Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
69 / 97
第五章 《第一部》ヒーラー 追憶篇

第64話「愛に魅せられて」

しおりを挟む
「じゃあ改めて、私の正体を聞いてみちゃおっかなー!」

椅子に座り、ニコニコしながらディンは言う。

「もちろん、もう罰ゲームは無いから安心してね!」

罰ゲーム……二度としたくないものだったな。
あの屈辱的な時間を思い出すだけで寒気がする。
そういえば、ルクスやエルザはなんて答えたんだろうか……?
王では無いとすると、やはり『神』と答えるのが正解だったのか?

「……私は神と答えました」

「なに!?……神じゃないのか!」

『神』と答えたルクスは不正解だった……?
だとしたら、ディンの正体は何だというのか?

「……オーディン」

「正解だよ!私はオーディン!ってね!」

「オーディン……ですか……神の名称を当てるなんて無理です」

ルクスは頬を膨らませ、不満げに呟いた。
その仕草に少しだけ笑ってしまいそうになるが、今はそんな場合じゃない。
確かに、神の名称を当てるなんて不可能だろ。
いや、待てよ。エルザは一人正解した。あいつはなんて答えたんだ?

「……エルザ、お前はなんて答えたんだ」

「私は創造神・・・と答えた」

「……なんでそんな言葉がピンポイントで浮かんでくるんだよ」

「ヒントなら沢山あったぞ」

ヒント?そんなものあったか……?
俺の目にディンにはアイリスのような違和感があるようには思えなかった。

だから、神だなんて考えもしなかった。

「『神木』……これを見た瞬間、私はディンを神だと確信していた」

エルザの声は冷静だが、確かな自信が込められている。俺にはそんな発想が微塵も浮かばなかった。言われてみれば、確かに妙な場所だった。でもそれだけじゃ、ディンが神だとは思えない。

「他にも、分かりやすい所を上げるならこんな高い所に一人で住んでいることや、私より小柄でありながら私以上のパワー。そんな人間がいるはずが無いだろう」

……たしかに。エルザよりも小柄な少女が、あのエルザに力で勝っている……言われてみれば確かにおかしい。……何故俺は気付かなかったんだ……。

少なくともルクスは『神』だと気付いていたようだが……結局分からなかったのは俺だけだったのか。アイリスのような違和感を感じなかったから、その選択肢は無かったな……。
俺が鈍感すぎただけか。

「にしてもエルザはなんで、オーディンだと分かったんだ?」

「うむ、それなのだが。私もオーディンの名前までは知らなかった。創造神と答えただけだからな」

「うん!私も迷ったよ?正解にしようかな~?どうしよっかな~ってね!でもまぁいっか!って!大正解というより、正解って感じかな!」

そんなガバガバ判定ならもう『神』でも正解でいいだろ。ルクスがなんか可哀想だ……。

「創造神については……私はおじいちゃんからよく話を聞いていた」

「なにをだ?」

「創造神という神が”人類を創った”と」

「……なに?」

エルザは衝撃の発言をする。その言葉に流石の俺も言葉を失った。

「私のおじいちゃんは物知りだったのだ。創造神は人類を創り、この世界に新たな命を生み出したと……確かそう言っていた気がする」

ディンが人類を作った……?
……いや、アイリスも瞬時に街を創れるんだ。いつかの時、俺はアイリスに聞いたことがあった。
人類も神が創ったのかと……俺の予想は当たっていたってことか。

「だが、それだけじゃディンが創造神と分からないだろう?」

「そうだ。私は迷った。これは『神』と答えるべきなのかと……だから私は『神木』を目にしてから、ここに来る道中、冒険者を観察していたことを思い出したのだ」

「観察……?」

「この『アスガルド帝国』には色んな人種がいる。ヒューマン、獣人、ドワーフ、竜人……極めつけは、あの森・・・に引きこもりがちなエルフまでいた」

エルフまでこんな所にいたのか。気付かなかった……。
そういえばエルフの姉妹、コルネとコレイは元気だろうか。

「……私はここでおじいちゃんの話を思い出したのだ。まさか『アスガルド帝国』にいる者達は全員ディンが創造したのでは無いかと。確信はなかったがな」

「……そうか。流石の観察眼だなエルザ」

「私には考えが至りませんでした」

「うむ、私もおじいちゃんの話がなければルクスと同じ結果だったろう」

エルザのおじいちゃん何者だよ。

「エルザの言うことは大体合っているよ!だけど、不正解!」

「なに!?どこか間違っていたのだ!」

「君は『アスガルド帝国』にいる者全員を私が創造したと考えているよね!それは違う!私が創造したのはほんの十数人程度だよ!その後は子を産み、外から来た者たちと……そうして増えていったのさ!私だって何でもかんでも創造していい訳じゃないからね……他の神との話し合いの元行われたものだよ!」

他の神……その中にはゼウス・マキナ……
彼女も含まれているのだろうか。

「でもやっぱり、エルザは正解したね!私の読み通りだよ!流石は剣王エルブレイドの娘だね!」

「…………ああ、素直に喜んでおくことにするよ」

エルザの祖父は剣王だったのか。なんか凄そうな肩書きだ。

「さて!暗くなってきたし今夜はここら辺にしよう!」

「あれ?そんなに経っていたんですか?」

「うむ、二人は随分と長い間眠っていたぞ」

「そうだったのか……全然気付かなかった」

「時間はたっぷりある!この話の続きはまたいずれするとしよう!……君たちにはそれを聞く権利があるからね。……私は少し用事があるから出るよ!君たちはここを自分の家だと思って好きに使っていいからね!風呂トイレ完備の私自慢の家だからね!」

とディンは会議があると言い、そそくさと家を出て行った。
なんだよ会議って。俺たちは取り残されてしまった。

「……好きに使ってもいいと言われたので、私はシャワーを浴びたいです」

「俺は少し休むよ」

「アスフィ……か、体洗ってくれないのですか?」

え、急に何言ってんだルクスのやつ。頭でも打ったのか?

「……ルクス、お前ディンに何かされたのか?なにを魅せられたんだ?」

「………とてもいい夢でしたよ。大好きな人と友のいい夢です」

ルクスは笑いながらそう言うのだ。
俺は本気で可愛いと思ってしまった。

「うむ、ではルクスの体は私が洗おうではないか!」

「え、ええ?エルザがですか?」

「嫌なのか?」

「………仕方ないですね、洗わせてあげます」

こうしてエルザとルクスは風呂に向かった。なんだかいつもより仲が良く見えた気がした。

***

(なあ)

(なぁおいって!)

なんだようるせーな。疲れてるんだ。邪魔するな。

(覗かねーのか?)

……ああ

(バカやろう!覗かないでどうするよ!)

俺はまだ死にたくないんだよ。

(相手がオーケー出してんだ!そこは一緒に入るとこだろ!)

どうしてそうなる。

(ルクスは……それを求めてるぞ)

はぁ……お前は少し黙ってろ。俺は疲れたから寝る。

(ちっ、わからず屋な野郎だな……お前のために言ってやってんのによ)

***

俺は夢を見た。彼女……マキナとの大切で楽しかったあの頃の日々。
マキナ……お前はまだ俺の事を覚えてくれているのだろうか。
あの日の出来事を……忘れられないあの日の事を。
お前が忘れても、俺は必ず覚えてるからな……マキ……ナ。

……
…………
………………

「………マキ……ナ」

「私はルクスです」

「……え、なんでルクスがここに……?」

「ダメですか?」

ベッドで寝ている俺の横で一緒に寝ているルクス。
ディンからは一人一人部屋が与えられた。
俺は確かに自分の部屋で、誰にも邪魔されずに眠っていたはずだ。
なのに、なぜルクスがここにいる?
俺が寝ている間に何かあったのか?

「何してるんだよルクス」

声に多少の警戒心を込めて問いかける。
彼女の行動にはいつも何かしら理由がある。
ただ、今はその理由が全く読めない。

「……私は夢を見ました」

「ディンのか?」

「はい、とても幸せな夢です。アスフィが居て、エルザが居て……レイモンドにも謝ることが出来ました」

「……そうか」

レイラのことか。
ルクスはずっと、心のどこかでその名前に縛られていたんだろう。
罪悪感――彼女の優しさがそうさせていたのかもしれない。
あいつはいつも、過去の自分を責めるような表情を見せることがあった。
その苦しみをずっと抱え込んできたのだろう。

「アスフィとの日々は楽しいものでした」

「……そうか」

自分が何をしてきたかを思い返す。
彼女が言う「楽しい日々」とは、一体どの瞬間を指しているんだろうか。
俺自身、楽しいと思える瞬間もあったが、同時に命の危険や緊張が付きまとっていた。
それでも、ルクスにとっては――それすらも大切な思い出なのか。

「……夜は激しかったですけど……そ、それも含めて幸せでした」

「お、おう……そう……だったのか」

ルクスの夢の中の俺、何してんだよ……。
自制しろ、夢の中の俺!
現実の俺が何もしてないのに、何故こんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ……。
だが、彼女が「幸せ」と言ったのは嘘じゃないだろう。
その表情が物語っていた。

「………エルザと約束したんです」

「なにをだ?」

「勝負をしようと」

「……そうなのか」

俺は「何の?」とは聞かなかった。
さすがにそこまで無神経じゃないつもりだ。
ルクスがエルザと何かを賭けたのだろうということだけは、彼女の言葉から察せた。

「はい……ですがここに来て思いました。私は悪い子です。なので勝負は放棄します」

「え?それって負けるってことじゃないのか?」

「いえ、勝ちます」

ん?よく分からないぞ。
勝負を放棄して、どうやって勝つんだよ。

「まぁ頑張れよ、勝負は勝負だからな」

「はい、応援ありがとうございます」

ルクスの目が一瞬だけ潤んだように見えた。
次の瞬間、彼女は俺の唇に触れるように口づけをしてきた。

「好きですアスフィ」

――俺は一瞬、頭が真っ白になった。
彼女の口から出たその言葉は、想像以上に重たく、強い感情を含んでいた。
だが、それ以上に彼女の覚悟が伝わってくる。

「……ずっと好きでしたよ。だから今日は私だけにを下さい」

ルクスは本気だ。
茶化すこともできるが、それは彼女の気持ちを踏みにじる行為になる。
彼女はここまでの思いを抱えて、勇気を振り絞ってこの言葉を紡いだのだ。

「………分かった」

深く息を吸い込み、覚悟を決める。
ここで逃げるのは、男としても、仲間としても失格だ。

「…………今日の僕は……アスフィだけのものだよ?だから好きにして………いいよ?」

彼女の顔がほんのり赤く染まりながらも、どこか誇らしげに微笑んでいた。
その瞬間、俺は彼女に向き合うことを決意した。

***

次の日、俺はエルザに怒られ……なかった。
いつものように空気を読まずに部屋に入ってくることもなかった。

それがまた、レイラがここにいないことを再認識させられるのだ。

俺はレイラという存在がいながらルクスに手を出してしまった。最低だ。

(……それは違う)

何が違う。クズだろ。

俺はまだレイラという一人の女性に心を縛られていた。

そしてルクスもまた、普段と違う。
昨晩の出来事が夢だったのか現実だったのか、曖昧なままだ。
だが、ルクスの表情を見る限り、何か吹っ切れたようにも思えたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...