Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
62 / 97
第四章 《第一部》ヒーラー 模索篇

第58話「『ゼウス・マキナ』」

しおりを挟む
ヨダレは何とか収まった。だが、垂れ流していたせいで口元が乾いてカピカピだ……。

しかも、水分をかなり持っていかれたような気がする。

「なにか飲みたい……」

「うむ、私もだ……」

「水魔法は……ダメですね。またエルザがお腹を壊しますし」

いや待て、この場には水の神だったアイリスがいるじゃないか!

……この状況で流石に断らないよな……?

「なぁアイリス――」

「わたくし人間ですので」

ちっ。こいつ、まるで俺が頼むことを読んでいたかのように被せてきやがった。

もういいよ!お前には何も頼まねぇ!二度とな!

「……確か我の記憶では、この辺りに川が流れていたはず」

「なに!?本当かゼーウスよ!」

エルザが食いつき、ゼーウスが首を縦に振る。

よし、そうと決まればそこまで急ぐまでだ。

……
…………
………………

「……なぁ、どこだよ川」

「あれ?我の記憶ではここに流れていたのだが」

「それいつの話だ」

「分からない」

俺はもう一度、アイリスにお願いする。もう頼みの綱がアイリスしか居ない。

「なぁ、アイリス頼むよ!俺たちもう干からびそうなんだ」

「…………ルクスお姉様、如何なさいますか」

頼む!ルクスお姉様!お前の一言で俺たちの命が救われるんだ!

ルクスは悩みに悩んだ末――

「……よし、良いでしょう。アイリス、お願いします」

「やったぜ!」

俺は思わずルクスに抱きついた。

「アスフィ!?」

「流石は俺のルクスだ!感謝してるぜ」

「い、いえ……それはどうも……」

「はぁ……感謝はわたくしにして欲しいものですね」

そういうとアイリスは、なにもない場所に、小規模の湖を作り出した。

「……皆さんどうぞ」

「腹壊さないよな?……特にエルザ」

「わたくしの水は魔法ではありません」

よくわからないが、そうと決まれば――

早速俺たちは飲み尽くさんとする勢いで湖に口をつけた。

美味い……ああ水ってこんなに美味かったのか……。

これからは水に感謝しながら生きていこう。

アイリス様、ありがとう。

***

「――オェェェェェェェ」

エルザが突然、勢いよく吐き出した。

「ア、アイリスよ……なぜ私だけ吐くのだ……魔力は含まれていないのではなかったの……うっぷ……オェェェェェェェ」

「ちょっと待て、こっち見て吐くなよ!」

俺は慌てて距離を取った。だがエルザの顔は青白く、明らかに普通の状態ではない。

「恐らく、アイリスの水にも微量の魔力が含まれていると思いますよ?『水の都フィルマリア』に居た住民からは魔力を感じました。つまり、アイリスの水には魔力が含まれているということですね」

「ルクス……なぜそれを先にエルザに言ってやらないんだ」

「……エルザなら大丈夫かと。それに多分止めても無駄でしたよ」

「…………その筈は。わたくしは神……あ、そういう……ことですか……」

アイリスは一人でブツブツ呟き、不敵な笑みを浮かべていた。

確かにあれは止められないな……。誰よりも真っ先に飲み始めたもんな。それに前回大丈夫じゃなかったんだよなぁ。

今回は前回よりかなり飲んでるが、大丈夫かなエルザのやつ……。

***

しかし、俺達が思っていたよりエルザの状態はかなり深刻なものだった。

エルザはその後、倒れてしまい、それっきり目を覚まさない。

時刻は既に夜を迎えている。

「神の水を多量に摂取した末路だろう」

呆れた顔で言うゼーウス。

「そんなこと言ってる場合かよ!」

「そうですよ!エルザは一体どうなるんですか!?」

俺とルクスは焦っていた。あの頑丈なエルザが倒れたのだ。無理もない。

俺たちはその意外な結果に動揺していた。

「落ち着いて下さい、ルクスお姉様、アスフィさん」

落ち着いたトーンでそう言うアイリス。

「わたくしの水は神力じんりょくを宿すもの。魔力に似ていますが、魔力ではありません。……恐らく、魔力暴走ではなく、ただ神の力に充てられただけです」

「それはつまりどうなるんだ?」

「寝れば治ります」

本当かよ……エルザが倒れるなんて余程の事だぞ……。

だが、紛れもないアイリスが言うんだ。

ここは言う通りに寝かせておくしかないか。

それに、どっちにしろ俺たちにはどうしようもないしな。

***

俺たちは焚き火を焚き、眠ることにした。

今回の見張りは俺がすると前に出た。

「任せました、アスフィ」

「ああ」

ルクスは眠りについた。

「……なぁ、お前達は寝なくていいのか」

「神は寝なくても大丈夫だ」

「わたくしはではありませんが、寝付けなくて」

「そうか……なら少し話さないか」

俺は神と”自称”神を辞めたものと話すことにした。

「お前らに言いたい……いや、聞きたいことがある。俺には……俺の中には、自分じゃない何かが居るんだ」

「ええ、そうでしょうね」

「……それを聞いてお前はどうしたい『神の子』よ」

「その『神の子』ってのもよく分からないがな……昔から気づいていたんだ。俺は時々俺じゃない感情が出てくる事がある。それを抑える努力をしてきた……だが――」

俺はあの日のことを思い出す。

「…………俺の幼馴染……レイラが死んだ時……それが抑えられなくなった。この姿もきっとそれとなにか関係しているのかもしれない」

「そうですね」

「我からは何も言えない」

レイラが死んでいるのを見た時、俺は俺を抑えられなくなった。

今までもそんなことが何回かあった気がする。覚えている節と覚えてない節があるが。

ただ、一つ言えることは俺は『普通の人間』じゃないということだ。

神でもない。こいつらの言う、『この世界の者』じゃないのかもしれない。

なら……それなら俺は……

「……俺は一体何者なんだろうな」

「それは――」

「ポセイドン」

「…………すみません、出過ぎた真似を」

「いい」

アイリスは何かを言いかけた。だが、それはゼウス・・・の声によって、最後まで言うことは無かった。

「我がお前を『神の子』だと言うのはなぜだと思う」

「……分からない」

神の子……俺は神じゃない。

「『神の子』それはつまり、お前自身を神と言っている訳では無い」

「どういうことだ……。お前は……ゼウスは俺の父さんと母さんが神だって言いたいのか?」

「……我はこれ以上は何も言えない。盟約によってな」

また盟約か。盟約ばっかりだなこの世界は。

だが仮に……もし俺の両親の……あるいは片方が神であるなら、ゼウスの言う事の辻褄が合う気がする。

「さて、我も寝るとしよう」

「わたくしもそうします」

「神は寝なくてもいいんじゃなかったのか?」

と、俺が聞くと二人の神は、必要無いだけで眠るのは好きだと言った。

「……仕方ない、俺が見張りをしてやる」

「必要ない。我がいる限り魔物の類は近寄ってこないだろう」

なんだよそれ。便利だな。

「……だとしても念の為だ」

「そうか、勝手にしろ」

ゼーウスとアイリスは眠った。

「『神の子・・・』か………………」

次の日の朝、見張りをルクス達に任せ、俺も少し眠ることにした。

――俺は夢を見た。

『よぉ、また会ったな』

(またお前か……姿を見せろ)

『姿は見せられない。これも盟約だ、悪いな』

(この世界は盟約ばっかりでうんざりだ。ゼウスもアイリスも)

『そんなこと言うな。これはお前のためでもある盟約だ』

(俺のため?)

『ああ、詳しくは言えない、これも盟約だ』

(もういい、盟約、盟約って聞き飽きた。で、何の用だ。もう消えたかと思ったが?)

『消えるわけが無いだろう。なんせお前の中には――』

(盟約、か)

『……まぁその通りだな。よく分かって来たじゃないか。……だが今回は忠告をしに来ただけだ』

(忠告?)

『ゼウ……ゼーウスにも言われただろ?』

(そういえば、ゼーウスが確かにそんなことを……)

『アイツはあんなんでも一応神だからな』

(お前はゼーウスの何を知ってる)

『……全てだ。まぁとにかく注意しろ』

(だから何にだよ)

『マキナ《・・・》にだよ』

***

俺は目が覚めた。……あいつは何が言いたかったんだ。

「マキナ……か……ん?」

静かすぎる。まだ寝ているのか? ふと俺は周囲を見渡した。

ルクス達が……居ない……? どういうことだ。

辺りには誰もいない。眠っていたはずのエルザも、見張りをしていたはずのルクスも。二人の神も……俺以外誰もいない。

俺はこの大地に一人取り残されていた。

「……なんだ、この身の毛のよだつ感じは」

俺は皆を探した。走った。ただただ走って探した。

……
…………
………………

見つけた。

ルクスとエルザが倒れていた。俺はすぐさま駆け寄った。

「…………なんだよ……これ」

ルクスとエルザの体には傷ひとつ無い。

にも関わらず、二人は目を覚まさない。

「遅かったな『神の子』よ」

「わたくし達では何もできません」

「お前たちがやったのかぁっ!!!」

「違う、落ち着け。我たちでは無い。やったのはアイツだ――」

ゼーウスは上空を指差した。

『やったのは我だ、アスフィ・シーネット』

「ゼウス……が二人?」

ゼウスと同じ顔、同じ背丈の瓜二つの物がそこに居た。

片割れ・・・よ。こいつには近寄るなと言ったはずだ」

『近寄ってはいないだろう……そっちから来ただけだ』

「……そうか」

こいつら何を……言っている? ゼウスが二人? ……どういうことだ。

「おいお前! ルクスとエルザに何をした!」

『………なにも』

「そんなわけないだろう!」

俺はゼウスと瓜二つの少女に激怒した。

感情が抑えられなかった。

『……我はただ……そう、眠らせただけのこと』

「ねむ………らせた?」

『聞いたことは無いか?『呪い』という言葉を』

なに……まさかルクスとエルザにも『呪い』を……?

母さんと同じ『呪い』を……?

ってことは、もうルクスとエルザは……

「……お前、覚悟しろよ」

『盟約により我はお前に近づけない。だが、お前から向かって来ると言うならまた話は別だ』

許さない……許さない……許さない許さない許さない。

俺はこいつを絶対に許さない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...