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第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇
第79話「始まりの出会い」
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「なぁマキナ、ここで何してるんだ?」
「見て分からないか、花に水をやっているんだ」
マキナは振り返りもせず、淡々と答えた。
相変わらず素っ気ないな。なんなんだコイツは。
この歳でそんな落ち着いてて楽しいのか? もっとこう、楽しめよ人生をさ。
「あれ……スマホがない」
「スマ……ホ? なんだそれは」
「ああ、俺確かポケットに入れていたんだよ」
「……よく分からんが、無いなら仕方ないだろう」
最悪だ……。
アプリゲームとかかなりやり込んでいたのに。
データどころかスマホ本体まで落としてきてしまった。
俺のソシャゲアカウント……ガチャで神引きしたキャラ達……さようなら……。
「はぁ……」
「まぁ失くしたものは仕方ない。気にするな」
「……そうだよな。そういえば、ここどこなんだ?」
「ここというと、この村のことか?」
「え? それ以外になんかあるのか?」
「……それもそうだな……この村に名前は無い」
名前が無い?
そんな村があるのか。どこかの集落か何かか?
いや、そもそもここって本当に俺のいた世界なのか?
「君はこんな所で何をしているんだ?」
「……だから水を――」
「いやそうじゃなくて、楽しいか? こんなとこで一人でさ」
「……やることが無いから、こうしている」
やることが無いって、そんなわけないだろ。
田舎だって遊びようによっては楽しいもんだ。
……いや、待て。
ここ、本当に田舎か?
緑が広がる光景はそれっぽいけど、違和感がある。
空気の匂いも、吹き抜ける風の感触も、微妙に現実離れしてる。
もしかして俺、異世界に来たんじゃないか?
「なぁマキナ! ちょっと出かけようぜ!」
「お、おい! なにをする」
俺は彼女の手を引いた。
とりあえず外を歩いて確かめるしかない。
この世界がどんな場所なのか――それを知るには、閉じこもってても仕方ない。
「おおー! やっぱり! 外もいいぞ、マキナ!」
「……外はもう何度も見た」
「ならもっと外にいこう!」
「ま、まて! 我には家が――」
「そんなのまた帰れるだろ! 行こうぜ!」
俺はマキナの手を引いて進む。
すると、茂みの中から黒い影が飛び出してきた。
ゴブリン。
「……外は危険だ、フィーよ」
「お、おう……これゴブリンとかいうやつだろ?」
「我に任せろ」
マキナはおもむろに右手を掲げた。
すると、空間がビリビリと震え――
上空から雷が炸裂し、ゴブリンを一撃で焼き尽くした。
す、すげぇぇぇぇぇぇ!!
これは……マジの異世界じゃねぇか……!!
「……なぁ、マキナ」
「なんだ?」
「俺にもその魔法教えてくれよ」
「……それはいいが、どうするんだ?」
「魔法を使って魔物を倒す……夢だったんだよ!!」
ゲーム好きにはたまらない。
魔法で魔物を倒し、いつかは魔王も……!
こんな展開、ワクワクしないわけが無い!
「しかし今我が使ったのは魔法ではないぞ」
「え……? じゃあなに?」
「うーん、我の……エネルギー? みたいなやつだ」
「……なんだよそれ、頭大丈夫かマキナ」
マキナはどう表現したらいいか分からないという顔で首を傾げている。
「だが、教えることは出来る」
「おおー! 教えてくれ!」
「お前に素質があればだがな」
「素質……?」
どうやら魔法を使う為には、『祝福』というものがいるらしい。
それが無いと魔法が使えないとか。
「……ある」
「……え?」
「素質があるな」
マキナは俺の手をまるで手相でも見るかのように観察する。
「じゃあ使えるってことか!」
「ああ、使える」
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!
異世界に来ていきなり魔法使えません、みたいな展開じゃなくてよかったぁぁぁ!
これでとりあえずはチュートリアル完了だ!
「じゃあ早速何か教えてくれ! なんかこう、さっきみたいな雷も良いんだけどさ! 炎とか出してみたいんだよな! 俺!」
「うーんしかし残念だな」
「……え?」
俺はマキナに近付き興奮気味に体を揺らす。
そこでマキナは首を傾げた。
「……回復魔法しか使えないみたいだぞ」
「………………え」
どうやら俺は――
回復魔法しか使えないみたい、らしい。
「うそ……だろ……」
「嘘じゃない」
「嘘だと言ってくれ!」
「本当だ」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は膝から崩れ落ちた……。
***
俺は今、マキナの家の隅っこで膝を抱え座っている。
異世界に来たと思ったら、回復魔法しか使えないってどういうことだよ……。
せっかくの異世界転生だぞ? 魔王を倒すとか、ダンジョンを攻略するとか、
そういう胸躍る展開を夢見てたのに……俺はただのヒーラー。
魔物を薙ぎ払う火炎魔法も、雷を纏い敵を貫く魔法も、何一つ使えない。
やれるのは傷を癒やすだけ。……はぁ、なんで俺がこんな目に。
「……元気を出せフィー」
「無理だろ……回復魔法しか使えない魔法使いとかどんなだよ……利用価値ねーだろ」
「価値はある」
落ち込む俺を見てられなかったのか、マキナがそう言った。
価値? 俺に?
いやいや、回復魔法だけでどうしろってんだ。
「現に我は回復魔法は使えん。それどころか魔力を介した魔法が使えない。それに我が見た限り、お前の回復の素質は卓越したものだ。誇るがいい」
「……回復魔法でなにができんだよ」
「極めれば蘇生魔法を使える」
なに……? つまり、誰かが死んでも生き返らせることが出来るという、伝説のアレか。
それってもしかして、回復魔法の中でもぶっ壊れなやつじゃないか?
俺は絶望の底から一気に引き戻された。
マキナは呑気に茶を啜っている。
「マキナッ!」
「……なんだ」
「冒険に出よう!!」
「なぜだ」
「こんな所にいても退屈なだけだ」
「我は退屈と感じたことは無い」
嘘つけ。
こんな静かな村で一日中花に水をやる生活が楽しいわけないだろ。
「いや、俺が退屈だ!!」
「なら一人で行け」
「……一人で行ってもいいが、俺が死ぬぞ? いいのか? なぁ?」
マキナは茶を啜る手を止め、黙る。
……ちょっとは気にしてくれてんのか?
「なぁ~頼むよぉ~! せっかく異世界に来たんだ! 回復魔法しか使えなくても冒険くらいしたいだろ~! お前が居ないと攻撃手段が無い俺なんてすぐ死ぬんだよ!」
「身体を揺らすな……はぁ、わかった」
渋々といった感じでマキナが了承してくれた。
やった……!! これで俺の異世界ライフが始まる……!
「ただし我との冒険なんて楽しいもんじゃないぞ」
「何言ってんだよ! 楽しいに決まってるだろ!!」
異世界で冒険……!
こんなの楽しいに決まってるじゃないか……!!!
「……では明日にでも行くとしよう」
「おう!!」
楽しみすぎて眠れる気がしない。
どんな冒険が俺を待っているのか……!!
***
マキナは風呂に入るらしい。
チビだが可愛い女の子だ。いや、美少女だ。
長い白髪と白い肌。
俺は当然覗く……いや、入るね!!!
「なぁ! マキナ! 俺も一緒にいい――」
「……」
無言で死なない程度の雷を喰らった……。
だが、一瞬見えた!
小さな山が二つ……! その山頂は小さく淡い色だった……!
俺は脳裏に焼き付けておく事にする。
「眠れないなぁ」
木造建てのベッド。
痛くて眠れる気がしない。
当然マットレスなんてものは無い。
ただの木の板の上に寝ているだけ。
「文句を言うな」
「いや……待てよ? これはもしかして興奮しているから眠れないのか? その場合どっちだ? マキナの風呂でか? それとも明日の冒険だろうか」
俺がそう呟き、マキナの方をチラッと見た。
顔が殺すぞ、という顔だった。
……これ以上は辞めておこう。
一方隣にあるマキナのベッドには大量の綿が敷かれている。
「俺もそっちで寝たい……」
「我の風呂に入ってきた不埒者を入れろと?」
「……もう何もしないって!」
「…………分かった」
はぁ……やわらけぇ……。
このふわふわたまらん。
こんなに柔らかいものなのか……。
妹より小さいな。いや、別に触ったことは無いけどな。
「……おい、死にたいのかフィーよ」
「あ、ごめん。ついそこに手頃なものがあったから」
「次我の胸に触れてみろ……死より怖いものが待っているぞ」
「……わ、わかったって……もう寝るよ」
死を直感した俺は、静かに目を閉じる。
次の日の朝、俺達は冒険に出ることになる。
それは始まりの一歩で終わりの一歩でもある。
「…………ここは幸せだ」
***
……結局俺に何を見せたい。
(ゼウスがお前に見せたいものだろう、俺が知るか。……だが見ろ、ここからだ)
「見て分からないか、花に水をやっているんだ」
マキナは振り返りもせず、淡々と答えた。
相変わらず素っ気ないな。なんなんだコイツは。
この歳でそんな落ち着いてて楽しいのか? もっとこう、楽しめよ人生をさ。
「あれ……スマホがない」
「スマ……ホ? なんだそれは」
「ああ、俺確かポケットに入れていたんだよ」
「……よく分からんが、無いなら仕方ないだろう」
最悪だ……。
アプリゲームとかかなりやり込んでいたのに。
データどころかスマホ本体まで落としてきてしまった。
俺のソシャゲアカウント……ガチャで神引きしたキャラ達……さようなら……。
「はぁ……」
「まぁ失くしたものは仕方ない。気にするな」
「……そうだよな。そういえば、ここどこなんだ?」
「ここというと、この村のことか?」
「え? それ以外になんかあるのか?」
「……それもそうだな……この村に名前は無い」
名前が無い?
そんな村があるのか。どこかの集落か何かか?
いや、そもそもここって本当に俺のいた世界なのか?
「君はこんな所で何をしているんだ?」
「……だから水を――」
「いやそうじゃなくて、楽しいか? こんなとこで一人でさ」
「……やることが無いから、こうしている」
やることが無いって、そんなわけないだろ。
田舎だって遊びようによっては楽しいもんだ。
……いや、待て。
ここ、本当に田舎か?
緑が広がる光景はそれっぽいけど、違和感がある。
空気の匂いも、吹き抜ける風の感触も、微妙に現実離れしてる。
もしかして俺、異世界に来たんじゃないか?
「なぁマキナ! ちょっと出かけようぜ!」
「お、おい! なにをする」
俺は彼女の手を引いた。
とりあえず外を歩いて確かめるしかない。
この世界がどんな場所なのか――それを知るには、閉じこもってても仕方ない。
「おおー! やっぱり! 外もいいぞ、マキナ!」
「……外はもう何度も見た」
「ならもっと外にいこう!」
「ま、まて! 我には家が――」
「そんなのまた帰れるだろ! 行こうぜ!」
俺はマキナの手を引いて進む。
すると、茂みの中から黒い影が飛び出してきた。
ゴブリン。
「……外は危険だ、フィーよ」
「お、おう……これゴブリンとかいうやつだろ?」
「我に任せろ」
マキナはおもむろに右手を掲げた。
すると、空間がビリビリと震え――
上空から雷が炸裂し、ゴブリンを一撃で焼き尽くした。
す、すげぇぇぇぇぇぇ!!
これは……マジの異世界じゃねぇか……!!
「……なぁ、マキナ」
「なんだ?」
「俺にもその魔法教えてくれよ」
「……それはいいが、どうするんだ?」
「魔法を使って魔物を倒す……夢だったんだよ!!」
ゲーム好きにはたまらない。
魔法で魔物を倒し、いつかは魔王も……!
こんな展開、ワクワクしないわけが無い!
「しかし今我が使ったのは魔法ではないぞ」
「え……? じゃあなに?」
「うーん、我の……エネルギー? みたいなやつだ」
「……なんだよそれ、頭大丈夫かマキナ」
マキナはどう表現したらいいか分からないという顔で首を傾げている。
「だが、教えることは出来る」
「おおー! 教えてくれ!」
「お前に素質があればだがな」
「素質……?」
どうやら魔法を使う為には、『祝福』というものがいるらしい。
それが無いと魔法が使えないとか。
「……ある」
「……え?」
「素質があるな」
マキナは俺の手をまるで手相でも見るかのように観察する。
「じゃあ使えるってことか!」
「ああ、使える」
よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!
異世界に来ていきなり魔法使えません、みたいな展開じゃなくてよかったぁぁぁ!
これでとりあえずはチュートリアル完了だ!
「じゃあ早速何か教えてくれ! なんかこう、さっきみたいな雷も良いんだけどさ! 炎とか出してみたいんだよな! 俺!」
「うーんしかし残念だな」
「……え?」
俺はマキナに近付き興奮気味に体を揺らす。
そこでマキナは首を傾げた。
「……回復魔法しか使えないみたいだぞ」
「………………え」
どうやら俺は――
回復魔法しか使えないみたい、らしい。
「うそ……だろ……」
「嘘じゃない」
「嘘だと言ってくれ!」
「本当だ」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
俺は膝から崩れ落ちた……。
***
俺は今、マキナの家の隅っこで膝を抱え座っている。
異世界に来たと思ったら、回復魔法しか使えないってどういうことだよ……。
せっかくの異世界転生だぞ? 魔王を倒すとか、ダンジョンを攻略するとか、
そういう胸躍る展開を夢見てたのに……俺はただのヒーラー。
魔物を薙ぎ払う火炎魔法も、雷を纏い敵を貫く魔法も、何一つ使えない。
やれるのは傷を癒やすだけ。……はぁ、なんで俺がこんな目に。
「……元気を出せフィー」
「無理だろ……回復魔法しか使えない魔法使いとかどんなだよ……利用価値ねーだろ」
「価値はある」
落ち込む俺を見てられなかったのか、マキナがそう言った。
価値? 俺に?
いやいや、回復魔法だけでどうしろってんだ。
「現に我は回復魔法は使えん。それどころか魔力を介した魔法が使えない。それに我が見た限り、お前の回復の素質は卓越したものだ。誇るがいい」
「……回復魔法でなにができんだよ」
「極めれば蘇生魔法を使える」
なに……? つまり、誰かが死んでも生き返らせることが出来るという、伝説のアレか。
それってもしかして、回復魔法の中でもぶっ壊れなやつじゃないか?
俺は絶望の底から一気に引き戻された。
マキナは呑気に茶を啜っている。
「マキナッ!」
「……なんだ」
「冒険に出よう!!」
「なぜだ」
「こんな所にいても退屈なだけだ」
「我は退屈と感じたことは無い」
嘘つけ。
こんな静かな村で一日中花に水をやる生活が楽しいわけないだろ。
「いや、俺が退屈だ!!」
「なら一人で行け」
「……一人で行ってもいいが、俺が死ぬぞ? いいのか? なぁ?」
マキナは茶を啜る手を止め、黙る。
……ちょっとは気にしてくれてんのか?
「なぁ~頼むよぉ~! せっかく異世界に来たんだ! 回復魔法しか使えなくても冒険くらいしたいだろ~! お前が居ないと攻撃手段が無い俺なんてすぐ死ぬんだよ!」
「身体を揺らすな……はぁ、わかった」
渋々といった感じでマキナが了承してくれた。
やった……!! これで俺の異世界ライフが始まる……!
「ただし我との冒険なんて楽しいもんじゃないぞ」
「何言ってんだよ! 楽しいに決まってるだろ!!」
異世界で冒険……!
こんなの楽しいに決まってるじゃないか……!!!
「……では明日にでも行くとしよう」
「おう!!」
楽しみすぎて眠れる気がしない。
どんな冒険が俺を待っているのか……!!
***
マキナは風呂に入るらしい。
チビだが可愛い女の子だ。いや、美少女だ。
長い白髪と白い肌。
俺は当然覗く……いや、入るね!!!
「なぁ! マキナ! 俺も一緒にいい――」
「……」
無言で死なない程度の雷を喰らった……。
だが、一瞬見えた!
小さな山が二つ……! その山頂は小さく淡い色だった……!
俺は脳裏に焼き付けておく事にする。
「眠れないなぁ」
木造建てのベッド。
痛くて眠れる気がしない。
当然マットレスなんてものは無い。
ただの木の板の上に寝ているだけ。
「文句を言うな」
「いや……待てよ? これはもしかして興奮しているから眠れないのか? その場合どっちだ? マキナの風呂でか? それとも明日の冒険だろうか」
俺がそう呟き、マキナの方をチラッと見た。
顔が殺すぞ、という顔だった。
……これ以上は辞めておこう。
一方隣にあるマキナのベッドには大量の綿が敷かれている。
「俺もそっちで寝たい……」
「我の風呂に入ってきた不埒者を入れろと?」
「……もう何もしないって!」
「…………分かった」
はぁ……やわらけぇ……。
このふわふわたまらん。
こんなに柔らかいものなのか……。
妹より小さいな。いや、別に触ったことは無いけどな。
「……おい、死にたいのかフィーよ」
「あ、ごめん。ついそこに手頃なものがあったから」
「次我の胸に触れてみろ……死より怖いものが待っているぞ」
「……わ、わかったって……もう寝るよ」
死を直感した俺は、静かに目を閉じる。
次の日の朝、俺達は冒険に出ることになる。
それは始まりの一歩で終わりの一歩でもある。
「…………ここは幸せだ」
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……結局俺に何を見せたい。
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