Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第六章 《第一部》ヒーラー 絶望と反撃の覚醒篇

「Healer Who Fell Into Slumber」

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俺が唱えた瞬間、世界の流れが変わった。

 空気が粘つくように重くなり、周囲の動きがゆっくりになっていく。
 エーシルの腕の動き、風に揺れるルクスの髪、エルザの驚いた表情――
 全てがスローモーションになったかのように見えた。

 ――これが、時間回復魔法タイム・ヒール

 これは俺がある一定時間で使用した時間を瞬時に回復し、
 俺の時間感覚を狂わせる魔法――。

 相手の動きを遅くするのではなく、俺自身が加速する。
 相手の一挙手一投足が、まるで静止画のように見える。

 ――だが、この魔法には代償がある。

 ある一定の時間を一瞬のうちに回復することにより、
 脳内に大量の情報が瞬時に流れ込んでくる。

 それは”ダメージ”として蓄積され、
 頭に激しい痛みを引き起こす。

今までの情報……ルクスの死亡、瀕死のエルザ……どこまでの情報を回復するのかは俺自身も分からない。故に俺も恐怖する。痛みではなく、

 痛みに耐えながら、俺はエーシルに向かって叫ぶ。

「――『死を呼ぶ回復魔法デスヒール』ッ!!!!」

『……!!?』

 エーシルの目が、わずかに見開かれる。

 だが遅い――!

 俺の魔法が、エーシルに直撃する。

 エーシルの体がびくりと震え、
 口から泡を吹きながら、その場に倒れ込んだ。

 そして――俺の視界が歪んだ。

 と、同時に。

 俺の脳内に、膨大な情報量が流れ込む。

「がああああああああああああああああああああああああっ!!!」

レイラの死亡からルクスの死亡に至るまで。その情報が一気に流れ込んでくる。

今まで感じたことのない痛み、悲しみ、後悔。

全ての情報……記憶がダメージとなり俺に反動が起きる。

 視界が白く染まる。
 全身を駆け巡る痛み。
 頭の奥が焼けるように熱くなり、何かが弾ける音がした。

 今までの記憶が、奔流のように脳内を駆け巡る。

 ――血に塗れた戦場。

 ――死にゆく仲間たちの悲鳴。

 ――母さんの涙。

 ――マキナの笑顔。

 ――絶望。苦痛。後悔。怒り。

 全ての負の記憶が、“痛み”として襲いかかる。

「……はっ! アスフィっ!?」

 エルザの声が聞こえた。

 俺は膝をつき、全身が痙攣するのを感じながら、
 必死に意識を繋ぎ止めようとする。

「……一体なにが……アスフィ! どうしたのですか!?」

 ルクスの声が震えている。
 だが、俺の意識は次第に遠のいていく。

(……終わったのか……?)

 俺の頭の中で、最後の思考がこだました。

 ――エーシルは、倒れた。

 これで、終わった……はずだ。

 だが、胸騒ぎがする。

 ――“本当にこれで終わりなのか?”

 どこかでそんな声がする。

(……いや、もう……いい……)

 意識が沈んでいく。

 ああ……眠い……。

 このまま、少しだけ……眠らせてくれ……。

 アスフィ・シーネットは、深い眠りについた。
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