形だけの女王ですが英雄が王配となって溺愛してきます!〜虐げられ姫の幸せな婚姻〜

蓮恭

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14. 不完全な初夜※

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 女王と王配として過ごす初めての夜。

 普段であれば女官達に手荒に扱われるところを、流石に今日だけは丁寧に支度が行われた。この国の英雄でもある王配の存在は、アリシアを軽視する女官達にとって丁度いい威圧になっているらしい。

 生まれて初めてかも知れない。丁重に身体を磨かれたアリシアは、ふわりと薔薇の花の香りがする湯上がりの身体に、薄桃色の夜着を身に付けされられた。
 そしてその後は、まるでこれから神前に捧げられる供物か、又は生贄のような厳かさで寝台へと導かれたのである。

 王配との初夜で滞りなく結ばれ、まことの夫婦となる。それは女王として避けられぬ義務だった。
 けれど今のアリシアには義務を果たすという緊張感だけではなく、不安と入り混じるほんの少しの期待がある。

(誰かと一緒に眠るなんて、初めてかも知れない)

 ほどなくして、女王と王配の居室の間にある寝室の扉が静かに開いた。

 入ってきたのはしっとりと湿った黒髪に褐色の肌、鋭い切れ長の目を辺りに素早く走らせたテオバルトである。
 儀式のように張り詰めていた空気が、その一歩で一気に変わった。

「……待たせたか」

 独り言のような、低く、少しだけ掠れた声。その声音にアリシアは自然と背筋を伸ばしてしまう。

「いえ、そんな事は……」

 テオバルトは普段よりもゆっくりとした歩調で近付き、寝台の端に座るアリシアの隣に腰を下ろす。
 ギシリ、と大きな寝台が軋んだ。

「俺は元々丁寧な口調ってやつが苦手なもんでね。今日正式に王配になったわけだし、二人の時だけでも、こうして喋ってもいいか?」

 二人の視線は足元の毛足の長い絨毯に向けられている。隣に座っているのに、二人の間には絶妙な距離感があった。
 
「ええ、それは構いません」
「二人の時はアリシア、と呼んでも?」
「もちろん。お好きなようになさってください」

 そう答えたアリシアの鼓動は、これ以上ないほどに激しく暴れている。
 誰かと並んで座って、こんな風に語り合うのは久しぶりだった。

「俺の事はテオバルト、と」
「テオバルト……さま」
「ただのテオバルト、だ」
「テオ……バルト」

 その名を口にしただけで、アリシアの胸の真ん中から全身に、きゅんとした痛みのような切なさが広がった。
 そこでやっと二人は目を合わせる。テオバルトの黒曜石のような瞳と、アリシアの紫水晶のような瞳が間近で交差した。

 テオバルトの大きな手がゆっくりとアリシアの髪に触れ、頬に、喉元に、肩に……慎重で、けれど抑えきれない熱を帯びている。
 アリシアもそれを感じ取り、くすぐったいような恥ずかしいような、居心地の悪さを感じていた。

「……細い。何でこんなに細いんだ? 俺が触れたら折れちまいそうだ」
「平気です……大丈夫」

 ゆっくりと目を閉じ、恐る恐るといったように、自分の肩に乗せられた手に自らの細い指先を触れさせたアリシア。するとテオバルトの大きな手が、アリシアの手を優しく包み込んだ。

「……怖いか?」
「少しだけ……でも、あなたとなら……」

 そう答えた途端、ぐっと近付いたテオバルトの顔が、そっとアリシアの鼻先に触れる。
 やがて二人は初めての口付けを交わした。はじめは軽く、何かを確かめるように慎重な、あくまでも穏やかな口付けだった。

 どうしたら良いか分からずにじっとしているアリシアの唇を、そのうちテオバルトの硬い舌が押し広げる。自然と開いた小さな口へ、テオバルトは熱い息吹を吹き込むようにして入り込んだ。

「ん……っ」

 実は王族らしからぬ事ではあるが、まともに閨教育を受けていないアリシアにとっては何もかもが初めてばかりで、粗相がないか不安でいっぱいだった。

 テオバルトの指先が薄い夜着の襟元を滑り、優しく慎重に、けれど確実にアリシアの肌を露わにしていく。途中で、細いアリシアの身体がびくりと震えた。

「大丈夫だ……力を抜け」

 そこからは甘く、優しい愛撫が始まる。女官以外に触れられた事のない身体を、テオバルトに晒すのは抵抗があった。
 しかしそれも女王としての役割であり、王配を迎えた印でもある。

 アリシアは言われるがままに寝台へ横たわり、テオバルトに身を委ねた。

「どこもかしこも綺麗だ……アリシア」

 初めて囁かれた褒め言葉にアリシアは胸がぎゅっと締め付けられ、泣きそうになる。
 
「そんな……こと……っ……んっ、は……っ」

 テオバルトの唇が、指が、まるで貴重な花に触れるようにしてアリシアを慈しむ。  
 
 異性の前に初めて晒された真っ白な肌に華奢な身体。ふっくらとした胸の膨らみの頂きを飾る、薄い桃色の突起は遠慮がちで小さく、愛らしかった。
 そこをテオバルトが舐めたり摘んだりする度に、痺れるような感覚が全身に走る。

「息も、声も、決して我慢するな。委ねろ」
「は……い……」

 くすぐったくて、熱くて、頭の奥がじんじんして、何が起きているのか分からないのに、身体の奥がきゅう、と締めつけられる気がした。

 すぐ近くにあるテオバルトの目が熱く燃えている。どうしてか、アリシアは泣きそうになってしまった。

「ふ……、うぅ……っ、テオ……バルト……っ」
「……そんな顔もするんだな」
「変……ですか?」

 不安になる。どうしたら良いか分からなくて、目の前のテオバルトに縋りつきたいと思ってしまう。
 
「いや、な」
「そそる……?」

 世間知らずなアリシアの潤んだ瞳を見下ろすテオバルトは、一瞬ニヤリと口の端を持ち上げると、とうとう薄い下生えの先にある秘所へと手を伸ばした。
 きゅっと閉じられたその場所を、優しく丁寧に解していく。

「あっ、待って……っ、あぁ……っ、なんか、変なの……っ!」

 はじめは外側を優しく撫でられた。それだけでも刺激が強く、花の芽のような場所に指先が触れるとアリシアの身体はビクンと強く震える。
 
 やがてゆっくりと暴かれたそこは、テオバルトの指を一本、また一本と受け入れていく。その場所はきつく、アリシアが純粋無垢な娘だというのを雄弁に語る。
 
 テオバルトはまだ硬くきついそこをゆっくりと解していった。そして熱く柔らかな内側の壁がテオバルトの指をキュウキュウと締め付ける度に、テオバルトは獰猛な笑みを浮かべる。

「やだ……っ、あぁ……んッ! 気持ち……いい……」

 自分の内側から聞いた事もないような濡れた音がして、太ももにビシャビシャと熱い飛沫がかかる。
 ひどくシーツを濡らしてしまっているのを背中で感じ、初めての快感を得ながらもアリシアは怖くて堪らない。
 
「気持ちいいのが正解だ。怖がるな」
「はぁ……っ、ほん……とう?」

 アリシアのまるで子どものような素直な反応に、テオバルトはぐっと何かを堪えるかのような表情を浮かべる。
 
「ああ、だからそのまま素直になれ」

 あまりに優しくされて、アリシアは涙さえ滲ませながらとうとうテオバルトの胸にしがみついた。  

「ふ……ぅ、あぁ……っ! あ……! やぁ……ッ、テオバルト……っ、こわい……! なんか……来ちゃう……!」
「大丈夫だ、任せておけ」

 アリシアはそのままテオバルトの手の中で幾度かの小さな頂きを迎えた。
 そしてそれだけで体力も気力も尽き、逞しい腕の中で気を失ってしまう。

「……ったく、ここまでされても気付かないんだろうな」

 目を閉じたアリシアを腕に抱きながら、テオバルトは片眉を上げ、喉の奥で笑う。

「こんな気を遣うやり方、した事ねぇぞ」

 アリシアは何も知らず、ただその感覚に翻弄されるまま、無垢にテオバルトの愛撫を受け入れた。そしてそのまま、柔らかな吐息を残して眠ってしまったのである。

 まだ互いに気持ちを告げていない。それでも、処女であるアリシアの震える手、唇から漏れる声、必死にテオバルトを求める仕草。  

 それだけで、テオバルトは十分だった。いや、十分すぎた。

「……まったく、スヤスヤ寝やがって。呑気なもんだ」

 そう吐き捨てたのは、苦し紛れの言い訳に近かった。だがテオバルトはそれ以上を求めなかった。自分の欲望よりも、アリシアのの安らかな寝顔を守る方がよほど大切だったのだ。

 だが問題は……翌朝だった。王族の初夜では『証拠の血』があるのが暗黙の決まり。それを女官長が確認し、『正式な婚姻の証』として記録される。  

 馬鹿馬鹿しい古いしきたりだとテオバルトは思っている。しかしたとえ形だけとはいえ、無ければ「何かあったのか」と無用の詮索や噂を呼びかねない。

「……くだらねえ決まりだ」 

 腕の中のアリシアをそっと下ろしたテオバルトは、忌々しいほど真っ白な寝台のシーツを見下ろして、静かに息を吐いた。  
 当然破瓜の血の痕などない。アリシアは気を失ったまま、未だ穏やかに眠っている。

 テオバルトはそっと寝台から離れ、自らの手に小さな刃を取り出した。戦場で何度も使った、短く鋭い刃だ。その切っ先を、自らの指にあてがう。

 微かな痛みとともに、赤い血が一滴、指先に滲んだ。それをテオバルトはためらいもせず、シーツの中央へと落とす。 暗赤色の血の色は、布の奥深く染み込み、やがてじわりと広がっていく。

「これでいい」

 必要な『証拠』はある。それだけでいい。誰にもアリシアを傷付けさせないのだという決意。

 ただし、とテオバルトの目が光る。

「次に気を失ったら……その時は、容赦しねぇからな」

 低く呟いた声に、眠るアリシアは気付かない。
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