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第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇
第84話『因縁』
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――マキナは、またしてもこの広い世界で……
冷たい夜風が吹き抜ける。
空は闇に包まれ、僅かに星の光が瞬いていた。
その夜空の下で地に伏した彼女。
ゼウス・マキナという存在が、完全に失われたわけではない。
だが、確かに彼女の半身は消えたのだ。
それはマキナにとって、なくてはならない《記憶》だった。
『……フ…フフッ………フフハハハハハハハハハッ!』
突如として響き渡る哄笑。
狂気に満ちた声が、静寂を打ち破った。
『……ゼウス……いや、もはや今はマキナ、でしたか。貧弱過ぎる……なんですかそのザマは。これがかつて神を率いていた者の末路とは……なんとも悲しいですネェ』
『…………エーシル、お前……』
マキナの声は震えていた。
それは恐れではない。
ただ、かつての自分を知る者が、目の前で嘲笑していることへの怒り。
いや、違う。
怒りすら抱けないほどに、今の彼女は力を失いすぎていた。
『記憶であるゼウスが消えた今、あなたなんてなんの脅威でもない。ゼウス・マキナという神はもうこの世界には居ないっ! ああ! なんて素晴らしいっ! 神ゼウス・マキナのこんな姿が見られる日がくるとは!!』
『……お喋りだな、エーシル。お前、そんな奴だったのか?』
『ええ、私は元よりお喋りでしたよ。ゼウスが消えてそれも忘れてしまったのですか?』
エーシルは、ニヤリと笑いながら、倒れ伏すマキナへと歩み寄る。
ゆっくりと、愉悦を噛み締めるように。
そして――
ぐしゃっ
マキナの頭を、足で踏みつけた。
『……ぐっ』
『えぇ?なんです? 聞こえませんネェ? 謝るのなら今のうちですよ? まぁ許しませんがネェ。あなたのせいで私は……』
道化は躊躇いなく、何度も何度も踏みつける。
地に伏した神の頭を、玩具のように弄ぶように。
「……や、やめろ、エーシル!」
必死に叫ぶ声。
それは、オーディンの声だった。
『黙りなさい、オーディン。神力を失った貴様などカスに等しい。それに元々はあなたのせいです。私がこうなったのも……私という存在の始まりは全て貴様らのせいだ。それをよくもまぁ被害者ぶってこの世界で居座る……醜いにも程がある。エルシアも泣いていることでしょう』
「……」
オーディンは拳を握りしめるが、立ち上がることすらできない。
かつての誇りも、全て奪われた今――。
彼女には、ただゼウスが蹂躙される姿を見ていることしかできなかった。
『……そうです、オーディン。私に謝りなさい。そうすれば神の力を返して差し上げましょう』
「なん……だと?」
『さぁ早く! 良いのですか? このままでは神友がどんどん痛い目にあいますよ? 神は死なないとはいえ、苦痛はある。……あなたがトドメを刺したポセイドンのように、ネェ?』
「……………」
オーディンは息を呑む。
目の前の道化は、嗜虐的な笑みを浮かべながら、その言葉を投げつけてきた。
エーシルの力とはいえ、攻撃をしたのはオーディン自身。
オーディンは返す言葉がなかった。
『……もういいです。神マキナ、あなたで遊ぶのも飽きました。あなたの神の力は私が頂きます。あなたに神力はもう必要ないでしょう』
エーシルは伏しているマキナに手をかざした。
次の瞬間――
『があああああああああああああ』
マキナの絶叫が響く。
光が彼女の体から吸い取られていく。
”神の力”が――奪われる。
『フハハハハハハッ!………これであなたも人間です』
マキナは力を奪われ、そのまま地に沈む。
動かない。
まるで、魂まで抜き取られたかのように――。
『……さぁ、人間になったあなた達を殺すのもいいのですが……あなたの恋人が現れたようなのでネェ。そちらから片付けるとしますか』
エーシルはふと視線を上げる。
空に――一つの影があった。
そして、その影が地へと降り立つ。
『せっかくなので、私が直々にあなたの目の前で殺して差し上げますネェ~?』
「やめろ……フィーに手を出すな………」
『い・や・で・す、フハハハハハハッ!』
嘲笑うエーシル。
道化の本性が、より色濃く滲み出ていた。
地面が揺れ、空気が変わる。
静かな怒りを持ってそれは降り立った。
そして――
「……よぉ、道化」
低く、静かに、だが確実に届く声。
『フィー……待っていましたよ。その様子だと全てを思い出したあなたはさぞ私を恨んでいることでしょう』
「ああ、自分に嫌気がさす。あと後悔もしてる。色んな感情が混ざりあって吐きそうだ」
エーシルは首を傾げる。
「……だが、これだけは言える――」
フィーの瞳が、赤く煌めいた。
「俺はマキナを愛していた。そしてこれからも、それは変わらない」
全身から放たれる圧倒的な威圧感。
足元の石が弾ける。
「……だから……」
次の瞬間。
空気が弾け、音が止んだ。
「俺のマキナから、その汚ぇ足をどけろっ!!」
フィーの叫びと共に、彼は跳躍した。
エーシルの体が、衝撃に弾き飛ばされる。
そのまま、瓦礫の中へと突き飛ばされた。
『……さぁ、盟約を結んだ者同士の最終決戦です!!』
立ち上がるエーシルは、ニヤリと笑う。
『勝負にならないと思いますが、せいぜい足掻いてくださいね、フィーさん?』
――因縁の対決が幕を開けた。
冷たい夜風が吹き抜ける。
空は闇に包まれ、僅かに星の光が瞬いていた。
その夜空の下で地に伏した彼女。
ゼウス・マキナという存在が、完全に失われたわけではない。
だが、確かに彼女の半身は消えたのだ。
それはマキナにとって、なくてはならない《記憶》だった。
『……フ…フフッ………フフハハハハハハハハハッ!』
突如として響き渡る哄笑。
狂気に満ちた声が、静寂を打ち破った。
『……ゼウス……いや、もはや今はマキナ、でしたか。貧弱過ぎる……なんですかそのザマは。これがかつて神を率いていた者の末路とは……なんとも悲しいですネェ』
『…………エーシル、お前……』
マキナの声は震えていた。
それは恐れではない。
ただ、かつての自分を知る者が、目の前で嘲笑していることへの怒り。
いや、違う。
怒りすら抱けないほどに、今の彼女は力を失いすぎていた。
『記憶であるゼウスが消えた今、あなたなんてなんの脅威でもない。ゼウス・マキナという神はもうこの世界には居ないっ! ああ! なんて素晴らしいっ! 神ゼウス・マキナのこんな姿が見られる日がくるとは!!』
『……お喋りだな、エーシル。お前、そんな奴だったのか?』
『ええ、私は元よりお喋りでしたよ。ゼウスが消えてそれも忘れてしまったのですか?』
エーシルは、ニヤリと笑いながら、倒れ伏すマキナへと歩み寄る。
ゆっくりと、愉悦を噛み締めるように。
そして――
ぐしゃっ
マキナの頭を、足で踏みつけた。
『……ぐっ』
『えぇ?なんです? 聞こえませんネェ? 謝るのなら今のうちですよ? まぁ許しませんがネェ。あなたのせいで私は……』
道化は躊躇いなく、何度も何度も踏みつける。
地に伏した神の頭を、玩具のように弄ぶように。
「……や、やめろ、エーシル!」
必死に叫ぶ声。
それは、オーディンの声だった。
『黙りなさい、オーディン。神力を失った貴様などカスに等しい。それに元々はあなたのせいです。私がこうなったのも……私という存在の始まりは全て貴様らのせいだ。それをよくもまぁ被害者ぶってこの世界で居座る……醜いにも程がある。エルシアも泣いていることでしょう』
「……」
オーディンは拳を握りしめるが、立ち上がることすらできない。
かつての誇りも、全て奪われた今――。
彼女には、ただゼウスが蹂躙される姿を見ていることしかできなかった。
『……そうです、オーディン。私に謝りなさい。そうすれば神の力を返して差し上げましょう』
「なん……だと?」
『さぁ早く! 良いのですか? このままでは神友がどんどん痛い目にあいますよ? 神は死なないとはいえ、苦痛はある。……あなたがトドメを刺したポセイドンのように、ネェ?』
「……………」
オーディンは息を呑む。
目の前の道化は、嗜虐的な笑みを浮かべながら、その言葉を投げつけてきた。
エーシルの力とはいえ、攻撃をしたのはオーディン自身。
オーディンは返す言葉がなかった。
『……もういいです。神マキナ、あなたで遊ぶのも飽きました。あなたの神の力は私が頂きます。あなたに神力はもう必要ないでしょう』
エーシルは伏しているマキナに手をかざした。
次の瞬間――
『があああああああああああああ』
マキナの絶叫が響く。
光が彼女の体から吸い取られていく。
”神の力”が――奪われる。
『フハハハハハハッ!………これであなたも人間です』
マキナは力を奪われ、そのまま地に沈む。
動かない。
まるで、魂まで抜き取られたかのように――。
『……さぁ、人間になったあなた達を殺すのもいいのですが……あなたの恋人が現れたようなのでネェ。そちらから片付けるとしますか』
エーシルはふと視線を上げる。
空に――一つの影があった。
そして、その影が地へと降り立つ。
『せっかくなので、私が直々にあなたの目の前で殺して差し上げますネェ~?』
「やめろ……フィーに手を出すな………」
『い・や・で・す、フハハハハハハッ!』
嘲笑うエーシル。
道化の本性が、より色濃く滲み出ていた。
地面が揺れ、空気が変わる。
静かな怒りを持ってそれは降り立った。
そして――
「……よぉ、道化」
低く、静かに、だが確実に届く声。
『フィー……待っていましたよ。その様子だと全てを思い出したあなたはさぞ私を恨んでいることでしょう』
「ああ、自分に嫌気がさす。あと後悔もしてる。色んな感情が混ざりあって吐きそうだ」
エーシルは首を傾げる。
「……だが、これだけは言える――」
フィーの瞳が、赤く煌めいた。
「俺はマキナを愛していた。そしてこれからも、それは変わらない」
全身から放たれる圧倒的な威圧感。
足元の石が弾ける。
「……だから……」
次の瞬間。
空気が弾け、音が止んだ。
「俺のマキナから、その汚ぇ足をどけろっ!!」
フィーの叫びと共に、彼は跳躍した。
エーシルの体が、衝撃に弾き飛ばされる。
そのまま、瓦礫の中へと突き飛ばされた。
『……さぁ、盟約を結んだ者同士の最終決戦です!!』
立ち上がるエーシルは、ニヤリと笑う。
『勝負にならないと思いますが、せいぜい足掻いてくださいね、フィーさん?』
――因縁の対決が幕を開けた。
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