愛するあなたの幸せを

あんど もあ

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愛するあなたの幸せを

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「私はギルバート様を愛しておりますの。なので、ギルバート様がお幸せなら私も幸せですわ」

 鼻高々なギルバート第一王子。
 王と王妃は密かにため息をついた。

 アレクサンドラという公爵令嬢の婚約者がありながら王立学園で出会ったコルメ男爵令嬢とギルバートが親密な関係になった事は、既に皆の知るところだった。
 さすがに目に余ると王がギルバートに注意しようとアレクサンドラとギルバートを呼び出したのだが、アレクサンドラの発言は予想外なものだった。

 調子に乗るギルバート。

「私は、学園ではいつもリリアナと会っていたいんだ」
「どうぞ私の事などお構いなく」

「出来ればリリアナと結婚したい」
「愛していれば当然ですわね」

「しかし、男爵令嬢として育ったリリアナには王子妃としての仕事は出来ない」
「まあ、そうですの?」

「君は今まで王子妃となるための教育を受けてきた」
「ありがたい事です」

「だから、君に側妃になってもらい、仕事をして欲しいんだ。もちろん、君から条件があるならできるだけ対処する」
「私が………?」

 公爵令嬢に男爵令嬢の下で働けと言うのはさすがに無理だったか、と皆が思ったが
「コルメ男爵令嬢はそれを了承してくださるでしょうか……」
と、心配したのはリリアナの事だった。

「きっと、喜んで了承するよ! 君は私のために何も考えずに働いてくれればいいんだ!」
「まあ、ギルバート様の事だけを考えればいいのですね」
 嬉しそうなアレクサンドラに、満足そうなギルバート。


 自分の息子のクズさにたまらず、王妃が聞いた。
「アレクサンドラは、そんな一生でいいの?」
「一生……? 『一生愛する』なんて言ってませんわ」

 きょとんと答えるアレクサンドラに皆の視線が集まる。

「今はギルバート様を愛してますから、愛するギルバート様の希望は何でも叶えて差し上げたいと思っていますの。でも、いつまで愛しているかは分かりませんわ。ギルバート様だって心変わりしましたでしょう?」

 ギルバートの大きく開いた口が塞がらない。

「私の条件を聞いてくださるのなら、愛が冷めたら離縁させてくださいまし。あら、離縁だとギルバート様の外聞が悪いですわね。私にも愛する人を愛妾にする権利がいいかしら。やだ、側妃になる前に愛が冷めるかもしれませんのに気が早いですわね」

 ギルバートの顔色がどんどん悪くなっていく。

「それよりもまず、コルメ男爵令嬢と婚姻するために私と婚約解消しないとですわね。ギルバート様のお幸せのためなら、今すぐに手続きいたしますわ」

 ギルバートが口を開く前に王妃が言う。
「おめでとうギルバート。アレクサンドラはあなたの幸せのために身を引いてくれたわ」
 あなたの幸せのために、と圧を込めて言われると言い返す言葉が無い。
「どうぞコルメ男爵令嬢と結婚しなさい」
 出来るものなら、という冷たい笑みを浮かべて。


「ギルバート様、どうぞお幸せに」
 アレクサンドラの心からの祝福は、もうギルバートには聞こえなかった。
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