Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇

第85話「道化」 “Climactic Battle: Part 1”

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 俺達はエーシルの前に立っていた。  

 この場に漂う異様な空気。  

 まるで全てを支配しているかのような圧倒的な威圧感。  

 それが、エーシルという存在を物語っていた。  

 ――コイツの力量が測れない。  

 単純に強大な力を持っているから、というわけではない。  
 そう、何かを隠している――そんな気がしてならなかった。  
 あまりにも不気味すぎる。 その面の下に何が隠されているのか。 
 曖昧な表現かもしれないが、それが俺の抱く違和感だった。  

「……言っておくがエーシル、俺はもう以前の俺じゃない」  

『それは私のセリフです。私は今やこの世界を管理している者。あなたなんて相手になりませんよフィ――』  

 不意打ちだ。  

 迷いなく、俺は詠唱する。  

「『死を呼ぶ回復魔法デスヒール』ッ!!」  

 しかし――。  

反射魔法リフレクション』  

「……な…………」  

 俺の魔法が、跳ね返された。  

 ――反射した!?  

 不意打ちのつもりで打った魔法だ。  
 ズル?卑怯?  
 そんなものどうだっていい。  

 コイツを殺せるなら、どんな汚名も甘んじて受け入れてやる。  
 だが、コイツは俺の魔法をそのまま俺に返してきた。  

『だから言ったでしょう。……私に魔法は通じません。私はこの世界の管理者。この世界にある魔法は全て熟知している。』  

「アスフィッ!?」  

 エルザの焦る声が耳に届く。  
 俺は膝をつき、一瞬意識が遠のく――が。  

「……大丈夫だ、エルザ……俺に任せろ」  

 体が動く。  

 ……また発動したな。  

『……なに?』  

 エーシルは、初めて僅かに眉を動かした。  
 意外だと言いたげな顔をする。  

 ――そうだろうな。  

 コイツは知らない。  
 俺が前の世界で、何をしてきたのかを。  

 俺は回復魔法の才能においては、マキナのお墨付きだ。  
 そして、俺には……とっておきのアビリティがある。  

【アビリティ:自動蘇生オートリバイブ
・ライフがゼロになった時、所有者の意志とは関係なくその場で生命活動を再開する。  

 通常、『ヒール』では癒せない傷も、強制的に癒し、何事もなかったかのように生命活動を開始するチートアビリティ。  

 たとえ、体を真っ二つにされようが――  
 全身を真っ黒に焼かれようが――  
 水の中に沈められようが――  

 俺には関係ない。  

 俺のライフがゼロと判定された瞬間、このアビリティは発動する。

 良く言えば、俺はどれだけ攻撃を受けようと、死なない。  
 悪く言えば、どれだけ死にたくても、死ぬことさえ許されない。  

 人によって感じ方は違うだろう。  

 「死なないなんて最高だ!」と思う者もいれば、  
 「死ねないなんて最悪だ!」と思う者もいるだろう。  

 ……俺は当然、後者だった。  

 このアビリティを、その身をもって体感すれば――  
 誰もが、きっと俺と同じ答えに行き着くはずだ。

だが、今回ばかりは感謝しよう。  

「じゃあ、続けようか……道化エーシル」  

『……フィー、辞めましょう』  

「なに?」  

『あなたは死なない、私も死なない。こんな無駄な争いは辞めましょう。心が痛むだけです』  

「……それはお前が死んでから考えてやる」  

『…………やはり今回もそうきますか」

(今回も……?)

『では心を折るまでデスネェッ!!』  

 エーシルはにたりと笑い、指を振る。  

『セレクション。デス!』  

「うっ……!?」  

 突然、体が重くなる。  

 いや、違う。  

 呼吸が、できない!?

(これは俺の「『 消失する回復魔法ヴァニシングヒール』」ッ!?なんでこいつが俺の!?)

『命を扱えるのはあなただけではないんですよネェ!この世界の管理者である私はなんでもできる……フハハハハハハッ!!』  

 喉から血が溢れる。  

 視界が真っ暗になる。  

 ……だが――。  

 次の瞬間、俺は立ち上がっていた。  

『……やはり立ち上がりますか。心が痛みますが仕方ない。さぁ、いつまで耐えられますかね?』  

「……はっ……望むところだぜ」  

『セレクション。デス』  
『セレクション。デス』  
『セレクション。デス……』  

……
…………
………………

 倒れては復活し、倒れては復活する――。  

 この光景に耐えられなくなったのか、ルクスとエルザが俺の前に出た。  

「……やめろ……俺はまだ負けてない。俺の後ろにいろ、俺は死なない。大丈夫だ」  

 自分でも何を言っているのか分からない。意識が朦朧とする。視界が明るくなっては暗くなるの繰り返し。  

 だがそれでも、コイツらを戦わせるわけにはいかないという事だけは分かる。  
 それだけは……。

 もちろん、ルクスとエルザは納得のいかない様子だったが――。  

『……賢明な判断ですネェ。これはもう人間・・の出る幕では無いのです……これは世界の運命の戦い。大丈夫、フィーを大人しくさせた後、あなた達もきちんと殺して差し上げます。……そうすれば私はきっと彼女を救える……』  

二チャーと笑う道化エーシル。  

「……そうは……させない……」  

 『そう来ると思っていました。では、再開しますよフィー』  

「俺もやられっぱなしは嫌なんでね。ここからは反撃させてもらう」  

『……どうぞお好きに』  

 攻撃が効かないわけではない。  
 反射魔法を唱える前に、先手を取れれば――  

「デス――」  

『――反射魔法リフレクション』  

 くそ……ダメだ。  

 俺が唱え終わるのと同時に、いや、まるで俺がこれから何を唱えるのを分かっているかのように、やつは必ず詠唱してくる。  

(クソ……不気味な野郎だ。未来でも見えてんのかこいつ)

せめてやつの気を逸らすことができれば――  

 だが、この戦いでルクスとエルザを前に出すわけにはいかない。  

 ならば、どうする――!?  

『――水よ』  

「……なに……!?」  

 聞き慣れた透き通った声。  

 そして、突如として現れた水の牢獄。  

 そこに――道化エーシルは囚われていた。  

(……この声はアイリス!?)  

「アイリス!?無事だったか!」  

『はい……遅れてすみません、アスフィーさん……しかし、あなたの考えは分かりました。今が好機です』  

 流石だ、アイリス――!  

 水の中では魔法を唱えることはできない。  

 ならば――これで、終わりだ。  

「『死を呼ぶ回復魔法デスヒール』ッ!!」  

『あゔぁ…………!?』  

 水中の牢獄で、力なく浮かぶエーシル。  

 その姿は、誰が見ても――"死"だった。  

『ふぅ……やりましたね、アスフィーさん』  

「…………ああ」  

 ……だが、本当に終わったのか?  

 何かが――引っかかる。 なんだこの違和感は。 
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