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後編
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「えっと、ところで何で私がクーデターを起こさないといけないんですか?」
「そりゃあ、私の寵愛がエレノアだけに注がれているからだろう」
「それなら、クーデター起こして国王とエレノア様を殺したら意味無いですよね。てか、寵愛超いらないし。エレノア様がいなくなったら王妃の仕事を私がやらないといけなくなるし。私が許すから首謀者をそっちで捕まえてください」
「お前の許可は要らん」
「あの、王妃様は私が目障りじゃないのですか…?」
「いいえ全然? むしろ助かってます。てか、エレノア様がいるから陛下と結婚したようなものです」
「それっていったい…」
「ほら、私の父って“娘は政略結婚の駒”って人じゃないですか。今だって、“王妃の生家”という事で優遇されてる事に満足して、娘がこんな状態でも放って置いてるし」
「ああ…」
「だから、もし陛下に婚約破棄されたらどんなヒヒジジイと結婚させられるか分かんないと思ったんですよ。なら、陛下で我慢しておこうかと。きっと溺愛するエレノア様を側妃にして、私には王妃の仕事なんてさせないだろうしって」
「「陛下で我慢…」」
「はい。なのでクーデターが起きたらかなり困ります!」
力説する私とは反対に遠い目になってる二人。
「で、首謀者は誰なんですか?」
「お前だ」
「何で本人が知らないうちに首謀者になってるんです?!」
「それを聞きに来たんだ! お前、平民たちに何をした?」
「平民?」
「平民たちがお前のためにクーデターを起こすという情報が入ったんだ」
「あ……」
「心当たりがあるんだな」
「あると言うか…、取り敢えず衣装室に来てください」
全員で移動して、衣装室のドアを開ける。
「何だこれは…!」
部屋を埋める数十体のトルソーは、昨日のドレスを纏った一体以外はすべて裸。
「お前のドレスはどこへいったんだ!」
「全部売っちゃいました。てへ」
「ドレス無しでどうやって過ごすつもりだ」
「ドレスなんて無くて困りませんよ。国王に冷遇されてる私をお茶会や夜会に招こうなんて勇者はいませんし、昨日みたいな出席義務のある夜会ではエレノア様のついでに新しいドレスが作られますし。それに、全然趣味じゃない下品なドレスが部屋を埋めてるのって、ときめかないんですよ。これは売るしか無いなって」
「趣味じゃない…」
「はい。あくまでエレノア様を引き立てるためのドレスですから」
気付いて無かったんかい。仕立て屋だって忖度するわ。
ときめかない物は処分すべし。
敬愛するときめきの片づけコンサルタント近藤麻理恵様の「こんまりメソッド」に従った私は、ドレスから宝石やレースを外してドレスと宝石と小物の店に持ち込んで売り、そのお金でパンや野菜をたくさん購入し、貧民街の子供たちに賃金を支払って、それぞれ孤児院や救護院に届けてもらった。
内心子供たちがネコババしても仕方ないと思っていたのだが、先にお金をもらって仕事を任せてもらえた子供たちは真面目に届け、届け先からもお礼を言われて嬉しかったらしい。
それからは、私が街に降りると目ざとく見つけ
「あの孤児院では鍋が壊れてたよ」
「あの救護院では高熱が出る風邪が流行ってる」
「あの孤児院は履く物が無くて皆裸足なんだ」
と、情報をくれ、それに合わせて私が必要な物を購入するようになった。
そのうち、街の人も子供たちを信用して使い走りを頼むようになったらしい
「で、私が王妃という事は街の人にバレバレなんですわ」
一応私を『奥様』と呼んでるけど、『王妃様』と言いかけて誤魔化す事がたびたび。
「なぜバレるのだ。わざとか」
「あのですね、昨日のドレスの袖口に付いてるこのレース。この部分だけで平民の家族が一年間食べられるんですよ。そんなレベルのドレスを何十着も仕立てる事ができる女性がこの国に何人いると思うんです」
「なるほど…」
「悪辣なはずの王妃が実はそうじゃなかった。じゃあ、誰がそんな酷いことを言ってるんだ、となりますよねぇ。そして国王の横にはいつも着飾った側妃様が。そこらへんがクーデターの起因じゃないでしょうか」
「何て事だ…」
陛下は考え込んでしまった。
自分の流した嘘の噂のせいでクーデターが起きそうな王様。他人事ながら笑えるな。ぷぷっ。
「仕方ない。これからは公式行事にはお前を…」
えっ嫌だ! 面倒臭い!
「それじゃあ根本的な解決になりませんよ! いかにエレノア様が心優しく美しいかを皆に知ってもらわないと!」
「王妃様…」
「とりあえずこれからは国民の前に出るドレスは落ち着いた色にしましょう。だからと言って地味じゃなく気品のある物で、ちょっと憧れられる路線で。宝石は控えて一点だけにするとか」
「そうですね。色々考えてみます」
「頑張って!」
国王御一行様をにこやかに送り出して、私の脳はフル回転した。まずいまずい、「反王家」の旗頭になんてされたらクーデターが成功しても失敗しても碌な事にならない。
公爵令嬢に転生して喜んだのもつかの間、父親は最悪だし、婚約者も最悪。
前世では派遣切りに怯える派遣社員だったので、「王妃なら安定した国家公務員!」と思ったのに全然安定してないじゃないー!
もーやだ、この国全然ときめかない。いっそ国ごと捨てちゃおうか。
いきなり王妃が姿を消した事は、皆に国王が手を下したという疑惑を生んだ。調査のために離宮を訪れた騎士たちは王妃とは思えないつつましい生活に驚愕し、その話は平民に広まり、国王への怒りでクーデターが勃発した。
国王と実家の公爵家はどこかへ亡命したそうだ。
と、いう事を私は隣の国で聞いた。
陛下、私が婚約者に選ばれたのは私が五歳で転移魔法をマスターした魔力持ちだからだってこと、すっかり忘れてるんですね…。
「そりゃあ、私の寵愛がエレノアだけに注がれているからだろう」
「それなら、クーデター起こして国王とエレノア様を殺したら意味無いですよね。てか、寵愛超いらないし。エレノア様がいなくなったら王妃の仕事を私がやらないといけなくなるし。私が許すから首謀者をそっちで捕まえてください」
「お前の許可は要らん」
「あの、王妃様は私が目障りじゃないのですか…?」
「いいえ全然? むしろ助かってます。てか、エレノア様がいるから陛下と結婚したようなものです」
「それっていったい…」
「ほら、私の父って“娘は政略結婚の駒”って人じゃないですか。今だって、“王妃の生家”という事で優遇されてる事に満足して、娘がこんな状態でも放って置いてるし」
「ああ…」
「だから、もし陛下に婚約破棄されたらどんなヒヒジジイと結婚させられるか分かんないと思ったんですよ。なら、陛下で我慢しておこうかと。きっと溺愛するエレノア様を側妃にして、私には王妃の仕事なんてさせないだろうしって」
「「陛下で我慢…」」
「はい。なのでクーデターが起きたらかなり困ります!」
力説する私とは反対に遠い目になってる二人。
「で、首謀者は誰なんですか?」
「お前だ」
「何で本人が知らないうちに首謀者になってるんです?!」
「それを聞きに来たんだ! お前、平民たちに何をした?」
「平民?」
「平民たちがお前のためにクーデターを起こすという情報が入ったんだ」
「あ……」
「心当たりがあるんだな」
「あると言うか…、取り敢えず衣装室に来てください」
全員で移動して、衣装室のドアを開ける。
「何だこれは…!」
部屋を埋める数十体のトルソーは、昨日のドレスを纏った一体以外はすべて裸。
「お前のドレスはどこへいったんだ!」
「全部売っちゃいました。てへ」
「ドレス無しでどうやって過ごすつもりだ」
「ドレスなんて無くて困りませんよ。国王に冷遇されてる私をお茶会や夜会に招こうなんて勇者はいませんし、昨日みたいな出席義務のある夜会ではエレノア様のついでに新しいドレスが作られますし。それに、全然趣味じゃない下品なドレスが部屋を埋めてるのって、ときめかないんですよ。これは売るしか無いなって」
「趣味じゃない…」
「はい。あくまでエレノア様を引き立てるためのドレスですから」
気付いて無かったんかい。仕立て屋だって忖度するわ。
ときめかない物は処分すべし。
敬愛するときめきの片づけコンサルタント近藤麻理恵様の「こんまりメソッド」に従った私は、ドレスから宝石やレースを外してドレスと宝石と小物の店に持ち込んで売り、そのお金でパンや野菜をたくさん購入し、貧民街の子供たちに賃金を支払って、それぞれ孤児院や救護院に届けてもらった。
内心子供たちがネコババしても仕方ないと思っていたのだが、先にお金をもらって仕事を任せてもらえた子供たちは真面目に届け、届け先からもお礼を言われて嬉しかったらしい。
それからは、私が街に降りると目ざとく見つけ
「あの孤児院では鍋が壊れてたよ」
「あの救護院では高熱が出る風邪が流行ってる」
「あの孤児院は履く物が無くて皆裸足なんだ」
と、情報をくれ、それに合わせて私が必要な物を購入するようになった。
そのうち、街の人も子供たちを信用して使い走りを頼むようになったらしい
「で、私が王妃という事は街の人にバレバレなんですわ」
一応私を『奥様』と呼んでるけど、『王妃様』と言いかけて誤魔化す事がたびたび。
「なぜバレるのだ。わざとか」
「あのですね、昨日のドレスの袖口に付いてるこのレース。この部分だけで平民の家族が一年間食べられるんですよ。そんなレベルのドレスを何十着も仕立てる事ができる女性がこの国に何人いると思うんです」
「なるほど…」
「悪辣なはずの王妃が実はそうじゃなかった。じゃあ、誰がそんな酷いことを言ってるんだ、となりますよねぇ。そして国王の横にはいつも着飾った側妃様が。そこらへんがクーデターの起因じゃないでしょうか」
「何て事だ…」
陛下は考え込んでしまった。
自分の流した嘘の噂のせいでクーデターが起きそうな王様。他人事ながら笑えるな。ぷぷっ。
「仕方ない。これからは公式行事にはお前を…」
えっ嫌だ! 面倒臭い!
「それじゃあ根本的な解決になりませんよ! いかにエレノア様が心優しく美しいかを皆に知ってもらわないと!」
「王妃様…」
「とりあえずこれからは国民の前に出るドレスは落ち着いた色にしましょう。だからと言って地味じゃなく気品のある物で、ちょっと憧れられる路線で。宝石は控えて一点だけにするとか」
「そうですね。色々考えてみます」
「頑張って!」
国王御一行様をにこやかに送り出して、私の脳はフル回転した。まずいまずい、「反王家」の旗頭になんてされたらクーデターが成功しても失敗しても碌な事にならない。
公爵令嬢に転生して喜んだのもつかの間、父親は最悪だし、婚約者も最悪。
前世では派遣切りに怯える派遣社員だったので、「王妃なら安定した国家公務員!」と思ったのに全然安定してないじゃないー!
もーやだ、この国全然ときめかない。いっそ国ごと捨てちゃおうか。
いきなり王妃が姿を消した事は、皆に国王が手を下したという疑惑を生んだ。調査のために離宮を訪れた騎士たちは王妃とは思えないつつましい生活に驚愕し、その話は平民に広まり、国王への怒りでクーデターが勃発した。
国王と実家の公爵家はどこかへ亡命したそうだ。
と、いう事を私は隣の国で聞いた。
陛下、私が婚約者に選ばれたのは私が五歳で転移魔法をマスターした魔力持ちだからだってこと、すっかり忘れてるんですね…。
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