Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第五章 《第一部》ヒーラー 追憶篇

第63話「友よ」【ルクス視点】

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「………ル……クス!おいっ!」  

私を呼ぶのは……誰でしょうか……。  

「ルクスッ!!」  

「…………はっ」  

私は勢いよく目を覚ました。  

「目が覚めたようだな」  

「…………レイモンド……?何故ここに?それにここは……」  

(あの日の貧民街……)

そおはかつてルクスという存在が生まれた場所だった。

目の前にいたのは、あの日私を置いていった男、レイモンドだった。  
彼の姿を見た瞬間、胸の奥が締め付けられるような感覚が蘇る。  

「ルクス~お前随分と大きくなったなぁ!ま、チビなのは相変わらず変わらねぇがよ!」  

「………うるさいですね……レイモンドも相変わらず女心が分からない男で安心しました」  

「ばか、んなもんあったら、ガキ置いてくるわけねぇだろ」  

「………ガキ……ですか……あの……レイラのことですが……すみません、レイラは……」  

彼女の名前を口にした途端、私の胸に後悔と罪悪感が押し寄せた。  
私はレイモンドに全てを話す。  

「…………そうか……辛い思いをさせちまったな。悪いかった。俺のせいだ」  

「いえ……私が初めからそこに居ればレイラは生きていたかもしれないので、私のせいでもあります」  

「そうか…………そうかもなぁ」  

レイモンドの表情には深い悲しみが浮かんでいた。  
私のせいだ……自分の無力さが、レイラの死という形で突きつけられる。  

仲良くしてやってくれと言われたのに、私はその約束を果たせなかった。  
喧嘩をして、そのまま仲直りできずに彼女を失った……。  

「……本当にすみませんでした、レイモンド」  

その言葉は、心の奥底から絞り出した謝罪だった。  

「………なぁルクス、お前、好きなやつでもできたか?」  

「ええ……え?えぇ!?急になんですか!?」  

レイモンドは突拍子もないことを言い出す。  
けれど、真剣な表情をしているのを見て、私は何も言えなくなった。  

「女心はわからねぇが、そういうのは分かる」  

……レイモンドは本当に不思議な人ですね。  
私の好きな人……アスフィ・シーネット。
  
私は彼のことが好きだ。でも、アスフィにはもう好きな人がいる。  
レイラ……彼女が眠っている今、私が横取りみたいなことをするなんて……そんなことできるわけがない。  

「ルクス、悩むのはやめろ」  

「え?」  

「お前がやりたい様にすりゃいいじゃねぇか!その好きな人とやら……お前はそいつが大好きで大好きでどうしようもねぇんだろ?……なら、もっとがっつけ!」  

「でも、アスフィにはもう好きな人が……あなたの娘のことが好きなんですよ?」  

「……なら俺の娘の分まで愛してやってくれ。……お前はもう俺の娘みたいなもんだ……違うか?」  

「……娘を二人も置いていく父親なんてしりませんよ」  

「……それは……悪かった」  

レイモンドは頭を下げた。  
それは、彼の精一杯の謝罪の仕草だったのだろう。  

「ふふっ……でも……ありがとうございます」  

「ああ……」  

レイモンドはあの日、私を置いていった。  それからというもの私は酷く落ち込んだ。初めはどうすればいいか分からず、彷徨い、道中で仲間も出来た。彼らが今何をしているかはわからない。けれど、そのおかげで強くなれた。  

そしてそれらがあったから――アスフィと出会えた。  

そのお陰で、私は彼を好きになれた――。  

あれ……?そういえばここはどこ?  
レイモンドとの会話に夢中で、周りの景色に目がいかなかった。  

「レイモンド!ここはど……こ……レイモンド?」  

振り返ると、そこにはもうレイモンドの姿は無かった。  
さっきまでそこにいたはずの彼が、消えてしまった……?周りの景色が変わっていることにも気付かなかった。  

気付けば私は木造建ての家に一人取り残されていた。  
ここは私の家ではない……でも、不思議と違和感が無い。  
むしろ、どこか安心する気持ちに包まれている。  

その時、玄関から音がした。  

「ただいま!」  

「…………アスフィ?」  

私は扉の方へ駆け寄ると、そこに立っていたのはアスフィだった。

「ごめんな待たせて」  

「……いえ、別に待ってませ………………ん!?い、今何を!?」  

「……何って、ただいまのチューだろ」  

「…………そんなことする人でしたっけアスフィ……」  

「いつもしてるじゃないか。今日はどうした?なんか変だぞ今日のルクス」  

彼の言葉を聞いて、私は一瞬戸惑った。  
でも、そうだ――ここは私のホームだ。  
ルクス・セルロスフォカロとアスフィ・シーネットのマイホームだ。  

(……これは現実……じゃない……けど……)  

私の心に微かな疑念が湧き上がる――。

「……すみません、ちょっと疲れが……」

「そっか……なら今日は俺が晩飯作るよ」

「いいんですか?……ではお願いします」

「ああ、任せろ」

アスフィは私をお姫様抱っこでベッドまで運んでくれた。  
途中でさりげなく胸を触られたけど……これもいつものことだ。  
私は何も言わず、彼に身を任せた。  

***  

「……美味しいです!アスフィ!」  

「まぁ俺が作ってるからな!当たり前だろ?」  

アスフィの笑顔を見て、自然とこちらも笑みが浮かぶ。  
どうしてだろう……こんなにも幸せな気持ちになるのは――。  

「いつもは私が作っているのに、今日はまたどうしてですか?」

「ルクスにはゆっくりして欲しいと思った……それだけだよ」

アスフィはいつだって私を気遣ってくれる。  
それが私はとても嬉しかった。  

そして、食事の後は必ず……。  

「…………じゃあシャワーいくかルクス」

「……はい」

私たちにとって、シャワーは毎日の習慣だった。  それは二人が最初に決めたルールでもある。  
アスフィはいつも私の体を洗いたがる――そして、途中で悪戯をすることも。  
でも、それすらも愛おしいと思えてしまう自分がいる。

***  

夜、私たちはベッドに横たわり、互いの体温を感じながら静かに眠りにつく。

「……はぁ………はぁ…………」

「……アス……フィ……」

「……ルクス……可愛いよ……」

「……アスフィ……大好きです……」

心からの愛情が溢れ出す。  
この瞬間だけで、私は十分に幸せだった――。

***  

翌朝。  
目が覚めた私は、隣にいるはずのアスフィがいないことに気づいた。

「アスフィ……?どこですか?」

不安な気持ちが胸を締め付ける。  
彼がいないなんて……何かあったのだろうか。  

すると、玄関から足音が聞こえた。

「……ルクス」

「………エルザ!?」

現れたのはエルザ・スタイリッシュ、彼女だった。  

「どうしてこんな所に!?」  

「ルクス、目を覚ませ!ここは現実じゃない!幻想だ!」

エルザは勢いよく言い放った。  その目には、真剣さと焦りが混じっていた。  

「何を言ってるんですか?またいつものゲームですか?」

エルザはゲーム好きだ。  きっと、また私たちと遊びたいのだろう――そう思った。  

「違うっ!」  

その声の強さに、私は驚き目を見開く。  

「目を覚ませ!ルクス・セルロスフォカロ!君はアスフィを助けたいのだろう!?好きなんだろう!?だったら、こんな”幻想”の世界でいつまでも篭っているな!」  

「……幻想?エルザ、ここは私の現実ですよ?アスフィが居て、アスフィと私の家があります……それが幻想なんてはずがありません」

必死に言い返す私の言葉。  
だが、自分でもその言葉にどこか違和感を覚えていた。

「……なら聞く。お前たちはどうやって結ばれた?」

「なにを」

「いいから答えろっ!」

「それは……」

……あれ?  
アスフィとはミスタリスで出会った。  
彼が魔法を教えると言ってきて……そこから旅をして……結ばれた……

――どこで?  

「……やはり答えられないか」  

「……違う」  

「よく聞けルクス。お前はまだアスフィと何も進んじゃいない」  

「……違う……違う違う違う!!!!!」

私は必死に否定するが、エルザの言葉は確信に満ちていた。  
そして、エルザは静かに手を差し伸べた。

「ルクス……私は君を救いたいんだ。友として――君をここから連れ戻したいんだ」  

「…………エルザ……」  

その言葉に、私の心は揺れた――。

「…………ここは幸せです」

「ああ」

「本当に幸せなんです…………アスフィが私に愛をくれるんです」

「ああ……」

「……でも私が独り占めしちゃいけませんね……」

「ああ!!」

私は、差し伸べられたエルザの手を強く握った。  
その瞬間、こらえきれない涙が頬を伝う。  エルザもまた、涙を流していた。

二人とも、今ここにいることに理由を求める必要などなかった。  
私たちはただ――お互いを信じて、幻想を手放す覚悟を決めたのだ。

「さぁ、帰ろう。向こうで本物のアスフィが君を待っている」

「はいっ!!」

***  

「……ん~」

「お!目を覚ましたか!」

「…………アス……フィ」

「良かった!認識できたんだな!」

私の目の前にいるアスフィは、いつもと変わらない笑顔を浮かべている。  
その姿を見て、心が強く揺さぶられた。

「……それと……エルザ……」

「ああ………おかえり、友よ」

エルザは私の手をずっと握っていてくれたらしい。  
その手は少し汗ばんでいたが、それが何よりも温かく感じられた。

「……アスフィもエルザもありがとうございました。おかげで抜け出すことが出来ました」

「……俺は何もしていない……何も出来なかった」

「…………私はそうだな……私は友を想った。それだけだ」

「本当にありがとうございました、私の大好きな人と……友よ・・

私たち三人は抱き合い、心が一つになったような感覚を共有する。  
その瞬間、何かが変わった気がした。  

***  

「――二人とも無事でなにより!いや~すごいね!さすがだ!私は君たちなら乗り越えられると信じていたよ~!」

私達に幻想を魅せた彼女――オーディンの言葉が響く。  
その姿はどこか不気味でありながら、どこか安心感も与えていた。

「……オーディン、お前は一体何を――」

「君たちの力を試しただけだよ!それにしても素晴らしい友情と愛情だったね!」

彼女は嬉しそうに微笑んでいる。  その笑顔に、私達は何も言い返せなかった。

「……俺たちは試されていた、ただそれだけなのか?」

「それだけさ!でも、それが全てだよ!さて、次の試練も楽しみにしてるからね~!」

彼女の言葉を聞きながら、私は心の中で誓う。  
この先どんな試練が待ち受けていようと――仲間と共に乗り越えてみせる、と。

「アスフィ……エルザ……これからも一緒にいてくれますよね?」

「ああ、もちろんだ」

「当然だ。君は私の『友だ』」

その言葉に救われる。  
私はもう一度、仲間たちと共に歩き出すことを決めた――。
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