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「待ってくれ」
顔色を無くした人たちを庇うように王太子が進み出た。
「王太子として、責任をもってこの国を危険に晒した者たちを調べて厳しく処分をするので許してくれないか」
おっ、「自分の邪魔をする奴」を「国を危険に晒した奴」という事にして処分する気だな。さすが腹黒王太子。
内心ニヤリとしつつ、それで手を打とうとしたら
「そんなんで許しません!」
と、パーちゃんの声が響き渡った。
俺と王太子が唖然とするなか、
「ラルフ様を『こんなの』だなんて、そんな事を言う国には魔導マッチ一本売りません!」
と、パーちゃんが断言した。
オッサンたちの悲鳴が聞こえる。
「お、おいラルフ……」
パーちゃんか俺のためた怒ってくれてる……! 俺、便利グッズじゃなかったんだ。目の前が輝いて見える。
「ラルフ! パトリシア嬢を何とか」
「そうだね! こんな国、どうなってもいいか!」
上機嫌な俺に王太子は頭を抱えた。
じゃあさっさと帰ろうとする俺たちの前に、息を切らしたグレイシア嬢が現れた。グレイシア嬢もいたのか。
「パッ、パトリシアッ……!」
息が切れて言葉が続かない。
突然現れた令嬢に、観客たちが「誰?」となっているので、王太子が
「私の婚約者のグレイシア・オーズ公爵令嬢だ」
と宣言して会場はまた別な盛り上がりとなる。
その間に息を整えたグレイシア嬢が、パーちゃんに囁いた。
「パトリシア。『こんなの』でいいのよ。もし、ラルフ様が素敵な方だって皆に知られて、ラルフ様に思いを寄せる令嬢が現れたら、あなた勝てるの?」
「……!」
ショックを受けるパーちゃん。いや、俺はパーちゃん一筋だし。
「もし、お胸の大きな令嬢がラルフ様を好きになったら……」
パーちゃんのお胸はささやかだ。しかし別に牛乳を搾るんじゃないから、大きさなんてどうでも……って、パーちゃん気にしてた?
「もし、お菓子作りの得意な令嬢がラルフ様を……」
パーちゃんは早くお菓子を作って研究に戻りたいので、ざっとかき混ぜて強火で焼くため、出来上がるのは素材の味が生きてる消し炭だ。おかげで、他の人は手を出さないから独り占めできていいけど。
「もし、刺繍の上手な令嬢が……」
パーちゃんはさっさと刺繍を終わらせて研究したいので、ザックザックと刺すため、抽象画のような刺繍が出来上がる。まあ、額装するから問題ない。
「奪われないように、『こんなの』と思わせておいて丁度いいのよ」
こくこくと頷くパーちゃん。
そっか、パーちゃんは気にしてたんだ。便利グッズでもお世話係でも無く、俺たちちゃんと恋人同士だったのか。嬉しさでニヤニヤしてしまいそうた。
心配そうにこちらを伺っている人たちには、話してる内容がこんなくっだらない事で申し訳ない。
グレイシア嬢は皆に向かって声を張り上げた。
「皆さん! パトリシアは婚約者を侮辱した第三王子のみを処罰すれば、国への対処は考えないそうですわ!」
わあっと歓声が上がるが、パーちゃんは別に第三王子にも処罰を求めて無いぞ……。
腹黒な夫婦が生まれそうだ。まあ、王族はそれくらいの方がいいのか?
とにかく、卒業パーティーは無事に終わり、俺たちは帰国の途についた。
めでたく俺たちが結婚した頃、驚いたことにブライト博士が王立高等学院を退職して辺境にやってきて隠居した。「あんな馬鹿どもに教えるだけ時間の無駄だ」だそうだ。
そんなブライト博士を追いかけて国内外から弟子入り希望の研究者がやって来たため、博士は小さな私塾を始めたが、生活が苦しくて食費を削っている弟子が多いと博士が父の辺境伯に相談した事から、領の仕事を手伝う代わりに寮と食事を提供する制度が作られた。
それを聞いて次々と移住を希望する博士が現れ、「把握しきれないから、誰か系統立てて管理しろ!」となったため今まで脳筋だらけの辺境で肩身が狭かった知能派がやる気を出して、発明が実用化された場合はこの領に何パーセントか入るシステムを作って、ますます充実した環境になって、更に人が増える。
辺境に来て魔獣に興味を持った研究者もいて、「このまま研究が進めば、遠からず魔の森を消滅させることができます!」と、パーちゃんはやる気だ。
そんなこんなで、俺が辺境伯を継ぐ頃には領都は学術都市と呼ばれる街となっていた。
何でこうなった。
パーちゃんは「リシャール様が婚約破棄してくださったおかげですね!」と言ってるが、それだけは絶対に認めないぞ。
顔色を無くした人たちを庇うように王太子が進み出た。
「王太子として、責任をもってこの国を危険に晒した者たちを調べて厳しく処分をするので許してくれないか」
おっ、「自分の邪魔をする奴」を「国を危険に晒した奴」という事にして処分する気だな。さすが腹黒王太子。
内心ニヤリとしつつ、それで手を打とうとしたら
「そんなんで許しません!」
と、パーちゃんの声が響き渡った。
俺と王太子が唖然とするなか、
「ラルフ様を『こんなの』だなんて、そんな事を言う国には魔導マッチ一本売りません!」
と、パーちゃんが断言した。
オッサンたちの悲鳴が聞こえる。
「お、おいラルフ……」
パーちゃんか俺のためた怒ってくれてる……! 俺、便利グッズじゃなかったんだ。目の前が輝いて見える。
「ラルフ! パトリシア嬢を何とか」
「そうだね! こんな国、どうなってもいいか!」
上機嫌な俺に王太子は頭を抱えた。
じゃあさっさと帰ろうとする俺たちの前に、息を切らしたグレイシア嬢が現れた。グレイシア嬢もいたのか。
「パッ、パトリシアッ……!」
息が切れて言葉が続かない。
突然現れた令嬢に、観客たちが「誰?」となっているので、王太子が
「私の婚約者のグレイシア・オーズ公爵令嬢だ」
と宣言して会場はまた別な盛り上がりとなる。
その間に息を整えたグレイシア嬢が、パーちゃんに囁いた。
「パトリシア。『こんなの』でいいのよ。もし、ラルフ様が素敵な方だって皆に知られて、ラルフ様に思いを寄せる令嬢が現れたら、あなた勝てるの?」
「……!」
ショックを受けるパーちゃん。いや、俺はパーちゃん一筋だし。
「もし、お胸の大きな令嬢がラルフ様を好きになったら……」
パーちゃんのお胸はささやかだ。しかし別に牛乳を搾るんじゃないから、大きさなんてどうでも……って、パーちゃん気にしてた?
「もし、お菓子作りの得意な令嬢がラルフ様を……」
パーちゃんは早くお菓子を作って研究に戻りたいので、ざっとかき混ぜて強火で焼くため、出来上がるのは素材の味が生きてる消し炭だ。おかげで、他の人は手を出さないから独り占めできていいけど。
「もし、刺繍の上手な令嬢が……」
パーちゃんはさっさと刺繍を終わらせて研究したいので、ザックザックと刺すため、抽象画のような刺繍が出来上がる。まあ、額装するから問題ない。
「奪われないように、『こんなの』と思わせておいて丁度いいのよ」
こくこくと頷くパーちゃん。
そっか、パーちゃんは気にしてたんだ。便利グッズでもお世話係でも無く、俺たちちゃんと恋人同士だったのか。嬉しさでニヤニヤしてしまいそうた。
心配そうにこちらを伺っている人たちには、話してる内容がこんなくっだらない事で申し訳ない。
グレイシア嬢は皆に向かって声を張り上げた。
「皆さん! パトリシアは婚約者を侮辱した第三王子のみを処罰すれば、国への対処は考えないそうですわ!」
わあっと歓声が上がるが、パーちゃんは別に第三王子にも処罰を求めて無いぞ……。
腹黒な夫婦が生まれそうだ。まあ、王族はそれくらいの方がいいのか?
とにかく、卒業パーティーは無事に終わり、俺たちは帰国の途についた。
めでたく俺たちが結婚した頃、驚いたことにブライト博士が王立高等学院を退職して辺境にやってきて隠居した。「あんな馬鹿どもに教えるだけ時間の無駄だ」だそうだ。
そんなブライト博士を追いかけて国内外から弟子入り希望の研究者がやって来たため、博士は小さな私塾を始めたが、生活が苦しくて食費を削っている弟子が多いと博士が父の辺境伯に相談した事から、領の仕事を手伝う代わりに寮と食事を提供する制度が作られた。
それを聞いて次々と移住を希望する博士が現れ、「把握しきれないから、誰か系統立てて管理しろ!」となったため今まで脳筋だらけの辺境で肩身が狭かった知能派がやる気を出して、発明が実用化された場合はこの領に何パーセントか入るシステムを作って、ますます充実した環境になって、更に人が増える。
辺境に来て魔獣に興味を持った研究者もいて、「このまま研究が進めば、遠からず魔の森を消滅させることができます!」と、パーちゃんはやる気だ。
そんなこんなで、俺が辺境伯を継ぐ頃には領都は学術都市と呼ばれる街となっていた。
何でこうなった。
パーちゃんは「リシャール様が婚約破棄してくださったおかげですね!」と言ってるが、それだけは絶対に認めないぞ。
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