婚約破棄をご一緒に!

あんど もあ

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婚約破棄をご一緒に!

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「ローザ・アルストロメリア公爵令嬢! 貴様とはこれで婚約破棄だ!」


 王立学園の卒業パーティに、ムスク第三王子の声が響き渡った。
 声の主を見ると、礼装に身を包んだ美しい金髪の王子が、長い黒髪の女性と対峙している。王子の右腕には、ふわふわなピンクブロンドの髪の女の子が絡みついていた。

「とりあえず、婚約破棄の理由をお聞きしますわ」
 表情を変えないローザに反して、ムスクは鼻息も荒く
「お前がこのビオラ・デンドロビューム男爵令嬢をいじめたからだ!」
と、言い切る。怖そうにムスクの後ろに隠れるビオラ。

「そんな事してませんが…。まあ、やったとして、それの何が問題なのです? たかが男爵令嬢ごとき、コバエを叩き潰すようなもの」
「ふざけるな! お前が叩き潰すと言うなら、私は私の力をもってビオラを、いや国民全てを守る!」
「ムスクさまぁ~ステキ!」
盛り上がる二人。

 それを見て、ローザがにっこりと笑う。
「言いましたわね。…口癖の『国民全て』を」
 ローザはムスクの左後ろでこの騒動を見ている少女に目を止める。少女も目が合ったことに気付くと、ローザは声を張り上げた。「わたくしは、アネモネ・エーデルワイス男爵令嬢もいじめました!」
「へ?」
 目が合った少女・アネモネは、おかしな声を上げた次の瞬間
「そうです! いじめられました!! ムスク殿下、守ってくださるのですね! 嬉しい~!」
と、ムスクの左腕にダイブ。ムスクは振りほどこうとするが全然離れない。護衛たちも
「だって、ムスク殿下がビオラ様と同じに国民全てを守るって言ってくださったんですもの!」
と言われては手を出せない。アネモネはすりすりと王子の腕を満喫している。

 その時、会場の乙女たちの心は一つになった。


「うらやましい!!!」



 王子と同級と言っても、実際は親しく話すどころか声をかける事もできないまま卒業だ。ビオラの事を淑女らしからぬはしたなさだと言いつつ、内心は「上手くやりやがって」と思っていた。
 それが今、王子の方からビオラと同じに扱うと言ってくれたのだ。

「次は私にパスよこせ!」
という目線がローザに集まる。「OKでしてよ」というアイコンタクトをして
「ミモザ様もいじめましたわ。ガーベラ様もいじめました。ジャスミン様にリリー様に…」
 呼ばれた乙女たちは、次々と歓声をあげて王子に飛びついていく。おしくらまんじゅう状態に、ビオラは弾き飛ばされる。

 やがて呼ばれてない乙女たちも参戦し、そこにローザが
「東の国では、卒業の時に好きな人の服のボタンを貰うそうですわ~」
と、燃料投下し、会場は狂乱のるつぼと化した。

 遅れた国王がパーティ会場に着いた時、そこにはボロボロの服を着てへたり込んでるムスクと、離れたところで尻もちをついたまま脱力してるビオラ、戸惑いながらそれを見守っている護衛たちしかいなかった。


 乙女たちはボタンやモールなどの戦利品を手に、最初で最後の甘い(?)思い出を胸に、若干引いてるパートナーとるんたったと元気に帰って行く。


「素晴らしいパーティになりましたわね。皆さま嬉しそう」
「そ…そうとも言う……かな?」
 ローザに婚約破棄の計画を教えた幼い第四王子は、自分が何か間違えたような気がしてならない。



「あとは婚約破棄をするだけですわ」
 ムスクの受難は続きそうだ。
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