が柔らかく細められた。
「ヒートは夜中くらいに落ち着いた。抑制剤と避妊薬を飲ませたから、これ以上ひどくなることはないと思う」
ノエルがヒートを起こしたのは、三日前だという。ヒート中の記憶が曖昧なノエルは、その言葉にいつもよりも長いな、と驚きつつも頷いた。ノエルのヒートは今回も含めてまだ三回目で、未成熟な可能性もあると医者にも言われていた。これからもその程度や期間は変わっていくかもしれない。
「前のものより少し長かったですね。ヴィンスさん、お仕事は大丈夫ですか」
「軍の規定では、番がいるアルファはヒート休暇が認められている。心配しなくていい」
三日間もヒートに付き合わせてしまった、と申し訳なく感じて訊ねると、ヴィンセントは苦笑しながら頭を撫でてくれた。大きな手のひらがノエルの乱れた髪を梳いて、整えてくれる。
気持ちがいい。心の中にじんわりと温かな感情が広がって思わず顔が綻んでしまう。
「我慢はしないでくれ。一番症状が強いときに、薬で無理やり抑え込むのはあまり身体にもよくないらしいからな」
「はい……」
人よりもヒートが来るのが遅かったノエルだ。薬を使うのは慎重にした方がいいのだろう。
ヴィンセントは誰よりもノエルのことを思いやってくれる。その事実が少し申し訳なくて、けれどもとても嬉しかった。
「項は痛むか?」
「え、っと。少しだけ」
「……思いっきり噛んでしまったから」
首に巻かれていた包帯を見て、ヴィンセントが言った。
包帯の上から触ると微かに痛い。しかし、ノエルにとってはその痛みすらも嬉しくて、喜びを噛み締めるようにその痛みを楽しんだ。別に痛いのが好きというわけではないけれど、これは特別な痛みだ。
「すぐによくなります」
えへへ、と笑うノエルにヴィンセントはほっとしたように息を吐いた。
ノエルよりもずっと年上で頼りがいがあるはずの彼は、ノエルに嫌がられることが何よりも恐ろしいのだという。顔立ちは整っているが強面で、表情もあまり変わらない。きっと仕事中はもっと厳めしい顔をしている狼のような人なのに、ノエルの前だけは大きな犬のようになってしまう。優しくて、可愛いらしい、ノエルだけのアルファ。
そんなヴィンセントだから、ノエルは彼のことを心の底から愛おしく思うのだ。
身体を起こして、ヴィンセントに向き直る。ヴィンセントはぎゅっと眉間に皺を寄せて、何やら難しいことを考えているようだった。
「……今度、一緒に帝都に行こうか」
「帝都?」
眉間の皺はそのままに、ヴィンセントが言う。その突然の提案にノエルは首を傾げた。
「里帰りだ。今度の春でノエルが東部に来てちょうど一年になる。番になった報告も兼ねて、一度准将閣下たちの顔を見に帰らないか」
ヴィンセントが寝台に腰かけてノエルの手を握った。
「お仕事は大丈夫なのですか?」
「休むと言うより、帝都へ業務の報告へ行くのにノエルを帯同するという感じだ。私は仕事に行くが、ノエルはオルグレン邸でゆっくりさせてもらえばいい」
ノエルとしてはとても嬉しい話ではあった。仕事で行くと言うヴィンセントは、きっとゆっくりは出来ないだろうけれど、それでも旦那さまや奥さまに会えるのは嬉しい。
「いいんですか?」
「そろそろ頃合いだろう。それに番になったと報告をしなければ」
ヴィンセントの言葉にノエルはぱっと顔を輝かせた。確かにそうだ。
ヴィンセントを紹介してくれた旦那さまにはお礼が言いたいし、奥さまには屋敷の管理のことで聞きたいことがある。それに、セドリックには直接会って「自分は幸せだ」とはっきりと伝えなくてはいけない。
「嬉しいです」
「そうか。では私も准将閣下に文を送ろう。予定を合わせなくては」
ヴィンセントが柔らかく微笑んだ。
その珍しい笑顔が嬉しくて堪らなくて、愛おしくて、ノエルはヴィンセントの手を握り返した。大きくて温かな手がノエルの荒れた細い手を包む。
ノエルの手は相変わらず汚れている。この屋敷でも石炭を暖炉に補充するのはノエルの仕事だし、最近ではマーサに教えてもらって魚料理の特訓もしている。皿洗いをすれば手はあかぎれでがさがさになって、香油をぬってもぬっても追いつかない。
そんなノエルの手にヴィンセントは優しく、そして大切そうに触れてくれる。
ノエルはそのままでいいのだ、とヴィンセントに言われているような気がした。
どんなふうに生きても、どんなノエルでも、その全てをありのままにヴィンセントは受け入れてくれる。
そんな人が自分の番で本当に本当に幸せだと思った。
「俺、ヴィンスさんと結婚出来てよかったです。番になれて、本当に幸せ……」
ヴィンセントを見つめながら、ノエルは泣いた。灰色の瞳からぼろぼろと大粒の涙が零れて、その白い頬を濡らす。滲む視界の中でヴィンセントが慌てているのが分かった。
思えば、ノエルはこうして自分の感情のままに涙を流したことがなかった。
夜の寝室で混乱して泣きわめいたことはあったが、あのときだって涙は出ていなかったように思う。たぶん、売られた先でさんざん虐待されて、いつのまにか心が凍り付き涙が枯れ果ててしまったのだ。
あの辛い日々で亡くした心が、オルグレン家で守られ、ヴィンセントに出会ったことでようやく花開いた。
ノエル、と何度も名前を呼びながら涙を拭ってくれるヴィンセントが可愛くて、ノエルは思わず笑う。その満面の笑みを、ヴィンセントはいつまでも眩しそうに見つめていた。
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これにて「ノエルの結婚」は完結になります。
ふたりが帝都へと里帰りする後日談を書き下ろして、10月12日に開催されますJ.GARDEN58にて頒布いたします。詳しくはX(https://x.com/moninimoda)にて告知いたしますので、興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします。
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