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34. ネットで検索する賢太郎の回
しおりを挟む「いやぁ……、優しい看護師さんとか先生とか。恋に恋してるというか、憧れっていうか。そういう事はあったかなぁ」
「へぇ? けど、これからは俺だけだよな?」
「も、もちろん! 賢太郎だけだよ!」
お互いの気持ちが分かったところで、二人っきりで自分の部屋にいる事実が急に恥ずかしくなってきた。予定外の事だったから漫画やゲームがその辺に散らかっていてごちゃごちゃとした俺の部屋。ダイが来た時は何とも思わないのに、賢太郎と二人となったら意識してしまう。
「そ、そういえば俺、賢太郎を呼ぶつもりにしてなかったからめっちゃ部屋散らかってて。ごめんな」
「いや、別に大丈夫だけど。結構漫画とか多いんだな」
急に意識し過ぎると上手く喋る事も難しくなって、過剰に身振り手振りを交えて言う。だけど、あぐらをかいて座ったままキョロキョロと部屋を見回してから、さも平気そうに答える賢太郎にちょっとだけ複雑な思いを抱いた。
(馬鹿みたいに意識しているのは俺だけなのかな)
「その辺にあるのは全部ダイの漫画。アイツ買った漫画を俺んちによく置きっぱなしにして帰るんだよ。俺の部屋は本棚じゃないっていうのに」
「……ダイは、よくここに遊びに来るのか?」
「最近は俺が遠足部の活動で居ないから来ないけど、前は頻繁に漫画とかゲームとかしに来てたよ」
そう答えたら俺の方を見る賢太郎の切長の瞳がスウッと温度を低くした気がした。その様子があんまりカッコ良く見えて思わず見惚れていたら、スススッと四つん這いで近付いてきた賢太郎にギュッと抱きすくめられる。
「え……」
「ダイは俺らにとって大事な友達だって分かってるけど、それでもなんか嫌だ」
俺の好きな低めの声でいじけたように話す賢太郎。髪に触れる賢太郎の吐息がくすぐったくて、嫉妬されてるんだと分かったらカァーッと全身が熱くなった。
「これからは……ッ、そういう事気をつけるよ!」
コクコクと頷きながら無駄に大きな声で返事をした俺に、賢太郎はフッと小さく息を吐くように笑ってから頷いた……んだと思う。頭に当たる賢太郎の顔が動いた気配がしたから。
「ヒカル、キスしていいか?」
「キ、キ、キス⁉︎ いいけど、いちいち聞かれたら何か余計に恥ずかしいんだけど!」
「じゃあこれからは聞かない」
そう言って少し身体の拘束を緩めた賢太郎は、俺の顔を少し上から見つめてくる。その瞳は相変わらずシュッとしているけど、どこか優しく穏やかな雰囲気を纏っていた。
そのままゆっくり賢太郎が近付いて、恥ずかしくなって目を閉じた。意図せず少しだけ開いていた唇が柔らかなもので包まれると、フワッと胸が温かくなる。賢太郎が小鳥のように啄むような動きをしてくるから、同じようにしてみせる。
キスなんてやっぱりどうやるのが正解なのか分からないけど、与えられる甘い行為を受け入れてその真似をした。
「苦し……ッ」
賢太郎があんまり長く離してくれないから、段々と上手く呼吸が出来ずに苦しくなって、思わず離れて言葉が漏れる。
「鼻で息しろよ」
「そう上手く出来ないんだよ。っていうか、賢太郎は何でそんなに上手いんだよ」
俺を見る妙に色っぽくて名残惜しそうな表情にドキッとした。賢太郎から与えられるキスがあんまり甘くて心地良いから、またいるのかいないのか分からない誰かに嫉妬して可愛くない言い方をしてしまう。
「へぇ、俺ってキス上手いんだ?」
「比べようがないし、上手いかどうか知らないけど! 俺と違って余裕なのが腹立つ!」
本当にどうしようもない事を言っているなと分かっていても、ついツンケンしてしまう。賢太郎はそんな俺でもきっと呆れたりせずに、全部受け入れてくれるに違いないから。こんな風に変な自信を持っているのは昔の記憶を全て思い出したからなのか。
「全然余裕じゃないよ、ほら」
そう言う賢太郎が俺の手を取りマウンテンパーカーの上から自分の胸に持っていくと、走った後のような激しい鼓動を手のひらに感じた。
「あ……、ドキドキしてる」
「だろ? 全然余裕なんかじゃない。ヒカルと付き合うって決まってから、俺だって色々……ネットで検索したりして備えただけだ」
「検索って……、キスの仕方を?」
視線を賢太郎の胸から顔に上げると、答えることはせずに反対の手で顔の下半分を隠すようにしてフィッとそっぽを向いてしまう。だけど見えている部分の顔と耳は真っ赤に染まっていた。
(やばい! 普段は無表情で大人っぽい癖に、照れた顔はなんて可愛いんだ!)
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