2 / 97
第一章 《第一部》ヒーラー 少年篇
第1話 「運命に逆らうヒーラー」
しおりを挟む
俺は決して裕福とは言えない家庭で育った。
緑豊かな田舎の村。大きな街の喧騒からは程遠く、静かな日常が流れている。
家は木造の小さな家で、大きいとは言えない。いや、むしろ「小さい」と言った方が正しいくらいだ。庭の方が広いくらいだしな。
でも、この村全体が、俺たち家族の庭みたいなもんだ。田舎というのはそういうもんだ。
そんな小さな村で、ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
それが俺だ。
金髪の父親は、どこか無骨な顔つきで、筋肉質で戦士らしい雰囲気を醸し出している。
その手に抱かれる赤ん坊は、まさに「今から何かを成し遂げる者」って感じで、少しぎこちなく抱かれていた。
「ォギャーオギャー」
「おーよしよし、いい子だぞ~」
それを見た母親は、胸が大きく、笑顔がよく似合う女性だ。声から滲み出る優しさが伝わってくる。
母親は、少し驚いたような顔をして、父から赤ん坊を奪い取った。
「ほらほら~泣かないでね~。この子はどっちの才能を持つのかしら」
「そりゃ俺の子だ!きっと剣術だろう」
「私は、皆を笑顔にしてくれるヒーラーがいいわ~」
両親は冒険者だった。
父親の名前はガーフィ・シーネット。かつて、A級冒険者として名を馳せた男だ。
母親の名前はアリア・シーネット。彼女もまた、C級冒険者として活動していた元冒険者。だが、母の力は確かだ。特に回復魔法においては、並のヒーラーを超える才能を持っているらしい。
そして冒険者には、ランクというものが存在する。SS級からG級まで、ランクは多岐にわたる。
SS級は、今の時代、勇者たちが持っている最上級のランク。伝説的英雄だけに与えられる称号だ。
その下にS級がある。S級は国の特別なクエストを請け負うため、能力が相当高くなければならない。その数は限られており、試験を突破した者だけが手に入れることができる。
A級はS級に比べれば少しハードルが低く、特別な才能があれば努力次第で到達できる。しかし、A級でも、S級に近い実力を持つ者も少なくない。
そんな俺の父親であるガーフィは、そのA級の中でも異例の存在だ。かつてはS級に匹敵する実力を持ち、名を馳せた男だったが、今は村で静かに暮らしている。
その理由は、冒険者として活躍することに疲れ、安定した生活を望んだからだろう。だが本人曰く、その腕はまだまだ衰えてはいないらしい。
母親のアリアはC級だ。C級は、いわば平均的な実力を持つ冒険者たちのランクだ。戦闘力こそ高くはないが、回復魔法や支援魔法に特化した力を持つ者が多い。
母親はその典型的な例であり、支援魔法の使い手としてパーティには欠かせない存在である。しかし回復や支援魔法という所謂、戦闘の補助役に回る者達は評価が難しいとされている。戦闘によっては活躍する間もなく終わることもあるからだ。特にヒーラーは。故に戦闘力では父に劣るため、C級止まりというわけだ。こればかりは仕方ない。
それでも、母の持つ癒しの力は、多くの仲間を救ってきた。それに、そんな母親に憧れる者も少なくない。今は現役を引退し、育児に専念している。
――あれは俺が五歳の頃だ。
「ねぇ父さん、僕にも剣を教えて――」
「くるな!危ないっ!!」
俺はその時、父の真剣な素振りを見て、どうしてもやってみたくてつい近づいてしまった。
「わぁっ!」
「いっ……危ないだろう!!」
「ご、ごめんなさい父さん」
父は咄嗟に剣を止めようとし、足を誤って切ってしまった。
膝から血が流れ、父の顔が歪んだ。
「大丈夫?父さん」
「……くそ、ドジった……ああ、大丈夫だ。それよりも危ないから、俺が剣を振っている時は来るんじゃない。分かったか?」
「……はい、ごめんなさい」
「よし!いい子だ」
父さんは、普段はおちゃらけた人だが、こういう時はちゃんと怒る。
「どうしたの!?」
家の中から母親が慌てて駆けつけてきた。
「あなた、大丈夫!?今、傷を治すからじっとしてて!」
「これくらい大丈夫だ。心配するな」
「……父さん、ごめんなさい……」
俺は、無意識に父の足の傷に手を触れた。痛々しい傷を見て、思わず手を伸ばしただけだ。
「ああ、まさか、そんな……」
「あら!」
驚く父と母。
父の傷は、瞬く間に治癒され、傷跡すら残らなかった。
「あなた!見た!?この子、回復魔法の才能があるわ!」
「……ああ、そうみたいだな」
「なぁに?嬉しくないの?」
「いや、嬉しいさ。だが、複数の才能を持つことはないだろう。剣術の道はもう無くなったと思ってな」
「……才能があるだけいいじゃない。世の中には、才能を欲しくても持たない子もいるんだから」
「……それもそうだな」
「ねぇ父さん、母さん、それって凄いの?」
「ええ、凄いわ」
「ああ、凄いぞ」
こうして、俺は五歳で初めての魔法を、無意識に使った――。
緑豊かな田舎の村。大きな街の喧騒からは程遠く、静かな日常が流れている。
家は木造の小さな家で、大きいとは言えない。いや、むしろ「小さい」と言った方が正しいくらいだ。庭の方が広いくらいだしな。
でも、この村全体が、俺たち家族の庭みたいなもんだ。田舎というのはそういうもんだ。
そんな小さな村で、ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
それが俺だ。
金髪の父親は、どこか無骨な顔つきで、筋肉質で戦士らしい雰囲気を醸し出している。
その手に抱かれる赤ん坊は、まさに「今から何かを成し遂げる者」って感じで、少しぎこちなく抱かれていた。
「ォギャーオギャー」
「おーよしよし、いい子だぞ~」
それを見た母親は、胸が大きく、笑顔がよく似合う女性だ。声から滲み出る優しさが伝わってくる。
母親は、少し驚いたような顔をして、父から赤ん坊を奪い取った。
「ほらほら~泣かないでね~。この子はどっちの才能を持つのかしら」
「そりゃ俺の子だ!きっと剣術だろう」
「私は、皆を笑顔にしてくれるヒーラーがいいわ~」
両親は冒険者だった。
父親の名前はガーフィ・シーネット。かつて、A級冒険者として名を馳せた男だ。
母親の名前はアリア・シーネット。彼女もまた、C級冒険者として活動していた元冒険者。だが、母の力は確かだ。特に回復魔法においては、並のヒーラーを超える才能を持っているらしい。
そして冒険者には、ランクというものが存在する。SS級からG級まで、ランクは多岐にわたる。
SS級は、今の時代、勇者たちが持っている最上級のランク。伝説的英雄だけに与えられる称号だ。
その下にS級がある。S級は国の特別なクエストを請け負うため、能力が相当高くなければならない。その数は限られており、試験を突破した者だけが手に入れることができる。
A級はS級に比べれば少しハードルが低く、特別な才能があれば努力次第で到達できる。しかし、A級でも、S級に近い実力を持つ者も少なくない。
そんな俺の父親であるガーフィは、そのA級の中でも異例の存在だ。かつてはS級に匹敵する実力を持ち、名を馳せた男だったが、今は村で静かに暮らしている。
その理由は、冒険者として活躍することに疲れ、安定した生活を望んだからだろう。だが本人曰く、その腕はまだまだ衰えてはいないらしい。
母親のアリアはC級だ。C級は、いわば平均的な実力を持つ冒険者たちのランクだ。戦闘力こそ高くはないが、回復魔法や支援魔法に特化した力を持つ者が多い。
母親はその典型的な例であり、支援魔法の使い手としてパーティには欠かせない存在である。しかし回復や支援魔法という所謂、戦闘の補助役に回る者達は評価が難しいとされている。戦闘によっては活躍する間もなく終わることもあるからだ。特にヒーラーは。故に戦闘力では父に劣るため、C級止まりというわけだ。こればかりは仕方ない。
それでも、母の持つ癒しの力は、多くの仲間を救ってきた。それに、そんな母親に憧れる者も少なくない。今は現役を引退し、育児に専念している。
――あれは俺が五歳の頃だ。
「ねぇ父さん、僕にも剣を教えて――」
「くるな!危ないっ!!」
俺はその時、父の真剣な素振りを見て、どうしてもやってみたくてつい近づいてしまった。
「わぁっ!」
「いっ……危ないだろう!!」
「ご、ごめんなさい父さん」
父は咄嗟に剣を止めようとし、足を誤って切ってしまった。
膝から血が流れ、父の顔が歪んだ。
「大丈夫?父さん」
「……くそ、ドジった……ああ、大丈夫だ。それよりも危ないから、俺が剣を振っている時は来るんじゃない。分かったか?」
「……はい、ごめんなさい」
「よし!いい子だ」
父さんは、普段はおちゃらけた人だが、こういう時はちゃんと怒る。
「どうしたの!?」
家の中から母親が慌てて駆けつけてきた。
「あなた、大丈夫!?今、傷を治すからじっとしてて!」
「これくらい大丈夫だ。心配するな」
「……父さん、ごめんなさい……」
俺は、無意識に父の足の傷に手を触れた。痛々しい傷を見て、思わず手を伸ばしただけだ。
「ああ、まさか、そんな……」
「あら!」
驚く父と母。
父の傷は、瞬く間に治癒され、傷跡すら残らなかった。
「あなた!見た!?この子、回復魔法の才能があるわ!」
「……ああ、そうみたいだな」
「なぁに?嬉しくないの?」
「いや、嬉しいさ。だが、複数の才能を持つことはないだろう。剣術の道はもう無くなったと思ってな」
「……才能があるだけいいじゃない。世の中には、才能を欲しくても持たない子もいるんだから」
「……それもそうだな」
「ねぇ父さん、母さん、それって凄いの?」
「ええ、凄いわ」
「ああ、凄いぞ」
こうして、俺は五歳で初めての魔法を、無意識に使った――。
2
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる