竜皇女と呼ばれた娘

Aoi

文字の大きさ
147 / 342
開拓編

死の森へ

しおりを挟む
オストンでヴァイオレットの手がかりを得たユリウス達捜索部隊はその街を拠点に周辺を探して回った
だがどこを探してもヴァイオレットの目撃情報や親類縁者だとされる者を見つけることは出来ず、捜索は再び難航していた

『ちっ……おい、魔力はもう十分に回復しただろう。犯人の痕跡を見つけ出すんだ』
『は、はい』


ユリウスの指示でエルフはヴァイオレットの痕跡の追跡を再度試みる。しかし暫くするとエルフは突然苦しみだした


『うっ……!』
『おい何をやっている。さっさと探さないか』
『はぁはぁ……申し訳ありません。痕跡を辿ろうとしたんですがどうやら何者かに妨害されたみたいで……』
『何?おい、この先には何があるんだ?』
『今地図をお持ち致します』


兵士が持ってきた地図を広げ確認するとエルフが追跡を試みた先には広大な森があり、そこは人が出入りすることが出来ない死の森と呼ばれている場所だった


『おい、ここは死の森じゃないか。こんな場所に犯人は逃げ込んだというのか?』
『わ、分かりません……ですが途中までですが痕跡その方向に残っているのは確かです……』


そう告げてくるエルフの体は小刻みに震えていた
これまでとは明らかに違う様子にユリウスは死の森に何かあるのではという予感がしていた


『よし、この森に行ってみるぞ』
『殿下お待ちを。流石にこの少人数で死の森に入るのは危険すぎます。ここの森は十年以上前から魔物が活発化していて森に入った者は誰も帰って来なかったと聞いています。御身に何かあってはいけませんのでここは一度王都に戻った方が良いかと具申致します』
『お、恐れながら私も……あそこにはおぞましい何かが潜んでいるように思います』
『奴隷風情がこの俺に意見をするな。それに決めるのはお前達ではなくこの私だ。このような事で怖気づいていては一国の主など務まるわけがないだろう』
『で、でしたらせめて街でできる限りの準備を。今のままではいざという時殿下をお守りすることができません』
『……いいだろう。では準備を整え明朝この街を発つぞ』


兵力が明らかに足りない状態で森に入るのは危険極まりない。どうにか考え直してもらうようユリウスに何度も進言したが、一度言い出したら自分の言葉を曲げようとしないユリウスには何を言っても無駄だった
兵士達は街で食料の確保や身を守るアイテムなど最大限の準備をし、翌朝死の森を目指した
死の森に到着するとそこは薄暗く、森の奥からは魔物の奇声のようなものがひっきりなしに聞こえてきた


『不気味な森だな……お前達警戒を怠るなよ』
『は、ハッ……』


今すぐにでも帰りたいという気持ちを抱きつつ、兵士達はユリウスの指示に従い森の中へと入っていった

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...