Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇

第74話「奮闘の果て、見えた真実」

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俺は思考を巡らせる。

どうすればあの化け物じみたデカブツを落とせる……?

マキナの雷撃すら効かない。その事実が、俺たちの希望を薄暗い絶望へと引きずり込む。

気づけば龍神は空の上で暴れ狂っていた。翼を大きく広げ、怒りをぶちまけるようにその巨体を振り回している。周囲に漂うのは圧倒的な威圧感と、抗えない力への恐怖だ。

よく見ると、龍神の体の一部が奇妙に光りを放っている。それはまるで、内側から破壊しようとする何者かの存在を示しているようだった。

『……どうやら半身はまだ死んではいないようだ。やつの内側から攻撃しているようだ』

「……まさかあの龍神の体内に入ったってことか!?」

ゼウス……お前、何を考えているんだ。そんな無茶をして――お前自身はどうなるんだよ。

倒せてもお前が死んだら、素直に喜べるはずがないだろ。いまのゼウスは神じゃない・・・・・んだぞ。

龍神はゼウスの攻撃に為す術なく、空で未だ足掻いている。その姿は確かにダメージを受けているように見えた。

その様子を地上で見守る俺とマキナ。

何もできるわけじゃない。ただじっと見守る……俺たちにはそれしか出来ない。

「このっ!このっ!!出ていけ!」

「無駄だ、我はもうお前と朽ちることを選んだ」

龍神の怒声が空間を切り裂く。その咆哮には狂気が宿り、荒れ狂う巨体がもはや制御を失っていることが明白だった。

『……フィー、あれを見ろ』

マキナが静かに指差した先に、俺も目を凝らす。

「……まさか……本当にやりやがった」

龍神の体に複数の穴が開き始めていた。その穴から漏れ出す雷光は、ゼウスがまだ生きている証拠だ。

「だけどよ、アイツもう死んでるんじゃなかったか?」

『正確には、龍神は既に死した体を動かしているだけだ。再生は出来ない』

「……ってことは完全な不死身ってわけじゃないのか」

『そうだ』

俺は拳を強く握りしめる。不死身じゃないのなら……希望はある。けど――どうやって止める?

ならバラバラにしちまえば死ぬってことか。もう死んでるのに死ぬって変な話だが。

「がああああああああああああああああ」

龍神は荒れ狂い、地上にまでその暴虐を及ぼしていた。

龍神の眼は充血し、無差別に破壊のブレスを吐き出していた。その威力は、地上を抉り、あたり一面を焦土に変えていく。

『フィー、我から離れるな!』

「お、おう!」

マキナが再び雷のバリアを展開し、俺を守る。だが、そのバリアも長くはもたない。ブレスの威力は次元が違う――ここら一帯を消し飛ばすほどの力だ。

オーディンは地面を抉り、土壁を作り出してその場をしのいでいた。

「頼むから、はやくくたばってくれ……」

俺のつぶやきは、自分にすら虚しく響く。

ゼウスは龍神の中で奮闘しているようだ。しかし、漏れ出していた光が次第に弱まっていくのがわかる。

『……力が』

「ああ、弱まってる……」

体中穴だらけの龍神。それでも奴はまだ落ちてこない。もう言葉を発することもなくなったのに、なお暴れ続ける。

『フィー、半身を回復できないか?』

「……中にいる間は無理だ……せめて出てきてくれれば」

俺は必死にゼウスの光を追い続けるが、どうすれば助けられるのかわからない。

『なら我が行こう。……オーディン!フィーを頼む』

「おい!まさかお前までアイツの中に入るのか!?無茶だやめろ!」

『あんなんでも元は我の一部。フィー、お前を愛した者の一人だ。……どうやら今は違うようだが』

マキナのその言葉が胸に刺さる。

「……今は違う?どういうことだよ!」

問いかける俺に答えることなく、マキナは空を見上げた。その目には決意が宿っている。

『頼んだぞ!オーディン!』

「任せてよ!」

「おいっ!マキナっ!!!」

マキナは俺を守っていたバリアを解き、荒れ狂う龍神に向かって飛び立った。

俺はオーディンが作り出した大地の壁に守られながら、彼女の背中を見つめることしかできない。

「………マキナ……死ぬなよ……」

「……大丈夫さフィー、私の旧友はこんなんじゃ死なないよ」

オーディンの言葉には確信があった。だが、神は不滅とはいえ、心が壊れればそれは死と同じだ。

ゼウスが見せた覚悟に続くマキナの行動が、彼女を追い詰めることにならないよう願うしかない。

龍神のブレスによって、地面は赤く焼け爛れていた。一部はマグマのように煮えたぎり、立ち込める熱気が命を奪い取ろうと迫る。

その光景に、俺の意識が奪われそうになる。だが、今は耐えるしかない。

***

……どれだけ時間が経っただろう。

「……あ!見てフィー!マキナだ!」

「おおやったか……!」

オーディンの声に目を凝らすと、マキナが龍神の体内からゼウスを連れ出してくる姿が見えた。

龍神は未だ荒れ狂い、ブレスを吐き続けている。だが、マキナはそれを避けながらこちらへと向かってきていた。

『……戻ってきたぞ……フィー』

「………ああ、よくやったマキナ。……『ハイヒール』」

俺はゼウスに向けて回復魔法を放った。彼女の体から傷が消えていくのを見て、少しだけ安堵が胸を包む。

「悪いな、フィー。ありがとう」

「礼なんていらない。もうあんな無茶するな」

『話は後だ、ここは引くぞ。アイツをこのまま放っておくのは我としてもしゃくだが……』

マキナの声が冷静に響く。それでも、彼女の表情にはわずかな焦りが見えた。

俺は頷く。マキナの言う通りだ。あの龍神は我を失い、暴走している。このまま留まれば、俺たちも無事では済まない。

「……マキナ、ポセイドンはどうするんだ?」

『……あいつはあんなもので死ぬようなやつじゃない。あれでも誰よりメンタルが強い』

ポセイドンを信じるしかない。今は俺たちが生き延びることが最優先だ。

「分かった……マキナ、頼む」

『ああ』

マキナは俺に微弱な雷を纏わせ、飛行を始めた。ゼウスとオーディンもそれぞれ空に舞い上がる。

『……それでどこへ向かう、フィー』

「……そうだな、ルクス達の所へ頼む。ちょっと確かめたい事がある」

『分かった』

俺たちは再び、龍神によって焼かれたコルネット村へ向かうことにした。

そこはかつて緑豊かで穏やかだった村でアスフィ・シーネーットが生まれた場所でもある。今は黒煙も収まり、焼け焦げた灰と無数の遺体が残るだけの場所だ。

アスフィーが育った家も、真っ黒な瓦礫となり、かつての面影はどこにもない。

俺はその中で、目を凝らし、あるものを探した。

「…………やっぱりな」

『どうした、フィー』

「アリアの遺体がない」

アスフィの母、アリアの遺体が見当たらない――それが俺の確認したかったことだった。
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