Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第二章 《第一部》ヒーラー 王国篇

第13話 「エルフォード・スタイリッシュ」

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   俺たちの元にエルザパパがやってきた。彼の名はエルフォード・スタイリッシュ。
エルザと同じ金髪だが、髪は短く整えられている。特徴的なのはその筋肉質で大柄な体格とちょび髭だ。

エルザ・スタイリッシュの実の父であり、騎士団団長である。彼が纏うオーラは凄まじいものだ。只者ではない。そう思わせるものがあった。女王エルザとは違った威厳あるものがあったのだ。
娘を見るまでは……。

「エルザちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

王室の扉が空いたと思えば開口一番そんな言葉が王室に響き渡った。

「行けませんっ!団長!!娘……エルザ様がお客様とお話中です!!」

メイドがエルフォードをなんとか抑ようとしてはいるが意味はなく、ズルズルと引きずられていた。

「パパ!?」

「エルザちゃん!!大丈夫なのか!?」

「な、なにが?」

エルザは誤魔化そうと必死だ。まぁ誤魔化せるわけがないのだが。

「聞いたぞ!エルザちゃん!自分の腕を切り落としたそうじゃないか!だいじょう……ぶ……なのか?」

父エルフォードは娘エルザの腕をまじまじと見るが、なにも異常がない。そこにはたしかに腕があった。

「あれ……?……腕あるじゃん。ちょっとだれー!?嘘ついた人ー!君か?それとも君か??」

エルフォードは周りにいるメイドに次々と聴取……?している。

「パパ!腕はこの通りなんともないわ!」

「それは良かったんだけど、どうゆうこと?パバ心配したんだぞ?」

この間、俺達はまだ一言も喋っていない。というか唐突すぎて把握し切れていない状況だ。
エルザが片腕を切ったかと思えば、その父が出てきたのだ。状況がめちゃくちゃだ。

「私の腕はここにいるアスフィが治してくれたの!」
「ど、どうも、アスフィです……」

やっと紹介された。紹介が雑な気がするが、それは俺の自己紹介もだ。
正直なんて言ったらいいか分からなかったから。

「……君が娘の腕を治してくれたのか?」

「はい、一応」

「そうかそうか!!それはどうもありがとう!馬鹿な娘ですまない」

「ほんとですよ。勘弁してください」

「んん?今なんと??」

「い、いやぁ、まぁ治ってよかったです、はい」

自分で馬鹿な娘と言うのはいいけど、他人から言われるのは嫌なのかよ。
どんだけ親バカなんだこの父親は。

「……エルザちゃん。腕を切り落としたと聞いたが?」

「はいパパ。私は確かに自らの腕を切り落としました」

「しかし腕がある……ん?そこにあるのは血か?」

「……はい。私の血液ですパパ」

「ああああああああエルザちゃんの血ーーーーーー!!!!」

その大量の血にエルフォードはその場で崩れ落ちた。やかましい男だが、その反応は父として当然のものだ。
少し大袈裟でやかましいが。

「……もう大丈夫です。僕が治しました」

「……ふぅ、君はアスフィと言ったね」

「はい」

「改めて感謝を。まだ名乗っていなかったな」

もうだいたい分かっているから自己紹介は別にいいんだけど。

「パパさんですよね」

「うんうんそうそう……って違う!いや違くないけども!」

キレイなノリツッコミを披露した、
エルフォード・スタイリッシュであった……。

「ゴホンッ……改めて自己紹介を。私はエルフォード・スタイリッシュ。ミスタリス王国騎士団団長である。団長として副団長の……娘の危機を救ってくれたこと感謝する」

今更取り繕わなくてもいいのに。もう初っ端からキャラ崩壊しまくりだよ。一瞬入ってきた時はすごくオーラがある人物だと思ったのに。
エルザを見た瞬間キャラ崩壊だ。だが、そのオーラは再び戻った。俺はそのオーラに威圧された。……この人、かなり強い。剣の才能がない俺でも分かる。その風格は真面目な父を思い出す。

「パパそのオーラ出すのやめて。みんな脅えるから」

「ああ、ごめんよエルザちゃん……」

メイド達の中に立っているものはいない。それはオーラにあてられたというよりかは、
この短い間に起きた出来事に対してだろう。俺も正直凄く疲れた。

「アスフィよ……君は優秀なヒーラーなのだな。私も冒険者として長い。それ故に驚いている。切り落とされた腕を治癒するヒーラーは今まで見たことがない」

「そんなにすごいんですか?」

素直にそう思った。俺はヒーラーなら治せて当たり前だと思っていた。まさか落ちた片腕を自分でも治せるとは思わなかったが。

「うむ、完全に切り離された部位を治すヒーラーというのは噂には聞いたことがある。だがあくまで噂だ。見たことは無い。ちなみにどんな魔法を使ったのかね」

「えーっと……『ハイヒール』です」

「なに……?」

エルフォードは目を見開き、一瞬息を呑んだ。

「……なんだと?」

その声には明らかな動揺が滲んでいた。冷静さが崩れ、表情には驚愕の色が浮かんでいる。まるで予想もしていなかった展開に、彼の思考が追いついていないかのようだった。

「『ハイヒール』だと……?それは私も見たことがある!だが、そんな中級にあたる回復魔法で切断された部位を治せるものなのかね!?」

「さぁ……どうなんですかね」

俺は素直にそう思った。

エルフォードの反応を見ても、確信には至らない。だが、俺の言葉に対する彼の驚きは、本心からのもののように見えた。
彼はしばらく沈黙し、鋭い視線をこちらに向けた。その目には疑念と困惑が入り混じっている。

「アスフィはすごいのよパパ!」

驚くエルフォードになぜかそれを自慢するエルザ。俺はそれが凄いのかどうかよく分かっていなかったが、
エルザの父、エルフォードが驚いている様子を見てこの時初めて、自分は普通の者とは少し違うと実感した。

「……ア、アスフィは凄いんだよ……」

ようやく口を開いたかと思えば、レイラは俺のことを褒め始めた。彼女の声は震えていた。まるで、自分に言い聞かせるかのように。

「本当に……すごいんだから……」

レイラは俯きながら、小さく呟く。その目は迷いながらも、俺をまっすぐ見ていた。

「いやぁ照れるなぁ」

「でね!パパ!私はこのアスフィとレイラこの二名を騎士団に入隊させることに決めたの!」

「……君はレイラと言うのか……うむ、強いな」

この只者ではないエルフォードが言うんだ。レイラは本当に凄い。これは俺も鼻が高い。

「その歳でその強さ、将来が楽しみだ。独学で強くなったのかね」

「……い、いえ違い……ます」

「では師が居ると?」

「レイラの師匠は僕の父です」

俺はエルフォードにそう提言した。

「その父の名は?」

「ガーフィ・シーネットです」

「……ガーフィ……シーネット……シーネットと言ったかね?」

「はい、ご存知ですか?」

「ああよく知っているとも!なるほどあやつが師匠とな。理解したよ」

エルフォードは嬉しそうだ。そして話を続けた――

「あやつとは昔パーティを組んでいた」

「え!?そうなんですか!」

「あの問題児が師匠か……面白いこともあるものだ」

エルフォードが俺の父さんの元パーティ仲間……。
そんなことがあったのか。するとパーティメンバーは母さんを含めた三人だったのだろうか。

「あいつは今は亡き私の父が王の時、無礼を働きよってな」

「あいつは今は亡き私の父が王の時、無礼を働きよってな。あろうことか私の父にタメ口をききよってな!ハッハッハ!面白いやつだ!当時の父にタメ口をきけたやつはアイツぐらいだろう」

エルフォードは苦笑混じりに言ったが、その目にはどこか懐かしさが滲んでいた。

あ……それって母さんが言っていた、父さんが王にタメ口を聞いたとかいう話か。

となると、その時フォローしてくれた騎士って……エルフォードのことだったのか!

もしこの人がいなかったら、父さんはどうなっていたんだろう。いや、極端な話、処罰されていた可能性もある。つまり……この人のおかげで父さんが生き延び、結果的に俺が生まれたってことか?

俺はエルフォードの顔を見て、妙な縁を感じた。

「……そうだったんですね。なんだか、お世話になりました」

俺がそう言うと、エルフォードは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにフッと笑った。

「ふむ……礼を言われるとは思わなかったが、そういう縁もあるものだな」

そう言って、彼はどこか誇らしげに頷いた。

「お、おじいちゃんは怖い……うん」

エルザは物凄く怖がっていた。

あのエルザが怖がるなんて、どんなじいちゃんだったんだ。

だが、その当時の王にタメ口をきく俺の父さんもまた凄い。

エルフォードは俺の考えを察したのか、静かに頷いた。

「エルザが怖がるのも無理は無い。エルザに剣を教えたのは私の父だ。そして私もまた、その教え子の一人だ……本当に、父は強かったよ」

懐かしむように話すエルフォード。その表情には、尊敬と畏怖が入り混じっていた。

彼の父――つまりエルザの祖父は、ただの王ではなく、剣の達人でもあったのだろう。その厳しさが、エルザの言葉にも表れている。

「おじいちゃん、怖かったんだね……」

俺がそう呟くと、エルザはコクリと頷いた。

「……うむ。でも、剣のことなら、誰よりも頼れる人だったな」

エルザの声には、恐怖だけではなく、尊敬の念が滲んでいた。

「ねぇパパそんな話今はいいの!」

「ええ!?いまからがいい話なのに!?」

「無理もない! レイラは私の血を大量に見てしまったのだから! 疲れてしまったのだろう! ハッハッハ!」

……いや、笑い事じゃないだろ。

レイラは完全に意識が飛びそうになっている。そりゃそうだ、あんな血の量を見せられたら、誰だって疲れる。

その時、エルザの父親としての威厳ある声が響いた。

「……エルザちゃん。今度やったらパパ怒っちゃうからね」

その瞬間、エルザの表情がピクリと強張る。

「……ごめんなさい」

大人しく謝るエルザを見て、俺は思わず苦笑した。やっぱり父親には逆らえないらしい。
似たもの同士だなこの親子。

そんなこんなで俺たちは騎士団に入隊することになった。

騎士団見習いという形だ。

「君達も疲れただろう。部屋を用意する。……はいはーい! 君たちそんなとこで寝てないで仕事だよ~! は~い起きて起きて~!!」

パンパンッ!

エルフォードが軽快に手を鳴らすと、ぐったりしていたメイドたちがその音に過敏に反応し、瞬時に立ち上がった。

「はいっ! かしこまりました!」

……すごい反応速度だ。だが、それと同時に俺は彼女たちの顔をよく見てしまった。

目の下にはうっすらとクマ。表情には疲労の色が濃く滲んでいる。

メイドたち、過労死しないだろうか……?

俺はふとレイラに目を向け、小声で呟いた。

「……ここのメイドにだけはなりたくないね」

「……そう、だね」

レイラも疲れたように同意する。
こんな過酷な環境で働くくらいなら、騎士団の方がまだマシだろう……たぶん。

***

案内された部屋は驚くほど広かった。部屋であるのに、うちの家よりも広い。いや、家全体と比べても遜色ない広さだ。
ベッドも二つあり、風呂、トイレ、全てがうちの家より豪華で広々としている。

「……なぜガラス張り?」

俺は風呂を見て思わず声を上げた。そう、なぜか風呂がガラス張りだったのだ。

「アスフィ……見ないでね……」

レイラが小さな声で言う。

「う、うん!? も、ももちろんだよ!? 何言ってるのさ!」

俺は慌てて返したが、正直言うと、見ないわけがないのである。だってだって、俺だって年頃の男の子だもの。
見ない方がおかしい。そもそも、なぜガラス張りなのか? それは見ろと言わんばかりの設計ではないか。
さらに言えば、この部屋を俺たちに案内した時点で、意図的にそういう環境を与えたとしか思えない。

「王も粋な計らいをしてくれるね、全く……ありがとう」

俺は小声でそう呟きながら、心の中で感謝しておいた。

俺は人生で尊敬する人ランキングを父さんより上にしようと思った。俺の中の尊敬ランキングは母さんが一位で、二位がゲンじいだ。一位は揺るぎないが二位は結構ぶれる。父さんの時もあれば、ゲンじいの時もある。
ランキングは俺のその時の気分次第だ。そして今の二位はエルフォードだ。

さて、ここからが勝負だ、アスフィよ。レイラは今、お風呂に入っている。しかも、ガラス張りときた。

……見ない訳にはいかないだろう。理性と本能がせめぎ合う。いや、こんな状況を作られた以上、これは試されているのではないか?レイラは十三歳にしては、なかなかに大きいモノをお持ちだ。

普段はあまり気にしていなかったが、今は状況が違う。水の音が微かに聞こえ、ガラス越しに揺れる影が目に入る。

──いやいや、ダメだろ俺! 何考えてるんだ!

俺は必死に自制しようとするが、好奇心が抑えられない。……このままでは、何かが崩壊する気がする。よし、一旦深呼吸だ。

「……ふぅ」

呼吸を整え、いざゆかん! 桃源郷エリュシオンへ!俺は意を決して、視線をそっと向ける。

「お、おおおおおおおおお」

そこに映ったのは──レイラの小柄ながらも、形の整った大きな胸。

透き通る肌に、湯気がふんわりと纏わりつき、滴る水滴が艶めかしく光を反射している。

髪を後ろに流し、無防備に湯に浸かるレイラ。その表情はどこか安心しきっていて、普段の気丈な姿とは違う。

……これは、見てはいけないものなのでは?

いや、だが、これは事故のようなものだ。向こうが意図して見せたわけではないが、環境がそうさせているのだから、仕方がない。

──神よ、俺は罪を犯しているのか? しかし、この光景を前に目を閉じるのは、果たして正しい選択なのか?

そんな葛藤の中、俺はごくりと息を呑んだ。

「俺はレイラの膝で眠っていた時、あの大きなモノで包まれていたのか……」

今さらながらに、その事実を噛みしめる。

初めて見るレイラの神秘的なカラダに、俺の興奮は収まらなかった。

小柄な体に不釣り合いなほど豊かな膨らみ。白く透き通る肌に滴る水滴。微かに揺れるそのラインに、俺の理性は限界寸前だった。

だが、ここで最大の問題が発生する。

ガラスが曇って、一番見たい大事な部分がよく見えない。

「……なん……だと……?」

まさかの曇りガラス現象。まるで俺の視線を妨害するかのように、ガラスが薄く白く覆われている。

あと少し……あと少しなのに……!

「……ああもう! なんであとちょっとなのにーーー!!」

俺は無駄に広い部屋のど真ん中で、一人嘆くのであった。
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