5 / 233
4:初めて飛竜を見た日(セレスティア6歳)
しおりを挟む
空を見上げると、人を乗せた竜が飛んでいる。青空の中、赤い竜が人を乗せて、羽を広げ悠々と空を駆けていたのだ。
「綺麗・・・・」
少女の目には、空を駆ける赤い竜を映しだし、キラキラと輝いていた。
私もあんな綺麗な竜に乗って空を駆けてみたい!
セレスティアはこの日、初めて飛竜を見た。
実はこの日の午前中に、父セスから再婚話を聞かされた。
「セレス、母さんが亡くなって随分と経つ、だから・・・新しいお母さんを迎えようと思うんだ。」
「え?新しいお母さま?」
「あぁ。男手ではやはり女の子のことはわからないこともあるからな。だから新しいお母さんだったら女同士分かり合えることもあるだろう?それに・・・セレスと同い年の女の子もいるんだ。だからセレスの為になるんじゃないかと思ってな。」
セスはセレスティアの顔色を窺い、セレスティアの返事を待った。
父親であるセスからのこの申し出は青天の霹靂だった。
セレスティアは、新しい母親を欲しいなどと思ったこともなかったからだ。
セレスティアの心はいろんな感情が入り混じっていた。
新しいお母さまっているのかな?私を生んでくれた母さまとは、ほとんど一緒にいることがなかったから、お母さまっていうのがよくわからない。だけど、私より父さまはそれで寂しくなくなるのかな?私知ってるんだよ。父さまが時折、母さまの肖像画を見て寂しい顔をしているの。だから、、、
「・・・うん、わかった!新しいお母さまだね!父さまがそれでいいならいいよ!」
セレスティアは自分の事よりも、父がセスが寂しくならないのならそれでいいと受け入れることにした。
「そ、そうか。じゃ新しいお母さんを迎える準備をしよう。」
セスはセレスティアの返事に安堵したが、彼女の真意に気付かないまま、ジョアンナとの再婚を決めた。
その日の昼過ぎ、セレスティアは敷地内の丘の上に来ていた。その場所は見晴らしのいい芝生ではあったが、屋敷から少々離れている為、まだ6歳の幼児であるセレスティアが一人では来てはいけない場所であった。とは言うものの、セレスティアは前々からその見晴らしのいい景色がお気に入りで何度も来ていているし、屋敷の者も暗黙の了解として、セレスティアを見かけない時は、大抵そこにいるだろうと当たり前のように認知されていた。そして先ほどの父セスからの再婚話を思い返していた。
セレスティアは令嬢としては行儀悪く、仰向けに大の字になって空を見上げる恰好で丘の上の芝生の上にいた。
「・・・新しいお母さまかぁ、やっぱりよくわかんないや。」
セレスティアが物心着いた頃には既に母はいなかった。だが周りに恵まれていたのか、メイドも執事も庭師も皆、ローエングリン伯の幼い子供たちが寂しくないようにと気遣い、よく遊んでもくれていたので寂しいと思う気持ちはそんなになかった。特に乳母のマルティナが母親代わりをしてくれていたことも大きかったのだろう。
だがそれはあくまで子供目線であり、父にしてみればパートナーという意味では違うのかもしれないと、セレスティアは幼心に思ったのだ。
「ん?あれは?」
寝っ転がっていた視界に、赤い物体が目に入った。セレスティアは慌てて飛び起きて、精一杯足を伸ばして、目を凝らしてそれをよく見てみた。それは竜騎士を乗せて飛んでいた、赤い飛竜だった。
「綺麗・・・・」
聞いたことはあった。この国には竜騎士がいると、だけどとても珍しく難しいお仕事で誰でもできるお仕事ではないということも同時に聞いていた。
そしてその赤い飛竜は気のせいか一瞬こちらに顔を向けたような気がした。
しかしそれはほんの一瞬のことだったので、ただの気のせいだったのかもしれないとセレスティアは思った。赤い竜はそのまま飛んで行き、やがて視界から消えていった。だが、セレスティアの興奮は収まらなかった。
「・・・すごい・・・凄い!すっごい!!!初めて見た!」
セレスティアの目はキラキラ輝いていた。
何あれ?あんなキレイな生き物初めて見た!私も乗ってみたい!竜に乗って空を飛んでみたい!!
「そうだ!」
セレスティアは、騎士である父なら竜騎士についても何か知っているかもと思い立ち、居ても立っても居られなくなり慌てて屋敷に戻っていった。
セレスティアは、父のいる執務室ににノックと同時に入っていった。
「父さま!聞いて!私初めて飛竜を見たわ!赤い竜が人を乗せていたのよ!!」
「おいおい、仕事中だぞ。」
「!ご、ごめんなさい。どうしてもすぐに父さまに言いたくて。」
普段はこういう事はセレスティアはちゃんと弁えている子だということは、セスは理解していた。それができなかったということはよほど夢中になったのだろうとセスは理解した。
「まぁいい。赤い飛竜か・・・それならきっとユージィンだろう。」
「え?ユージィンって叔父様の?」
「あぁ、赤い飛竜に乗っているのはユージィンしかいないからな。」
すごい!まさか身内に竜騎士がいたなんて!
「わ、私叔父様に会いたい!父さま、ユージィン叔父様に会いたいわ!!」
「そうだな、ユージィンももうさすがに接触禁止期間も過ぎているから大丈夫だろう。今度招待しようか。」
「!!嬉しい!父さま楽しみにしてる!」
セレスティアは嬉しくてセスに抱きついた。
「はは、よっぽど気に入ったんだなぁ。」
会えるんだ!竜に!竜騎士に会えるんだ!
セレスティアの頭の中はすっかり竜と竜騎士のことでいっぱいになってしまっていた為に、セスの再婚話の事はすっかり頭から抜け落ちてしまっていたのであった。
「綺麗・・・・」
少女の目には、空を駆ける赤い竜を映しだし、キラキラと輝いていた。
私もあんな綺麗な竜に乗って空を駆けてみたい!
セレスティアはこの日、初めて飛竜を見た。
実はこの日の午前中に、父セスから再婚話を聞かされた。
「セレス、母さんが亡くなって随分と経つ、だから・・・新しいお母さんを迎えようと思うんだ。」
「え?新しいお母さま?」
「あぁ。男手ではやはり女の子のことはわからないこともあるからな。だから新しいお母さんだったら女同士分かり合えることもあるだろう?それに・・・セレスと同い年の女の子もいるんだ。だからセレスの為になるんじゃないかと思ってな。」
セスはセレスティアの顔色を窺い、セレスティアの返事を待った。
父親であるセスからのこの申し出は青天の霹靂だった。
セレスティアは、新しい母親を欲しいなどと思ったこともなかったからだ。
セレスティアの心はいろんな感情が入り混じっていた。
新しいお母さまっているのかな?私を生んでくれた母さまとは、ほとんど一緒にいることがなかったから、お母さまっていうのがよくわからない。だけど、私より父さまはそれで寂しくなくなるのかな?私知ってるんだよ。父さまが時折、母さまの肖像画を見て寂しい顔をしているの。だから、、、
「・・・うん、わかった!新しいお母さまだね!父さまがそれでいいならいいよ!」
セレスティアは自分の事よりも、父がセスが寂しくならないのならそれでいいと受け入れることにした。
「そ、そうか。じゃ新しいお母さんを迎える準備をしよう。」
セスはセレスティアの返事に安堵したが、彼女の真意に気付かないまま、ジョアンナとの再婚を決めた。
その日の昼過ぎ、セレスティアは敷地内の丘の上に来ていた。その場所は見晴らしのいい芝生ではあったが、屋敷から少々離れている為、まだ6歳の幼児であるセレスティアが一人では来てはいけない場所であった。とは言うものの、セレスティアは前々からその見晴らしのいい景色がお気に入りで何度も来ていているし、屋敷の者も暗黙の了解として、セレスティアを見かけない時は、大抵そこにいるだろうと当たり前のように認知されていた。そして先ほどの父セスからの再婚話を思い返していた。
セレスティアは令嬢としては行儀悪く、仰向けに大の字になって空を見上げる恰好で丘の上の芝生の上にいた。
「・・・新しいお母さまかぁ、やっぱりよくわかんないや。」
セレスティアが物心着いた頃には既に母はいなかった。だが周りに恵まれていたのか、メイドも執事も庭師も皆、ローエングリン伯の幼い子供たちが寂しくないようにと気遣い、よく遊んでもくれていたので寂しいと思う気持ちはそんなになかった。特に乳母のマルティナが母親代わりをしてくれていたことも大きかったのだろう。
だがそれはあくまで子供目線であり、父にしてみればパートナーという意味では違うのかもしれないと、セレスティアは幼心に思ったのだ。
「ん?あれは?」
寝っ転がっていた視界に、赤い物体が目に入った。セレスティアは慌てて飛び起きて、精一杯足を伸ばして、目を凝らしてそれをよく見てみた。それは竜騎士を乗せて飛んでいた、赤い飛竜だった。
「綺麗・・・・」
聞いたことはあった。この国には竜騎士がいると、だけどとても珍しく難しいお仕事で誰でもできるお仕事ではないということも同時に聞いていた。
そしてその赤い飛竜は気のせいか一瞬こちらに顔を向けたような気がした。
しかしそれはほんの一瞬のことだったので、ただの気のせいだったのかもしれないとセレスティアは思った。赤い竜はそのまま飛んで行き、やがて視界から消えていった。だが、セレスティアの興奮は収まらなかった。
「・・・すごい・・・凄い!すっごい!!!初めて見た!」
セレスティアの目はキラキラ輝いていた。
何あれ?あんなキレイな生き物初めて見た!私も乗ってみたい!竜に乗って空を飛んでみたい!!
「そうだ!」
セレスティアは、騎士である父なら竜騎士についても何か知っているかもと思い立ち、居ても立っても居られなくなり慌てて屋敷に戻っていった。
セレスティアは、父のいる執務室ににノックと同時に入っていった。
「父さま!聞いて!私初めて飛竜を見たわ!赤い竜が人を乗せていたのよ!!」
「おいおい、仕事中だぞ。」
「!ご、ごめんなさい。どうしてもすぐに父さまに言いたくて。」
普段はこういう事はセレスティアはちゃんと弁えている子だということは、セスは理解していた。それができなかったということはよほど夢中になったのだろうとセスは理解した。
「まぁいい。赤い飛竜か・・・それならきっとユージィンだろう。」
「え?ユージィンって叔父様の?」
「あぁ、赤い飛竜に乗っているのはユージィンしかいないからな。」
すごい!まさか身内に竜騎士がいたなんて!
「わ、私叔父様に会いたい!父さま、ユージィン叔父様に会いたいわ!!」
「そうだな、ユージィンももうさすがに接触禁止期間も過ぎているから大丈夫だろう。今度招待しようか。」
「!!嬉しい!父さま楽しみにしてる!」
セレスティアは嬉しくてセスに抱きついた。
「はは、よっぽど気に入ったんだなぁ。」
会えるんだ!竜に!竜騎士に会えるんだ!
セレスティアの頭の中はすっかり竜と竜騎士のことでいっぱいになってしまっていた為に、セスの再婚話の事はすっかり頭から抜け落ちてしまっていたのであった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる