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前編
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煌びやかな大広間の中央で踊るのは、この国の国王と、側妃のエレノア様。会場中の貴族に注目されて、ファーストダンスを披露している。
チラチラと、貴族たちの目線が、けばけばしいドレスを着て壇上に一人残された王妃の私に移る。その目には、同情と嘲けり。
曰く、家の力で無理矢理に王子と婚約した公爵令嬢。
曰く、王子が学園で出会った運命の女性エレノアを虐めた悪虐な令嬢。
曰く、王子の即位と共に婚姻するが一度も相手にされないお飾りの王妃。
曰く、一年後にエレノアが側妃として登城したら離宮に追いやられた憐れな王妃。
曰く、離宮では使用人と同じ食事を与えられ、庭で百姓の真似事をしている惨めな王妃。
「まあ、いいんだけどね」
ダンスが終わり、全員の目が国王に集まっている間に私は魔法で自分の部屋に転移した。
翌日の昼下がり、擦り切れたワンピースにエプロンという農業ファッションで日課の畑への水撒きをしていると、国王とエレノア様が護衛騎士に囲まれてやって来た。
珍しい。珍し過ぎて、私は天下の国王と側妃を台所の粗末なスツールに座らせるしか無かった。
「来るなら先触れを寄越してください。どうせここにはお客なんて来ないから、客間の家具には布を被せてるんですよ。今使える部屋は、台所と寝室だけです」
「なんだそれは。離宮が狭いという嫌味か」
「いいえ? 立って半畳、寝て一畳! 私には十分過ぎます」
私は、沸かしたお湯を三つの湯呑みに注ぎ、二つの湯呑みにスプーンを付けて護衛騎士に毒見をしてもらう。
無事お二人の前に置かれた湯呑みに、お二人は面食らっている。
「これは…お湯か?」
「東の国では白湯と言います。身体を温める事で、デトックス…体内の悪い物を押し出す効果があります。昼食の後に紅茶はお飲みでしょう? 紅茶はあまり飲むと利尿作用でお腹が緩くなりますよ。と、言っても王宮の料理は脂っこいから、食後に飲みたくなりますよね。料理長が腕を振るいたいのは分かるから、文句も言えなくて…。本当、エレノア様が城に来てくれて助かりました。陛下、お腹周りが太くなってません? エレノア様、吹き出物が出てません?」
言葉に詰まるお二人。やっぱりね。野菜も食わんと。
「で、ご用件は?」
唖然としていた陛下が、
「お前はそういう性格だったか…?」
と言う。
「ずっとこういう性格ですよ。婚約してから話した事無かったので知らないだけです。それなのに何故か、私がエレノア様にした虐めについては私以上に詳しかったですね。エレノア様知ってます? 陛下って、婚約が決まった時、五歳の私に『お前は家の力で婚約したんだ!』って言ったんですよ。馬鹿かこいつはって思いましたよ」
「五歳…?」
「はい、婚約したのは五歳でした。会った事も無い男と結婚するために家の力を使ったとしたら、末恐ろしい五歳児ですね!」
「それはいいから! 王妃よ。お前にクーデターの疑いがある」
「くぅでたぁ…? ああ、クーデター! なるほど! 王妃がクーデター起こした事にして処刑するんですね!」
「お前は私をどういう男だと思ってるんだ…」
「五歳児を脅して婚約破棄しようとして、学園でエレノア様を虐めた事にして婚約破棄しようとして、上手く行かなかった男?」
「……」
「なるほど、クーデターとは考えましたね! 少し見直しました!」
「お前は処刑されたいのか…?」
「あ、すみません! 『処刑しようとして上手く行かなかった男』を付けて考えてました」
「付けるな!」
チラチラと、貴族たちの目線が、けばけばしいドレスを着て壇上に一人残された王妃の私に移る。その目には、同情と嘲けり。
曰く、家の力で無理矢理に王子と婚約した公爵令嬢。
曰く、王子が学園で出会った運命の女性エレノアを虐めた悪虐な令嬢。
曰く、王子の即位と共に婚姻するが一度も相手にされないお飾りの王妃。
曰く、一年後にエレノアが側妃として登城したら離宮に追いやられた憐れな王妃。
曰く、離宮では使用人と同じ食事を与えられ、庭で百姓の真似事をしている惨めな王妃。
「まあ、いいんだけどね」
ダンスが終わり、全員の目が国王に集まっている間に私は魔法で自分の部屋に転移した。
翌日の昼下がり、擦り切れたワンピースにエプロンという農業ファッションで日課の畑への水撒きをしていると、国王とエレノア様が護衛騎士に囲まれてやって来た。
珍しい。珍し過ぎて、私は天下の国王と側妃を台所の粗末なスツールに座らせるしか無かった。
「来るなら先触れを寄越してください。どうせここにはお客なんて来ないから、客間の家具には布を被せてるんですよ。今使える部屋は、台所と寝室だけです」
「なんだそれは。離宮が狭いという嫌味か」
「いいえ? 立って半畳、寝て一畳! 私には十分過ぎます」
私は、沸かしたお湯を三つの湯呑みに注ぎ、二つの湯呑みにスプーンを付けて護衛騎士に毒見をしてもらう。
無事お二人の前に置かれた湯呑みに、お二人は面食らっている。
「これは…お湯か?」
「東の国では白湯と言います。身体を温める事で、デトックス…体内の悪い物を押し出す効果があります。昼食の後に紅茶はお飲みでしょう? 紅茶はあまり飲むと利尿作用でお腹が緩くなりますよ。と、言っても王宮の料理は脂っこいから、食後に飲みたくなりますよね。料理長が腕を振るいたいのは分かるから、文句も言えなくて…。本当、エレノア様が城に来てくれて助かりました。陛下、お腹周りが太くなってません? エレノア様、吹き出物が出てません?」
言葉に詰まるお二人。やっぱりね。野菜も食わんと。
「で、ご用件は?」
唖然としていた陛下が、
「お前はそういう性格だったか…?」
と言う。
「ずっとこういう性格ですよ。婚約してから話した事無かったので知らないだけです。それなのに何故か、私がエレノア様にした虐めについては私以上に詳しかったですね。エレノア様知ってます? 陛下って、婚約が決まった時、五歳の私に『お前は家の力で婚約したんだ!』って言ったんですよ。馬鹿かこいつはって思いましたよ」
「五歳…?」
「はい、婚約したのは五歳でした。会った事も無い男と結婚するために家の力を使ったとしたら、末恐ろしい五歳児ですね!」
「それはいいから! 王妃よ。お前にクーデターの疑いがある」
「くぅでたぁ…? ああ、クーデター! なるほど! 王妃がクーデター起こした事にして処刑するんですね!」
「お前は私をどういう男だと思ってるんだ…」
「五歳児を脅して婚約破棄しようとして、学園でエレノア様を虐めた事にして婚約破棄しようとして、上手く行かなかった男?」
「……」
「なるほど、クーデターとは考えましたね! 少し見直しました!」
「お前は処刑されたいのか…?」
「あ、すみません! 『処刑しようとして上手く行かなかった男』を付けて考えてました」
「付けるな!」
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