すれ違いがちなヒカルくんは愛され過ぎてる

蓮恭

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15. 俺の気持ちを無かったことにするなの回

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「まず、昨日返信しなかった事は悪かった」

 俺はうつむいて口を開くことはしなかった。ただじっと右側に座る賢太郎の言葉に耳を傾けていた。
 そんな様子を見た賢太郎も、俺の言葉を待つ事なく続きの言葉を口にした。

「ヒカルの言葉がどういう意味なのか、何て返そうかと考えてるうちに朝が来てた。それでちゃんと直接話をしたいってDMしとけば良かったのに、俺もボケてたんだろうな。思いつかなくて……」
「……何で今日部活に来なかったんだ」
「今日は放課後にダイから呼び出されて。ヒカルの事で大切な話だって言うから、迷わずそっちに行ってた」

 そういえばダイから賢太郎に話してみるって言ってたな。

(俺の話だからって迷わず部活よりそっちを選ぶって、どうなんだ? それなのに、俺の事は好きな訳じゃないって事か?)

 だけど、賢太郎に会っても普通にしとけって言われたのに、完全に忘れてた事を思い出した。

「そういえばダイがそう言ってた……。それについては忘れてた、ごめん」

 俺が素直に謝れば、狭いベンチで隣に座った賢太郎がホッとして固く強張らせていた体を少し緩めたのを感じる。
 馬鹿正直に俺の言葉一つひとつに反応する賢太郎を前に、やはり好きだという感情が膨らんでしまう。
 これ以上膨らむと空きスペースを無くした胸が苦しくて堪らないのに。

「ちゃんと、俺のヒカルに対する気持ちを正直に話すよ」

 そう賢太郎が言った時、ギリッと自分の歯が鳴った。知らず知らずのうちに食いしばっていたようで、右手だって握り拳を作ったまま震えていることに気付いた。

「昔からヒカルは俺にとって守ってやらなきゃって思う存在、それは変わらない。ただ言っておきたいのは、お前の思うカイルと俺自身の気持ちは別だ」

 いつも感じる甘く引き絞るような痛みとは違う、えぐられるような痛みが走って、胸の古傷をジクジクと膿ませる気がした。
 俺は何も言えなくて、ただじっと賢太郎の言葉に耳を傾ける。

「カイルと俺は全く違う人間だ。それは知っておいて欲しい」
「カイルと賢太郎は全く違う人間……」

 バカみたいに賢太郎の言葉を復唱する。そんな俺に向かって、賢太郎は大きく頷いた。

「そうだ。だからカイルとシャルロッテの事は、俺達の関係性とは別に考えて欲しい」
「つまり、どういうことなんだ?」

 賢太郎が何を言いたいのか、俺には到底見当がつかなかった。
 
(カイルじゃないから、俺の事は好きじゃないって言いたいのか?)

「……ヒカルが思ってるような人間じゃないんだ、俺は。お前に想われるような資格なんてない」

(前に賢太郎が言ってた、俺のまだ取り戻してない記憶に関係する事なのか?)

 どちらにしても、訳の分かんない謎解きみたいなやり取りはもう面倒だった。

「賢太郎の言ってる事、全然意味が分かんねぇ! 結局どういう事なんだ? 俺は賢太郎の事が好きだ。これは確かな事で、とやかく言われる筋合いはないはずだろ!」
「ヒカル……」
「あと大切な事は、賢太郎が俺の事どう思ってるかって事だけだ! 別に友達として傍にいたいって言うならそれでもいい。だけど俺の気持ちを、資格がないとかで勝手に無かったことにするのはやめろよ!」

 またカァーッと瞼が熱くなって、目頭からボロボロと涙が溢れてくる。
 いつの間にか俺達は面と向かって睨み合っていた。実際に睨んでいたのは俺だけで、賢太郎の方は雷に打たれたみたいに驚いた顔でこちらを見ていただけだったが。

「俺は、好きなものは絶対手に入れないと気が済まない性質タチなんだよ! 賢太郎の気持ち、ちゃんと話せよ」

 俺が答えを促すと、やっと正気に戻ったような賢太郎は口を僅かに動かした。

「……男同士で付き合うって、どうしたらいいんだろうな?」
「へ?」

 賢太郎からの思いもよらない返事に、俺はさっきまでの剣幕とは大違いの思いっきり間抜けな声で聞き返してしまった。

 
 

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