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魔法学校編
泥棒成敗
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『それで?何をそんなに困っていたの?』
『あぁ、実は物盗りに今日中に渡さなくちゃいけない書類が入っていた鞄を盗まれちまってな。その書類はかなり重要で見られでもしたらまずいんだよ』
『ふぅん……ていうかさっきから気になってたんだけどおじさんなんかお酒臭くない?』
『そりゃあ今まで飲んでたからな』
『えー?そんな大事な物持ってるのにお酒なんか飲んでるからこんな事になるんだよ』
『耳が痛いな……まぁ今更そんな事言っても始まらねぇ、俺はこっちを探すからお前さんはあっちを探してくれ。物盗りの顔はローブを被っていて確認できなかったが背丈体格は俺と同じ位だったから恐らく男だ。鞄にはこれと同じものが付いている。それと何かあったらこれで報告するんだぞ』
男はポケットから鞄にも付けられているというバッジと謎の四角い板の様なものを取り出しヴァイオレットに渡してきた
前者はともかく後者がなんなのか分からなかったヴァイオレットが使い方を聞いてみると、どうやらこれは魔通話盤というもので魔力を込めることによって遠く離れている相手とも連絡をとることができる魔道具らしい
『へぇ、ということはこれがあればお父さん達とも話せるようになるのか。便利だねー』
『いいか、これは高価なものだから丁寧に扱えよ。それとお前さんは鞄を持ってる奴を見つけても絶対一人でなんとかしようとか思うな。追い詰められた相手が何をしてくるかも分からないし一般人に怪我をさせたとなったら問題になるからな』
『はーい』
『あとくれぐれも鞄の中身を見るんじゃないぞ!』
『そんなに大事なものなの?その書類とかいうの』
『あぁ、それが流出したら最悪俺の首が飛ぶ』
『それは一大事だね……』
ヴァイオレットが首を抑えて険しい表情をしていたのでそのままの意味で捉えているのだなというのはなんとなく察したが、男はそれには突っ込まず二手に分かれて捜索を開始した
王都には南門と北門二つの出入口があり、ヴァイオレットは北門の方の探索を任された
任されたはいいものの、土地勘がない上王都はあまりにも人が多くて物盗りを探すのは中々骨が折れた
『うーん、これじゃあ全然分からないなぁ……そうだ!上から探した方が見つけやすいかも!』
ヴァイオレットは建物の壁を上手く蹴ってジャンプし屋根の上へと登り見下ろすような形で捜索を行った
ヴァイオレットが使う魔法をもってすれば数百メートル離れた場所にあるコインだって見つけることができる
男から聞いた特徴と一致する鞄を見つけることなど造作もない
屋根伝いに移動しながら行き交う人達一人一人をよく観察し続けていると、ある人物に目が留まった
『ん?もしかしてあの人じゃないかな?』
それらしい人物を見つけると屋根から下り人の間をすり抜けていって目的の人物に近づいてく
ようやく男が視界に入り肩から提げている鞄に目をやると、やはり先程男から受け取ったバッジの特徴と一致していた
だがまだ犯人かどうか断定することは出来ない。声をかけて直接確認してみようとしたが、直前で男が言っていたことを思い出した
『あっ、そうだ。連絡しなくちゃ。えーっとどうやって使うんだっけこれ……確か魔力を込めるって言ってたけどどれ位込めればいいんだろう?まぁ適当でいっか』
どの程度の魔力を込めればいいか分からなかったヴァイオレットは適当な量の魔力を板に込めた
すると突然亀裂が入ったかと思ったら男から貰った道具は真っ二つに割れてしまった
『ありゃ、壊れちゃった……仕方ない、これじゃあ連絡できないし自分でなんとかするしかないか』
目の前の人物から目を離すわけにもいかず、ヴァイオレットは急遽作戦を変え直接声をかけてみることにした
『ねぇねぇお兄さん』
『うぉっ!?な、なんだお前!突然目の前に現れやがって』
『私ちょっと探し物してるんだ。ちょっとその鞄見せてくれない?』
『はっ?あっ、おいコラ!』
フードの男の返答を待たずに鞄を確認
鞄からは微かにだが酒飲み男の魔力痕が残っていた
『やっぱり。ねぇお兄さん、この鞄人から盗んだものでしょ』
『くっ!敏捷性増幅!どけぇ!』
『あっ、逃げた』
フードの男は勘づかれたと分かると脱兎の如く逃げ出した
敏捷性増幅、一時的に速度が上がる魔法でヴァイオレットが以前使った魔法の名称でもある
だがフードの男は魔法を使った割にあまり速くない
これなら魔法を使うまでもなく追いつくことができる
『ねぇちょっと待ってよ。まだ話は終わってないよ』
『はぁ!?なんで魔法も使わずに追いつけるんだよ!くそっ!ファイアボール!』
素の身体能力で追いつくとフードの男は驚いて咄嗟に攻撃を繰り出してきた
ほぼゼロ距離での攻撃がヴァイオレットに命中。威力の弱い魔法とはいえ流石に無傷ではいられないだろうと男はこの隙に距離を取ろうとする
だが攻撃が直撃したはずのヴァイオレットは怯むどころか何事も無かったかのように男の腕を掴んだ
『こんな所でそんなの使って他の人に当たったら危ないでしょ』
『くそっ!なんなんだお前!』
『悪いけどちょっと眠ってて』
『ぶべっ!?』
抵抗しようとしてくる相手をヴァイオレットは張り手一発で気絶させ無力化、鞄を無事取り返すことができた
一件落着とホッと息をついていると、一部始終を見ていた群衆がヴァイオレットに賞賛の声を浴びせてきた
『いいぞー嬢ちゃん!』
『いやーどうもどうも』
周りの歓声に応えていると鞄を盗まれた男がこの騒ぎを聞きつけ遅れてやって来た
『どういう状況だこりゃ……』
『あぁ、実は物盗りに今日中に渡さなくちゃいけない書類が入っていた鞄を盗まれちまってな。その書類はかなり重要で見られでもしたらまずいんだよ』
『ふぅん……ていうかさっきから気になってたんだけどおじさんなんかお酒臭くない?』
『そりゃあ今まで飲んでたからな』
『えー?そんな大事な物持ってるのにお酒なんか飲んでるからこんな事になるんだよ』
『耳が痛いな……まぁ今更そんな事言っても始まらねぇ、俺はこっちを探すからお前さんはあっちを探してくれ。物盗りの顔はローブを被っていて確認できなかったが背丈体格は俺と同じ位だったから恐らく男だ。鞄にはこれと同じものが付いている。それと何かあったらこれで報告するんだぞ』
男はポケットから鞄にも付けられているというバッジと謎の四角い板の様なものを取り出しヴァイオレットに渡してきた
前者はともかく後者がなんなのか分からなかったヴァイオレットが使い方を聞いてみると、どうやらこれは魔通話盤というもので魔力を込めることによって遠く離れている相手とも連絡をとることができる魔道具らしい
『へぇ、ということはこれがあればお父さん達とも話せるようになるのか。便利だねー』
『いいか、これは高価なものだから丁寧に扱えよ。それとお前さんは鞄を持ってる奴を見つけても絶対一人でなんとかしようとか思うな。追い詰められた相手が何をしてくるかも分からないし一般人に怪我をさせたとなったら問題になるからな』
『はーい』
『あとくれぐれも鞄の中身を見るんじゃないぞ!』
『そんなに大事なものなの?その書類とかいうの』
『あぁ、それが流出したら最悪俺の首が飛ぶ』
『それは一大事だね……』
ヴァイオレットが首を抑えて険しい表情をしていたのでそのままの意味で捉えているのだなというのはなんとなく察したが、男はそれには突っ込まず二手に分かれて捜索を開始した
王都には南門と北門二つの出入口があり、ヴァイオレットは北門の方の探索を任された
任されたはいいものの、土地勘がない上王都はあまりにも人が多くて物盗りを探すのは中々骨が折れた
『うーん、これじゃあ全然分からないなぁ……そうだ!上から探した方が見つけやすいかも!』
ヴァイオレットは建物の壁を上手く蹴ってジャンプし屋根の上へと登り見下ろすような形で捜索を行った
ヴァイオレットが使う魔法をもってすれば数百メートル離れた場所にあるコインだって見つけることができる
男から聞いた特徴と一致する鞄を見つけることなど造作もない
屋根伝いに移動しながら行き交う人達一人一人をよく観察し続けていると、ある人物に目が留まった
『ん?もしかしてあの人じゃないかな?』
それらしい人物を見つけると屋根から下り人の間をすり抜けていって目的の人物に近づいてく
ようやく男が視界に入り肩から提げている鞄に目をやると、やはり先程男から受け取ったバッジの特徴と一致していた
だがまだ犯人かどうか断定することは出来ない。声をかけて直接確認してみようとしたが、直前で男が言っていたことを思い出した
『あっ、そうだ。連絡しなくちゃ。えーっとどうやって使うんだっけこれ……確か魔力を込めるって言ってたけどどれ位込めればいいんだろう?まぁ適当でいっか』
どの程度の魔力を込めればいいか分からなかったヴァイオレットは適当な量の魔力を板に込めた
すると突然亀裂が入ったかと思ったら男から貰った道具は真っ二つに割れてしまった
『ありゃ、壊れちゃった……仕方ない、これじゃあ連絡できないし自分でなんとかするしかないか』
目の前の人物から目を離すわけにもいかず、ヴァイオレットは急遽作戦を変え直接声をかけてみることにした
『ねぇねぇお兄さん』
『うぉっ!?な、なんだお前!突然目の前に現れやがって』
『私ちょっと探し物してるんだ。ちょっとその鞄見せてくれない?』
『はっ?あっ、おいコラ!』
フードの男の返答を待たずに鞄を確認
鞄からは微かにだが酒飲み男の魔力痕が残っていた
『やっぱり。ねぇお兄さん、この鞄人から盗んだものでしょ』
『くっ!敏捷性増幅!どけぇ!』
『あっ、逃げた』
フードの男は勘づかれたと分かると脱兎の如く逃げ出した
敏捷性増幅、一時的に速度が上がる魔法でヴァイオレットが以前使った魔法の名称でもある
だがフードの男は魔法を使った割にあまり速くない
これなら魔法を使うまでもなく追いつくことができる
『ねぇちょっと待ってよ。まだ話は終わってないよ』
『はぁ!?なんで魔法も使わずに追いつけるんだよ!くそっ!ファイアボール!』
素の身体能力で追いつくとフードの男は驚いて咄嗟に攻撃を繰り出してきた
ほぼゼロ距離での攻撃がヴァイオレットに命中。威力の弱い魔法とはいえ流石に無傷ではいられないだろうと男はこの隙に距離を取ろうとする
だが攻撃が直撃したはずのヴァイオレットは怯むどころか何事も無かったかのように男の腕を掴んだ
『こんな所でそんなの使って他の人に当たったら危ないでしょ』
『くそっ!なんなんだお前!』
『悪いけどちょっと眠ってて』
『ぶべっ!?』
抵抗しようとしてくる相手をヴァイオレットは張り手一発で気絶させ無力化、鞄を無事取り返すことができた
一件落着とホッと息をついていると、一部始終を見ていた群衆がヴァイオレットに賞賛の声を浴びせてきた
『いいぞー嬢ちゃん!』
『いやーどうもどうも』
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