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12. 透明の架け橋の回
しおりを挟む「昨日賢太郎から大体は聞いたけど、ヒカルと賢太郎の話、今度はヒカル目線で知りたいなー。ちゃんとはじめから話してくれよ。な?」
ほんの少し前には珍しくクソ真面目な顔をしていた癖に、今はいつもの表情に戻ったダイ。
俺はダイに異世界でのシャルロッテとカイルの話をした後に、アウトドアショップで再会した時の様子を語った。
それから部活で倒れて、保健室で賢太郎と話をしたことを。
「なるほどな」
そう言ったっきり、ダイはまた難しそうな顔で顎に手をやった。
普段あまり真面目な顔をすることがないダイが、こうも頻繁に眉間に皺を寄せているのを見ると不安になる。
「おい、何が『なるほどな』なんだよ。そんな真剣な顔して聞く話か? 賢太郎から聞いてたんだろ?」
とうとう不安な気持ちが膨らみすぎて、今にも破裂しそうな危うさを感じた俺はダイに詰め寄った。
「ヒカル。カイルとシャルロッテならともかく、お前達この世界では男同士だろー? それでも賢太郎の事が好きなのか? 本気で?」
「何でそんな事言うんだよ……」
「お前、昔から思い込みが激しいところがあるだろ? シャルロッテの気持ちが自分の気持ちだと思い込んでるんじゃないのか?」
何でダイがここまで俺に言うのか分からなかった。
「シャルロッテだって俺なんだから、別に一緒でもおかしくないじゃないか」
「……じゃあ、シャルロッテとカイルの事が無ければ? 単にフェルネを譲ってくれた優しい奴ってだけの賢太郎の事、好きになったか?」
(そりゃあ確かに思い込みが激しいって良く言われるけど! この世界で賢太郎に出会ってまだ間がないけど! それでも俺は……)
「俺は、ちゃんと賢太郎に恋してるんだよぉぉぉ!」
どうしてだか俺は、隣に座るダイに抱きついて絶叫していた。
チャリッと音を立てて耳元のピアスが揺れた。
ダイのブレザーの肩部分に顔を埋め込んで、なけなしの理性でその身体をサイレンサーの如く利用する事を思いつき、俺はそこで思いっきり叫んでいた。
「俺は、賢太郎が好きなのにぃぃぃ!」
「分かったよ、分かったって」
「俺って欲しいものは絶対手に入れないとヤダって思っちゃうからさ。確かにそれで先走った感は否めないけど……」
情けないが、俺はボロボロ涙を流してダイのブレザーを盛大に汚していた。
そんな俺にダイは困ったような声を掛けながらもポンポンと肩を叩いて慰めてくれる。
親友の手はどこまでも温かくて優しい。
「きっと……、賢太郎も俺のこと……、好きでいてくれてると、思ったのに……」
嗚咽が止まらず涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をブレザーから離すと、ツウッと透明の橋が架かった。
汚してしまった親友の制服を急いでハンカチで拭き取りながら、ダイが頷きを交えてちゃんと聞いてくれているのを確認した。
そしてそれに安心した俺は話を続ける。
「なんで……無視するんだと思う……? やっぱり男同士だから……あの時とは、違うってことかな?」
カイルとシャルロッテは夫婦だったけど、賢太郎と俺は男同士で……。だから、好きにはなれないって事なのか?
(それなら何であんなに優しくしたんだ? これから宜しくって、どういう意味だったんだ?)
時々頷きながら、黙って話を聞いてくれていたダイが小さく唸ってから口を開いた。
「思ったよりも事態は複雑みたいだからさ、しばらく俺に任せろよ。俺から賢太郎に話してみるからさ。ヒカルは賢太郎に会ってもいつも通りにしてろ。な?」
事態は複雑、それは一体どういう意味なのか。気にはなったけど、ダイがいつものニカっとした明るい顔で笑いかけてきたから、俺はつい了承の証に頷いてしまった。
「よっし! それじゃ、このまま一時間目はサボろうぜ!」
「サボって何するんだよ?」
「ヒカルがどう考えてるのか、じっくりと教えてくれよ。俺は二人の味方だからさ、絶対に悪いようにはしない」
「うん……」
それから一時間目が終わるまで、俺はシャルロッテの時のことも含めて一切合切ダイに自分の気持ちをぶちまけた。
それはもう赤裸々に。クッションに向かって叫んだことまで話した。
ダイは時々頷きながら、バカみたいなテンションになって手足をバタつかせる俺の話を聞いてくれた。
(そういえば、ダイと仲良くなったきっかけって何だったっけ?)
頭の中の古びた引き出しのつまみを引っ張ってダイとの出会いを思い出そうとすると、ツキンと軽く頭痛がした。
小さな警告は、それだけで何故か俺に大きな不安を与える。
先日酷い頭痛に襲われたばかりの俺は何だか怖くなって、それ以上引き出しに手を掛けるのをやめてしまった。
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