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婚約破棄から50年後
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初めまして、殿下。婚約者候補となりましたブランシュ伯爵家の長女ジャスミンです。
王立学園でお姿をお見かけする事はございますが、お話しするのは初めてですわね。学年が違うと接点がありませんもの。
まあ、殿下も私の事をご存知でしたの?
はい、私の祖母は殿下のお祖父様、前国王陛下の婚約者でした。王立学園の卒業パーティーで、婚約破棄されましたが。
その事について詳しい話を聞きたいのですか? 五十年も前の出来事ですわよ。興味があるのでしたらお話しいたしますが…。
その前に、殿下、顔色が良くありませんわ。どうぞ上着を脱いで、シャツの襟を寛げてください。
護衛の方! そこの長椅子をこちらに運んで殿下を横にして差し上げて!
侍従の方! ブランケットの用意をお願いします。
「横になってお見合いなんて、初めてだ」ですって? いいじゃありませんの。
それではまず殿下。殿下はご自分のご病気について、どのくらい知ってますの? ああ、病気を隠す必要はありませんわ。私は、多分殿下より詳しくこの病気について知っています。
何故って、私の祖母は前世の記憶持ちなのです。この世界とは違って、医学が発展した世界で医者だったのだとか。今も小さな診療所をやってますわ。
病気について何も知らない? 原因不明? ……あの方たち、まだそんな事を言ってますの。
……はっきり言わせていただきますわね。
殿下のご病気は、お祖母様の家系の遺伝による物です。
「伴性遺伝」と言って、男子だけが発症する病気です。
前国王陛下には、三人の王子と一人の姫がいましたが、王子は三人とも発症してお亡くなりになって、発症しなかった姫、つまりあなたのお母様が女王となったわけです。
でも、女性は発症しないけど、その子供が男子だったら発症します。
私が殿下が病気なのを知っていたのは、そのためです。
元々、私の祖母が殿下のおばあ様……面倒なのでリッカ様と言わせていただきますね。リッカ様が自分の婚約者と親密になったのでリッカ様を調査したら、リッカ様の家では若くして亡くなった男性が多い事に気付いたのです。
さらに死因を調査して、症状を鑑みて…、前世の知識から病名を推察しました。
祖母はリッカ様に忠告したのです。
あなたの家系の病気は遺伝する。あなたの子供も発症するだろう、と。
だけど、この世界ではこの病気はまだまだ原因不明です。リッカ様にしてみれば、いきなり自分の家系や、まだ生まれてもいない子供を祖母に貶められた事になります。
怯えたリッカ様は、祖母の婚約者に泣きつきました。
そして、卒業パーティーで、祖母はリッカ様への虐めを理由に婚約破棄されたのです。
「患者のプライバシーは口外できない」というのが医者のポリシーだそうで、祖母は黙って婚約破棄を受け入れて、「自分の食い扶持くらい自分で稼ぐ」と診療所を始めましたの。その後、祖父と出会って結ばれました。
あ、私がこの事を教えられたのは、王立学園に入学する時です。
祖母の事を知っている人から悪意のある事を言われても大丈夫なように、他言しないよう言い含められ事実を教えてくれました。
結果、リッカ様の産んだ王子は皆亡くなって、祖母の推察が当たっていた事が証明されたのですが、あのお二人はまだ認めていないのですね…。
三人も王子が亡くなったのですもの、王家の血に問題があったのではと他の貴族も疑っているのでしょう? だから、他の方は王家とのご縁を辞退し、因縁のある私にまで婚約者候補の話が来たのでは?
ふふ、やはりそうだったのですね。正直な方ですわね。
祖母に謝りたい? 殿下には何の責任もありませんわ。
それに、祖母は「医者として、知らせるべき事を言わずにいられなかった。それを聞いて相手がどんな人生を選んだとしても、それはその人の自由」と、言ってました。「そうとでも思わなきゃ医者なんてやってられない」ですって。
第一、婚約破棄されなかったら私も殿下も生まれてませんわ。困ってしまいます。
あら、もうこんな時間。そろそろお開きにしなくては。殿下、次のお茶会を楽しみにしてますわ。
え? 何故って、婚約者候補ですもの。
……私は、お気に召さなかったと言う事でしょうか。
死ぬのにって、殿下が?
あ!! 言葉が足りませんでした!
殿下のご病気は確かに遺伝のせいなので治療法はありませんが、必ずしも若くして亡くなるという病気では無いんです。ちゃんと気をつけて、自分を律した生活をすれば、病気と共存出来ます。結婚も、子供だって。
私は、ずっと殿下を見ていたので、熱がある時も、病状が苦しいだろう時も、決して顔に出さないようにしているのを知ってます。
今日だって、具合が悪いのを押して私と会ってくださいました。
殿下なら、きっと生きるための厳しい制限にも耐えられるだろう。そして、病に苦しむ人の気持ちが分かる立派な国王になるだろうと思ってましたの。
ええ、私が婚約者になったら厳しく目を光らせますわよ。ビシバシと指導いたします。お覚悟なさいませ。
殿下? 何故笑いますの? すごく嬉しそうですわ。
::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: ::: :::
※伴性遺伝は男子だから必ず発症するとは限りません。
そういう病気という設定なんだと、ゆるく考えてください。
王立学園でお姿をお見かけする事はございますが、お話しするのは初めてですわね。学年が違うと接点がありませんもの。
まあ、殿下も私の事をご存知でしたの?
はい、私の祖母は殿下のお祖父様、前国王陛下の婚約者でした。王立学園の卒業パーティーで、婚約破棄されましたが。
その事について詳しい話を聞きたいのですか? 五十年も前の出来事ですわよ。興味があるのでしたらお話しいたしますが…。
その前に、殿下、顔色が良くありませんわ。どうぞ上着を脱いで、シャツの襟を寛げてください。
護衛の方! そこの長椅子をこちらに運んで殿下を横にして差し上げて!
侍従の方! ブランケットの用意をお願いします。
「横になってお見合いなんて、初めてだ」ですって? いいじゃありませんの。
それではまず殿下。殿下はご自分のご病気について、どのくらい知ってますの? ああ、病気を隠す必要はありませんわ。私は、多分殿下より詳しくこの病気について知っています。
何故って、私の祖母は前世の記憶持ちなのです。この世界とは違って、医学が発展した世界で医者だったのだとか。今も小さな診療所をやってますわ。
病気について何も知らない? 原因不明? ……あの方たち、まだそんな事を言ってますの。
……はっきり言わせていただきますわね。
殿下のご病気は、お祖母様の家系の遺伝による物です。
「伴性遺伝」と言って、男子だけが発症する病気です。
前国王陛下には、三人の王子と一人の姫がいましたが、王子は三人とも発症してお亡くなりになって、発症しなかった姫、つまりあなたのお母様が女王となったわけです。
でも、女性は発症しないけど、その子供が男子だったら発症します。
私が殿下が病気なのを知っていたのは、そのためです。
元々、私の祖母が殿下のおばあ様……面倒なのでリッカ様と言わせていただきますね。リッカ様が自分の婚約者と親密になったのでリッカ様を調査したら、リッカ様の家では若くして亡くなった男性が多い事に気付いたのです。
さらに死因を調査して、症状を鑑みて…、前世の知識から病名を推察しました。
祖母はリッカ様に忠告したのです。
あなたの家系の病気は遺伝する。あなたの子供も発症するだろう、と。
だけど、この世界ではこの病気はまだまだ原因不明です。リッカ様にしてみれば、いきなり自分の家系や、まだ生まれてもいない子供を祖母に貶められた事になります。
怯えたリッカ様は、祖母の婚約者に泣きつきました。
そして、卒業パーティーで、祖母はリッカ様への虐めを理由に婚約破棄されたのです。
「患者のプライバシーは口外できない」というのが医者のポリシーだそうで、祖母は黙って婚約破棄を受け入れて、「自分の食い扶持くらい自分で稼ぐ」と診療所を始めましたの。その後、祖父と出会って結ばれました。
あ、私がこの事を教えられたのは、王立学園に入学する時です。
祖母の事を知っている人から悪意のある事を言われても大丈夫なように、他言しないよう言い含められ事実を教えてくれました。
結果、リッカ様の産んだ王子は皆亡くなって、祖母の推察が当たっていた事が証明されたのですが、あのお二人はまだ認めていないのですね…。
三人も王子が亡くなったのですもの、王家の血に問題があったのではと他の貴族も疑っているのでしょう? だから、他の方は王家とのご縁を辞退し、因縁のある私にまで婚約者候補の話が来たのでは?
ふふ、やはりそうだったのですね。正直な方ですわね。
祖母に謝りたい? 殿下には何の責任もありませんわ。
それに、祖母は「医者として、知らせるべき事を言わずにいられなかった。それを聞いて相手がどんな人生を選んだとしても、それはその人の自由」と、言ってました。「そうとでも思わなきゃ医者なんてやってられない」ですって。
第一、婚約破棄されなかったら私も殿下も生まれてませんわ。困ってしまいます。
あら、もうこんな時間。そろそろお開きにしなくては。殿下、次のお茶会を楽しみにしてますわ。
え? 何故って、婚約者候補ですもの。
……私は、お気に召さなかったと言う事でしょうか。
死ぬのにって、殿下が?
あ!! 言葉が足りませんでした!
殿下のご病気は確かに遺伝のせいなので治療法はありませんが、必ずしも若くして亡くなるという病気では無いんです。ちゃんと気をつけて、自分を律した生活をすれば、病気と共存出来ます。結婚も、子供だって。
私は、ずっと殿下を見ていたので、熱がある時も、病状が苦しいだろう時も、決して顔に出さないようにしているのを知ってます。
今日だって、具合が悪いのを押して私と会ってくださいました。
殿下なら、きっと生きるための厳しい制限にも耐えられるだろう。そして、病に苦しむ人の気持ちが分かる立派な国王になるだろうと思ってましたの。
ええ、私が婚約者になったら厳しく目を光らせますわよ。ビシバシと指導いたします。お覚悟なさいませ。
殿下? 何故笑いますの? すごく嬉しそうですわ。
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※伴性遺伝は男子だから必ず発症するとは限りません。
そういう病気という設定なんだと、ゆるく考えてください。
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