竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
135 / 342
開拓編

声に導かれて

しおりを挟む
エルフの集落を探している途中で遭遇した謎の声の案内に従い森の中を進んでいくヴァイオレット達
あれから数時間が経過したが未だにエルフの集落らしきものは見当たらなかった


『ねぇヴァイオレット、もう随分歩いたけど全然見つからないよ?やっぱり僕達騙されてるんじゃない?』
『んー……もうちょっとだけついていってみよ』


声が聞こえているのはヴァイオレットのみ、なので声が聞こえていないルージュは時間が経つにつれて不信感が増していった
村との距離も大分離れてきた。流石にこれ以上何もないようだったら諦めようと考えていると、謎の声の主がヴァイオレットに語りかけてきた


(着いたよー)


『えっ?ここ?』


謎の声の主が言うにはどうやらここが私達が探していたエルフの集落らしい
だが目の前に広がっているのはこれまでと何も変わらない森の景色だった


『何もないただの森じゃん。やっぱり僕等騙されたんだよ。ここまで連れてきた奴を見つけてぶっ飛ばしてやる』
『落ち着いてルージュ。ねぇ、ここが本当にエルフの集落なの?』


(そうだよ、手を近づけてみて)


『手?』


謎の声に従い手を前に出してみる。すると目の前に広がっていた森の景色が突然歪みだした
景色が段々と消えていくとその奥から現れたのはヴァイオレット達が探し求めていたエルフの集落と思われる場所だった
自分達のように森を切り開いて村を築くのではなく、木と木の間を行き来できるよう橋が架けられており木の上に家が建てられていた
それはまるで森と共に生きているようだった


『本当にあった。目の前にあったのに全然気づかなかったよ』
『ここがエルフの集落……なんだよね?勝手に入っちゃったけど大丈夫だったかなぁ?』


集落を見つけたはいいものの人の気配が感じられない
慎重に集落へ近づこうとするヴァイオレット。そして集落へ足を踏み入れた瞬間、何者かに背後を取られた


『動くな』


この距離に近づかれるまで全く気配を感じ取れなかった
更に一人が姿を現したことで木の上から一人また一人と仲間が姿を現しこちらに狙いを定めて弓を構えてきた
特徴的な長い耳で皆顔が整っている。やはりここは二フリートから聞いていたエルフの集落で間違いないようだ
背後を取られた状態で相手が質問を投げかけてくる


『その状態でこちらの問いに答えろ。少しでも変な動きをしたら矢を放つからな。まずお前達は何者だ、どうしてこの場所が分かったんだ?』
『えっと私達この森にエルフの集落があるって聞いて探してたんだけど見つからなくて……それで困ってたところに姿が見えない声だけの人にこっちだよって案内されて来たの』
『声?何を意味の分からないことを言っているんだ』
『理由を話さないというのならいい。私達の居場所を知られたからには消えてもらうぞ』


ありのままの事を話したがやはりエルフ達には信じてもらえなかった
他種族の干渉を嫌うとは聞いていたが想像以上だ
迎え撃とうかとも一瞬考えたが、そうすると魔力制御の件が解決できない
どうすれば話を聞いてもらえるだろうかと悩んでいる間にも矢の照準がヴァイオレットに合わせられていく
このままではまずいととにかく回避に徹する為身構えたその時、例の声が聞こえてくる


『私が連れてきたんだよー』
『この声……まさかプリローダ様!?』


ここまで案内してくれた謎の声がエルフ達にも聞こえているようで、声を聞いた途端構えるのを止めて膝をつき始めた
そして今まで声だけだった人物がヴァイオレット達の前にようやく姿を現す


『いらっしゃい、エルフの集落にようこそ』



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...