63 / 233
62:カルベルス王国の滅亡~④~(過去編)
しおりを挟む
エレノアは確かに不義の子ではあったが、母親似の見目美しい娘と成長したことから、政略結婚の王女として謙遜はなかった。ロレンシオ王もそれを見越しての挿げ替えであったのだが、それは実物を見てからの話であり、そもそもが見た目の話ではない。当然この花嫁の挿げ替えについては、ペルニツァ王国にすればカルベルス王国に対しての心象がかなり悪くなってしまったのは、エレノアの懸念していた通りになっていた。
「なんだと?小国のくせに生意気な!」
ロレンシオ王はペルニツァ王国からの返書の内容を見て激怒していた。だが、ペルニツァ王国の言い分は、第三者が聞いても最もな内容であったのだ。エレノアに婚約者が変わる旨の通牒を受け取ったペルニツァ王国は反論をしてきた。当初と約束が違う、一体どういうことなのかと。当初の約束を反故されたペルニツァ王国は、アーレンベック国より下に見られたと受け取ったのだ。このままであれば、協定の話はなかったものにするか、今まで行われてきた貿易についての中身も今一度見直さなければならない等、かなり強気な内容で返書には記されていた。
「おのれ!優しくしておれば、調子に乗りおって!」
ロレンシオ王は返書を感情のまま握り潰し、ワナワナと怒りで震えていた。重鎮たちは、王がいつ癇癪を起こすかわからない状況ではあったが、言わない訳にもいかず、大臣の一人が意見具申した。
「王よ!せ、僭越ながら申し上げます。ペルニツァ王国の言い分は最もでございます。事が大きくなる前にやはり当初の予定どおり、ユリアンヌ王女をペルニツァ王国に嫁いでいただくのが、得策ではないかと!」
きっと、王はさらに激高するであろうとはわかっていたが、重鎮として、国の未来を考えれば言わないという選択肢は大臣にはなかった。
「貴様ぁ・・・誰にモノを申しておる!!」
皆の予想通りロレンシオ王は激高した。実はロレンシオ王自身、彼の中でも全くわかっていない訳でもなかったのだ。だが、六大国家の一員の大国としてのプライドがあったこと、可愛い娘のお願いもあったこと、実際に上手くいけばペルニツァ王国とアーベンレック国の二つの国の後ろ盾ができるのであれば、良い事ずくしではないか?と見通しの甘い見解をしてしまったことが、結果として見事に外れてしまったという訳だ。
「えぇい!皆の者散れ!!」
結局、この日はロレンシオ王の癇癪が治まらず、重鎮が集まったものの何も決まらずに散会することになってしまった。
エレノアは、自室にて溜息を付いていた。(カイエルに会えなくなってどのくらい経っただろう・・・。)軟禁状態になって三週間ほどが経ち、この頃にはエレノアは、カイエルと待ち合わせの方向を眺めるのが日課となっていた。
そして誰もいない部屋で、エレノアはカイエルに会いたいのに会えない寂しさで押しつぶされそうになっていた。(カイエル、会いたい、会いたいのよ!)
「なんだ、それならもっと早く来れば良かったな。」
「?!」
エレノアは一瞬幻聴かと思ったが、声をした方に振り向いてみれば、本来であれば、いるはずのない人物が開いた大きな窓の傍で笑顔で立っていたのだ。
「カイ・・エル、どうして?」
エレノアは信じられないものを見た目で、驚いていた。
「俺に会いたいんじゃなかったのか?」
「そ、そんなこと、会いたかったに決まってるわ!」
エレノアは言うと同時に駆けだしてカイエルに向かっていった。それをカイエルは抱きとめ、エレノアを抱きしめた。エレノアはカイエルに会えた嬉しさで涙が止まらなかった。
「俺もだ。俺もエレノアに会いたかった!ごめんな。もっと早く来れば良かった。なんか忙しいそうに何かをやってるから邪魔しちゃいけないのかなって思ったんだけど、エレノアが悲しんでるから、俺もう我慢できなくて。」
「カイエル!カイエル!」
エレノアは、まさか会えると思っていなかったカイエルに会えたことに、そして抱きしめられていることに今まで一番幸せを感じていた。カイエルもしばらく会えなかった寂しさで、エレノアを逃がすまいと両手でがっしりと抱きしめていた。そしてカイエルは少し落ち着いたトーンで、思い詰めたように話を切り出した。
「俺・・・エレノアに言わなきゃいけないことがことがあるんだ。」
「言わなきゃいけないこと?」
カイエルは抱きしめていた腕を緩め、エレノアの顔見つめた。
「俺の目、わかるだろ?」
「うん・・・瞳が縦長よね。」
エレノアはカイエルの瞳孔だ縦長であることから、普通の人ではないであろうことは気付いていた。それは、教会の神父も気付いていて、
『エレノア、カイエルはきっと何か訳アリかもしれないが、それは細やかなことだ。彼が何をしているかで、判断しなければいけないよ。』
エレノアは神父の言いたいことはよくわかっていた。カイエルはぶっきらぼうではあるが、教会の子供たちの面倒はよくみてくれたし、エレノアがすることにも不器用ながらに進んで手伝ってくれていたのだ。エレノアにはそれが全てであり、カイエルがどこの誰であろうと、どうでもいいことだったのだ。
「エレノア、俺は『竜の祖』黒竜のカイエルだ。そしてお前は俺の番(つがい)なんだよ。」
「え?竜?って、え?番?」
エレノアはカイエルが普通ではないとは思っていたが、まさか竜と言われるとは思っていなかったので驚いた。そして番とも言われ、頭が全く整理できていなかったのだが、
「あぁ、番だ。俺の唯一・・・。」
そういうカイエルの顔はうっとしとして色気を放っていたものだから、エレノアは真っ赤になっていた。
「なんだと?小国のくせに生意気な!」
ロレンシオ王はペルニツァ王国からの返書の内容を見て激怒していた。だが、ペルニツァ王国の言い分は、第三者が聞いても最もな内容であったのだ。エレノアに婚約者が変わる旨の通牒を受け取ったペルニツァ王国は反論をしてきた。当初と約束が違う、一体どういうことなのかと。当初の約束を反故されたペルニツァ王国は、アーレンベック国より下に見られたと受け取ったのだ。このままであれば、協定の話はなかったものにするか、今まで行われてきた貿易についての中身も今一度見直さなければならない等、かなり強気な内容で返書には記されていた。
「おのれ!優しくしておれば、調子に乗りおって!」
ロレンシオ王は返書を感情のまま握り潰し、ワナワナと怒りで震えていた。重鎮たちは、王がいつ癇癪を起こすかわからない状況ではあったが、言わない訳にもいかず、大臣の一人が意見具申した。
「王よ!せ、僭越ながら申し上げます。ペルニツァ王国の言い分は最もでございます。事が大きくなる前にやはり当初の予定どおり、ユリアンヌ王女をペルニツァ王国に嫁いでいただくのが、得策ではないかと!」
きっと、王はさらに激高するであろうとはわかっていたが、重鎮として、国の未来を考えれば言わないという選択肢は大臣にはなかった。
「貴様ぁ・・・誰にモノを申しておる!!」
皆の予想通りロレンシオ王は激高した。実はロレンシオ王自身、彼の中でも全くわかっていない訳でもなかったのだ。だが、六大国家の一員の大国としてのプライドがあったこと、可愛い娘のお願いもあったこと、実際に上手くいけばペルニツァ王国とアーベンレック国の二つの国の後ろ盾ができるのであれば、良い事ずくしではないか?と見通しの甘い見解をしてしまったことが、結果として見事に外れてしまったという訳だ。
「えぇい!皆の者散れ!!」
結局、この日はロレンシオ王の癇癪が治まらず、重鎮が集まったものの何も決まらずに散会することになってしまった。
エレノアは、自室にて溜息を付いていた。(カイエルに会えなくなってどのくらい経っただろう・・・。)軟禁状態になって三週間ほどが経ち、この頃にはエレノアは、カイエルと待ち合わせの方向を眺めるのが日課となっていた。
そして誰もいない部屋で、エレノアはカイエルに会いたいのに会えない寂しさで押しつぶされそうになっていた。(カイエル、会いたい、会いたいのよ!)
「なんだ、それならもっと早く来れば良かったな。」
「?!」
エレノアは一瞬幻聴かと思ったが、声をした方に振り向いてみれば、本来であれば、いるはずのない人物が開いた大きな窓の傍で笑顔で立っていたのだ。
「カイ・・エル、どうして?」
エレノアは信じられないものを見た目で、驚いていた。
「俺に会いたいんじゃなかったのか?」
「そ、そんなこと、会いたかったに決まってるわ!」
エレノアは言うと同時に駆けだしてカイエルに向かっていった。それをカイエルは抱きとめ、エレノアを抱きしめた。エレノアはカイエルに会えた嬉しさで涙が止まらなかった。
「俺もだ。俺もエレノアに会いたかった!ごめんな。もっと早く来れば良かった。なんか忙しいそうに何かをやってるから邪魔しちゃいけないのかなって思ったんだけど、エレノアが悲しんでるから、俺もう我慢できなくて。」
「カイエル!カイエル!」
エレノアは、まさか会えると思っていなかったカイエルに会えたことに、そして抱きしめられていることに今まで一番幸せを感じていた。カイエルもしばらく会えなかった寂しさで、エレノアを逃がすまいと両手でがっしりと抱きしめていた。そしてカイエルは少し落ち着いたトーンで、思い詰めたように話を切り出した。
「俺・・・エレノアに言わなきゃいけないことがことがあるんだ。」
「言わなきゃいけないこと?」
カイエルは抱きしめていた腕を緩め、エレノアの顔見つめた。
「俺の目、わかるだろ?」
「うん・・・瞳が縦長よね。」
エレノアはカイエルの瞳孔だ縦長であることから、普通の人ではないであろうことは気付いていた。それは、教会の神父も気付いていて、
『エレノア、カイエルはきっと何か訳アリかもしれないが、それは細やかなことだ。彼が何をしているかで、判断しなければいけないよ。』
エレノアは神父の言いたいことはよくわかっていた。カイエルはぶっきらぼうではあるが、教会の子供たちの面倒はよくみてくれたし、エレノアがすることにも不器用ながらに進んで手伝ってくれていたのだ。エレノアにはそれが全てであり、カイエルがどこの誰であろうと、どうでもいいことだったのだ。
「エレノア、俺は『竜の祖』黒竜のカイエルだ。そしてお前は俺の番(つがい)なんだよ。」
「え?竜?って、え?番?」
エレノアはカイエルが普通ではないとは思っていたが、まさか竜と言われるとは思っていなかったので驚いた。そして番とも言われ、頭が全く整理できていなかったのだが、
「あぁ、番だ。俺の唯一・・・。」
そういうカイエルの顔はうっとしとして色気を放っていたものだから、エレノアは真っ赤になっていた。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる