1 / 1
婚約破棄をご一緒に!
しおりを挟む
「ローザ・アルストロメリア公爵令嬢! 貴様とはこれで婚約破棄だ!」
王立学園の卒業パーティに、ムスク第三王子の声が響き渡った。
声の主を見ると、礼装に身を包んだ美しい金髪の王子が、長い黒髪の女性と対峙している。王子の右腕には、ふわふわなピンクブロンドの髪の女の子が絡みついていた。
「とりあえず、婚約破棄の理由をお聞きしますわ」
表情を変えないローザに反して、ムスクは鼻息も荒く
「お前がこのビオラ・デンドロビューム男爵令嬢をいじめたからだ!」
と、言い切る。怖そうにムスクの後ろに隠れるビオラ。
「そんな事してませんが…。まあ、やったとして、それの何が問題なのです? たかが男爵令嬢ごとき、コバエを叩き潰すようなもの」
「ふざけるな! お前が叩き潰すと言うなら、私は私の力をもってビオラを、いや国民全てを守る!」
「ムスクさまぁ~ステキ!」
盛り上がる二人。
それを見て、ローザがにっこりと笑う。
「言いましたわね。…口癖の『国民全て』を」
ローザはムスクの左後ろでこの騒動を見ている少女に目を止める。少女も目が合ったことに気付くと、ローザは声を張り上げた。「わたくしは、アネモネ・エーデルワイス男爵令嬢もいじめました!」
「へ?」
目が合った少女・アネモネは、おかしな声を上げた次の瞬間
「そうです! いじめられました!! ムスク殿下、守ってくださるのですね! 嬉しい~!」
と、ムスクの左腕にダイブ。ムスクは振りほどこうとするが全然離れない。護衛たちも
「だって、ムスク殿下がビオラ様と同じに国民全てを守るって言ってくださったんですもの!」
と言われては手を出せない。アネモネはすりすりと王子の腕を満喫している。
その時、会場の乙女たちの心は一つになった。
「うらやましい!!!」
王子と同級と言っても、実際は親しく話すどころか声をかける事もできないまま卒業だ。ビオラの事を淑女らしからぬはしたなさだと言いつつ、内心は「上手くやりやがって」と思っていた。
それが今、王子の方からビオラと同じに扱うと言ってくれたのだ。
「次は私にパスよこせ!」
という目線がローザに集まる。「OKでしてよ」というアイコンタクトをして
「ミモザ様もいじめましたわ。ガーベラ様もいじめました。ジャスミン様にリリー様に…」
呼ばれた乙女たちは、次々と歓声をあげて王子に飛びついていく。おしくらまんじゅう状態に、ビオラは弾き飛ばされる。
やがて呼ばれてない乙女たちも参戦し、そこにローザが
「東の国では、卒業の時に好きな人の服のボタンを貰うそうですわ~」
と、燃料投下し、会場は狂乱のるつぼと化した。
遅れた国王がパーティ会場に着いた時、そこにはボロボロの服を着てへたり込んでるムスクと、離れたところで尻もちをついたまま脱力してるビオラ、戸惑いながらそれを見守っている護衛たちしかいなかった。
乙女たちはボタンやモールなどの戦利品を手に、最初で最後の甘い(?)思い出を胸に、若干引いてるパートナーとるんたったと元気に帰って行く。
「素晴らしいパーティになりましたわね。皆さま嬉しそう」
「そ…そうとも言う……かな?」
ローザに婚約破棄の計画を教えた幼い第四王子は、自分が何か間違えたような気がしてならない。
「あとは婚約破棄をするだけですわ」
ムスクの受難は続きそうだ。
王立学園の卒業パーティに、ムスク第三王子の声が響き渡った。
声の主を見ると、礼装に身を包んだ美しい金髪の王子が、長い黒髪の女性と対峙している。王子の右腕には、ふわふわなピンクブロンドの髪の女の子が絡みついていた。
「とりあえず、婚約破棄の理由をお聞きしますわ」
表情を変えないローザに反して、ムスクは鼻息も荒く
「お前がこのビオラ・デンドロビューム男爵令嬢をいじめたからだ!」
と、言い切る。怖そうにムスクの後ろに隠れるビオラ。
「そんな事してませんが…。まあ、やったとして、それの何が問題なのです? たかが男爵令嬢ごとき、コバエを叩き潰すようなもの」
「ふざけるな! お前が叩き潰すと言うなら、私は私の力をもってビオラを、いや国民全てを守る!」
「ムスクさまぁ~ステキ!」
盛り上がる二人。
それを見て、ローザがにっこりと笑う。
「言いましたわね。…口癖の『国民全て』を」
ローザはムスクの左後ろでこの騒動を見ている少女に目を止める。少女も目が合ったことに気付くと、ローザは声を張り上げた。「わたくしは、アネモネ・エーデルワイス男爵令嬢もいじめました!」
「へ?」
目が合った少女・アネモネは、おかしな声を上げた次の瞬間
「そうです! いじめられました!! ムスク殿下、守ってくださるのですね! 嬉しい~!」
と、ムスクの左腕にダイブ。ムスクは振りほどこうとするが全然離れない。護衛たちも
「だって、ムスク殿下がビオラ様と同じに国民全てを守るって言ってくださったんですもの!」
と言われては手を出せない。アネモネはすりすりと王子の腕を満喫している。
その時、会場の乙女たちの心は一つになった。
「うらやましい!!!」
王子と同級と言っても、実際は親しく話すどころか声をかける事もできないまま卒業だ。ビオラの事を淑女らしからぬはしたなさだと言いつつ、内心は「上手くやりやがって」と思っていた。
それが今、王子の方からビオラと同じに扱うと言ってくれたのだ。
「次は私にパスよこせ!」
という目線がローザに集まる。「OKでしてよ」というアイコンタクトをして
「ミモザ様もいじめましたわ。ガーベラ様もいじめました。ジャスミン様にリリー様に…」
呼ばれた乙女たちは、次々と歓声をあげて王子に飛びついていく。おしくらまんじゅう状態に、ビオラは弾き飛ばされる。
やがて呼ばれてない乙女たちも参戦し、そこにローザが
「東の国では、卒業の時に好きな人の服のボタンを貰うそうですわ~」
と、燃料投下し、会場は狂乱のるつぼと化した。
遅れた国王がパーティ会場に着いた時、そこにはボロボロの服を着てへたり込んでるムスクと、離れたところで尻もちをついたまま脱力してるビオラ、戸惑いながらそれを見守っている護衛たちしかいなかった。
乙女たちはボタンやモールなどの戦利品を手に、最初で最後の甘い(?)思い出を胸に、若干引いてるパートナーとるんたったと元気に帰って行く。
「素晴らしいパーティになりましたわね。皆さま嬉しそう」
「そ…そうとも言う……かな?」
ローザに婚約破棄の計画を教えた幼い第四王子は、自分が何か間違えたような気がしてならない。
「あとは婚約破棄をするだけですわ」
ムスクの受難は続きそうだ。
557
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路
藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。
この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。
「聖女がいなくても平気だ」
そう言い切った王子と人々は、
彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、
やがて思い知ることになる。
――これは、聖女を追い出した国の末路を、
静かに見届けた者の記録。
妹は悪役令嬢ですか?
こうやさい
ファンタジー
卒業パーティーのさなか、殿下は婚約者に婚約破棄を突きつけた。
その傍らには震えている婚約者の妹の姿があり――。
話の内容より適当な名前考えるのが異様に楽しかった。そういうテンションの時もある。そして名前でネタバレしてしまうこともある(爆)。
本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。
冷静考えると恋愛要素がないことに気づいたのでカテゴリを変更します。申し訳ありません。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
後で消すかもしれない私信。朝の冷え込みがまた強くなった今日この頃、パソコンの冷却ファンが止まらなくなりました(爆)。ファンの方の故障だと思うのですが……考えたら修理から帰ってきたときには既におかしかったからなー、その間に暑くなったせいかとスルーするんじゃなかった。なので修理とか出さずに我慢して使い続けると思うのですが、何かのときは察して下さい(おい)。ちょっとはスマホで何とかなるだろうけど、最近やっとペーストの失敗回数が減ってきたよ。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。
反論する婚約者の侯爵令嬢。
そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。
そこへ………
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。
◇なろうにも上げてます。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる